覇王のはた迷惑な決意
どうでもいいけど、キュアショコラは覇王の好みにドストライクです。
ちなみに作者はキュアマカロン派だったりする。
「忘れていたことなんてあったっけ」
「何言ってるんだよ、華怜。覇王がチャーシューにされたままじゃん」
それでようやく合点がいったようだった。ダイカルアの怪物を倒したからって、かけられた魔法が自動的に解けるわけじゃないもんな。多分、公園の真ん中にチャーシューが鎮座しているっていうシュールな光景が繰り広げられていることだろう。
「彼の者曰く、人助けも魔法少女の使命ってね。よし、お姉さんに任せておきなさい」
渚先輩は胸を叩き先導しようとする。どうにかできる宛てがあるのだろうか。なんて心配をするのは早計だった。
足元をあまり見ていなかったのが災いしたのか、小石を思い切りふんづけてしまっていた。体のバランスを崩し、派手にすっころんでしまう。うん、心配するのは早計でしたね。まずは渚先輩そのものの心配をする必要がありましたから。
漫画でしか見たことがない転倒劇に、華怜は嗜虐的に口を押えていた。
「プププ。粋がっていたわりに情けないじゃない」
「た、たまたま失敗しただけよ」
「石につまづくなんて、普段の運動量が足りない証拠よ。もっと体を鍛えたら」
「ご忠告ありがとう。さ、さあ、行くわよ」
強がってるけど、滅茶苦茶動揺してますよね。渚先輩ってたまにどんくさいからな。それにしても膝小僧は大丈夫だろうか。「彼の者曰く、唾を付けとけば治る」って言ってそうだけど、ちゃんと消毒しないと駄目だからね。
例の公園に行くと、中央の広場に堂々とチャーシューが居座っていた。野犬とか野良猫が狙っているけど、体に悪いと判断しているのか実際に手を出す様子はない。覇王のやつ、野生動物に対する毒素でも発しているのだろうか。
通行人たちに写メを撮られ、公園の新たなモニュメントとしても機能していた。ネット上では「公園の中にチャーシューがあったんだがwww」ってタイトルで書きこまれてるんだろうな。
「それで、このチャーシューどうするのよ」
「うーん、いくらお姉さんでもどうしようもないわね」
「強がり言ってたのに頼りにならないじゃない」
「私だってできることとできないことがあるの。覚えておきなさい」
自信満々にお手上げ宣言されてもな。仕方ない。ボクの魔法だったらどうにかできるかもしれないし。
物陰でこっそりとヴァルダイヤモンドに変身すると、チャーシューへと手を掲げる。えっと、ギャラリーさん。勝手に写メ撮るのは止めてもらえませんかね。ボクにだって肖像権はあるんだぞ。
「ありがたき祝福よ! 彼の者たちに降り注げ! 全治全能」
崩壊したビルを元通りにした魔法だ。すごく都合がいいと思うけど、これならばチャーシューにされた覇王も元に戻せるはず。うーん、さっきからシャッター音がしつこいな。
「はあい、皆さん。写真を撮るなら一枚百円ですよ」
「なんだ、お前。ヴァルダイヤモンドの関係者か」
カメラ小僧のおっさんに渚先輩は怪訝な顔をされている。ありがたい。野次馬の気を惹いてくれているのか。
「私のグラビアだったらいくらでも撮っていいわよ」
そう言ってセクシーポーズを披露している。うーん、逆に気が散るかな。
「抜け駆けは許さないわ。撮るなら私も撮りなさい」
華怜も対抗しなくていいから。
「そっちのへんちくりんはともかく、こっちの巨乳の姉ちゃんは撮りごたえありそうだぞ」
「ちょっと、誰がへんちくりんよ」
カメラ小僧も華怜をディスりながら乗らないでください。
「お兄さん、撮った写真後で売ってくれないかバ」
バンティーは……もうどうでもいいや。
なんやかんやあって、覇王は無事に元の姿に戻った。チャーシュー化まで戻せるって万能すぎるよね、この魔法。
「オレは今まで何を。は! あなたは」
ボクをまじまじと見つめている。顔にお弁当でもついていたかな。
って、そんなんじゃない。覇王に魔法少女の姿を晒したのはこれが初めてだった。や、やばい、早く逃げないと。
「じゃ、じゃあ、ボクはこれで失礼するね。ダイカルアには気を付けるんだよ」
ポケ―としている覇王を後に、ボクは物陰へと駆け込み、早口で「アーネストシール」と唱える。うう、心臓に悪い。ばれてないよね。
何気ない顔を装い、ボクは覇王の前に再度姿を現す。もちろん、変身前の状態で。
「おお、優輝氏。神が、神が舞い降りたぞ」
いきなりボクにすがりついてきた。うん、暑苦しいからやめようね。
「放置プレーをさせられていてご褒美かと思っていたが、いい加減飽きてきたんだ。野犬とかから狙われておったしな。そんな時に白銀の魔法少女が現れ、オレを助けてくれたんだ。まさに神としか言いようがないだろう」
うーん、助けてもあまりうれしくないな。正直、そこまで困ってなかったよね。
「決めたぞ、優輝氏」
「えっと、何を」
「オレはヴァルダイヤモンドの正体を暴いてみせる」
「えぇええええええぇぇぇぇ!?」
「どうして優輝氏が驚いているのだ」
そりゃ驚くよ。
「サファイアはどうしたのさ。あれほど正体を暴こうと躍起になってたじゃないか」
「サファイアとかオワコンだろう。時代はダイヤモンド一択だぞ」
渚先輩、堂々とディスられてますよ。って聞いてないし。華怜と一緒にカメラ小僧のモデルになるのに必死になっている。彼女らも目的見失ってるし。
「フハハハハ! 待っていろ、ヴァルダイヤモンド。おまいの正体を暴いてオレの嫁にしてやる」
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!! ボクは心の奥底で絶叫した。ボクの魔法少女としての戦いはどうやら前途多難のようである。
次回予告
いつも喧嘩ばかりの華怜と渚先輩。どうにか仲良くなってもらえないかと、ボクは二人をショッピングに誘う。
で、案の定張り合う二人。おまけに、ダイカルアのバタフライカルアまで現れて大騒ぎ。いったいどうなるの!?
次回、TS魔法少女は戦いたくない第四話「優輝の仲良し大作戦」




