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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第二話「幼馴染は魔法少女!? 情熱の戦士ヴァルルビィ」
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女の子の体を観察してみよう

「どうって言われても。確かに、胸とか股間に違和感はあるかな」

 普段股間にあるはずのものがないし、胸にはないはずのものがある。ひいき目でも華怜より巨大なものをぶら下げていて申し訳なくなる。当人の前で言ったらさすがに殴られそうだな。

「せっかくだから、ここで変身してもらえないかバ」

「え? でも、ダイカルアの連中はいないよ」

「別に変なことはしないバ。ただ、女の子の体がどうなっているか観察するだけだバ」

 率直にセクハラ発言をかましたよ、このコウモリ! ある意味ダイカルアの怪物よりたちが悪いよ。

「君だって興味がないわけじゃないバ。クラスメイトの女の子の服の下がどうなっているのか気にならないかバ」

 そう指摘されると図星だった。興味がないって言い張る男子中学生なんて、むしろ不健全だよね。


「で、でもさ。本当に変身しちゃっていいの」

「ちょっと見るだけだから構わないバ」

「だって、変身したら襲っちゃうかもしれないよ」

「君からそんな過激発言をもらえるとは予想外だったバ。逆レ〇プとはなかなかの策士だバ」

 ダメだ、このコウモリ。覇王が言うところの「我々の業界ではご褒美です」状態になっている。


「頼むバ。ほんのちょっと変身してもらうだけでもいいバ」

 翼を合わせて必死に懇願してくる。う~、しつこいな。突っぱねてもエンドレスで絡まれるだけだし。

「ちょ、ちょっとだけだからね」

「恩に着るバ」

 滅茶苦茶いい笑顔で返された。ああ、やだな。しぶしぶボクはダイヤモンドを取り出すと、

「アーネストレリーズ。ミラクルジュエリーダイヤモンド」と変身呪文を詠唱した。


 変身に要する時間は0.05秒。あっという間にボクはヴァルダイヤモンドへと姿を変えた。

「うむ。出るところは出るというそそられる体つきをしているバね」

 なめまわすような目つきでボクを観察してくる。服の上からでも相当恥ずかしい。特に下半身の辺りが心もとない。女の子ってよくこんな恰好で町を歩けるよね。華怜が普段ズボンを好んでいるのも納得がいった。


 危惧していた謎の声だけど、全然響いてこない。おかしいな。ダイカルアの怪物と戦った時はいきなり「コロセ」って言われたのに。とりあえず、バンティーを抹殺する心配はなさそうだ。ちょっとお仕置きするぐらいなら罰は当たらないと思うけど。

「よし。じゃあいよいよ本番だバ」

「ほ、本番って」

「もちろん、装束の下がどうなっているのか確かめるバ」

 ここで脱げってことですか。ま、まあ、どうなっているのか気にはなるんだけど。でも、脱いだら負けな気がする。パンドラの箱に直面しているみたいだ。


「さあ、早くするんだバ」

 よだれを垂れ流しにした気持ち悪い顔でバンティーが迫る。ええい、ままよ。ボクは手を震わせながら襟に手をかける。豊満に膨らんだ胸が白日に晒されそうになる。直視していられず、ボクは目をつぶった。


 まさにそんな時であった。救いの女神さまが来訪してきてくださったのだ。

「お兄ちゃん、うるさいわよ。静かにしてよ」

「まずい、誰か来るバ。一応、俺っちの存在は内緒にしてほしいバ」

 誰かもなにも、穂波だ。よかった、助かった。って、安心している場合じゃないか。ボクがヴァルダイヤモンドになれるって知られたら大事になる。


 よし、変身解除。……って駄目だ。どうやったら変身が解けるんだ。魔力を使い果たしたら勝手に戻るはずだけど。

「ねえ、どうやって変身を解くの。ここで破壊光線を撃つしかないの」

「そんなことされたら俺っちが死ぬバ。アーネストシールって唱えれば意図的に変身を戻すことができるバ」

 慌てながらも大切なことを伝えてくれる。ちゃんと変身を戻す手段があるんじゃん。さっそく「アーネストシール」と唱えたのと部屋の扉が開かれたのはほぼ同時だった。


「お兄ちゃん、さっきから何やってるの」

「べ、別に変わったことはやってないよ」

「でも騒がしかったわよ。お父さんも迷惑がっていたし」

 不信を顕わにした顔つきで追及してくる。どうにかして誤魔化さないとあらぬ嫌疑をかけられそうだ。口にしていたセリフが色々と卑猥だったし。


「えっと、劇。そうだ、劇だ。今度クラス会で劇をやるんだよ。その練習をしていたんだ」

「変身がどうのこうの聞こえたけど、どんな劇をするわけ」

「ええと、シンデレラ。そう、シンデレラ。舞踏会に行くのに変身するだろ」

 ビビデバビデブーに脱がされそうになるシンデレラ。字面だけでも中学生がやっていい劇ではない。


 看過ぐっていた穂波だったけど、「練習するなら静かにやってね」と釘を刺して去っていった。どうにか危機を脱したようだ。まったく、バンティーが妙な提案をするからだぞ。

 って、バンティーはどこにいったんだ。穂波が出ていくのと同時にバンティーの姿も消えていたのだ。ちょっと待て、まさか。嫌な予感がして、隣の穂波の部屋に聞き耳をたてる。


 過たずしてけたたましい悲鳴が響いた。思った通りだった。穂波の部屋の扉を開いた途端、泣き目になった妹が飛び込んできた。

「お兄ちゃん、変なコウモリが、変なコウモリが出た」

 部屋の明かりをつけたらパンツを被って天井からぶら下がった変なコウモリと出くわしたという。あの一瞬で隣の部屋まで瞬間移動してパンツを盗み、天井からぶら下がるってまさに魔法生物の所業だ。その前に、やっていることがだまされた大賞に出てくるあのおじさんと同じだぞ。


 ボクに抱き付いてくる穂波を慰めていると、物陰からひょっこりバンティーが現れた。幸い、穂波は彼の存在に気が付いていないようである。

「君の妹に魔法少女の素質があるか確かめようとしたんだけど、どうやら的外れだったバ。これ以上迷惑をかけるのは申し訳ないから、そろそろお暇するバ」

 そう囁くと、ベランダの方へと飛び去って行った。帰ってくれたのはいいけど、さりげなく穂波のパンツを盗んでいきましたよね。あのコウモリ、いつか逮捕されそうだな。


 翌朝。華怜が朝から満足そうに教室の椅子にもたれかかっていた。話を聞くと、

「変態コウモリが出たから、ベランダに晒し干ししといたわ」

 と、意気揚々と報告してきた。性懲りもなく華怜のパンツも盗もうとしたからお仕置きされたらしい。ただ、ベランダに干されるってあいつにしたらご褒美にしかならないと思うよ。まあ、それ以前に散々殴られているってことは想像に難くない。

次回予告

巷で噂の青の魔法少女。ようやく対面を果たしたけど、ボロクソにけなされたルビィこと華怜は、正体を暴こうと躍起になる。覇王が便乗したうえにダイカルアの怪物まで乱入してくるからもう大変。

おまけにルビィとサファイアが戦うって、もうどうしたらいいの!?

次回、TS魔法少女は戦いたくない第三話「噂の魔法少女は誰? 威光の戦士ヴァルサファイア」

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