罪人と呼ばれる名もなき乙女
明日、彼女は誕生日を迎えるのだそうだ。
生まれてこの方、罪人と呼ばれ続ける彼女には、誕生日なんて知る機会はなかった。それ以上にずっと暗い地下に繋がれて過ごしていた為、時間の感覚さえもなかった。
明日…迎える誕生日の朝、斬首される事で、罪を償えると言われた。
罪と言われても、何かをした記憶はない。
何故なら物心つく頃には、既にこの石牢で軛に繋がれ、たった一人…聖なる力を捧げ続ける事を強要されていたからだ。
罪人に聖なる力……あまりに不釣り合い過ぎて笑える。
時折お喋りな……あれは衛兵だろうか?
そう言う人が勝手にやって来ては勝手に喋って教えてくれた。
どうやら罪人は、この国の王女として生まれたらしい。
しかし正妃であった母が、父王を裏切った結果、不義の子として生まれたのだと言う。
それとわかったのも、生まれた子が王色を何一つ持たなかったから。
この国は、始祖王と呼ばれる人物によって興された国なのだそうだ。
周囲には悪魔の力が満ち、到底人が暮らせないような土地を浄化したのだと伝えられている。
最初は始祖王がたった一人で住み着いた。
徐々に浄化の範囲が広がり、外の人間も入り込めるようになった結果、始祖王の下に人々が集う様になったのだそうだ。
そして国となった。
始祖王と呼ばれた人物に、自分が国を興した…と言う感覚はなかったかもしれない。
しかし、始祖王がこの世を去る時、自分の力を甥に授けたのだと言う。
始祖王自身は生涯独身であったらしいから、そうなったのだろう。
全ては伝承で、嘘か誠か定かではない。
そんな始祖王は見事な銀髪に、深紅の瞳を持っていたと言う。
罪人は汚れ切っていて、元の色等わからないが、虚ろな瞳はまるで影の様な黒い色をしていた。
父王は銀髪で青い瞳。
母であった正妃は金色の髪に黒い瞳だったそうだ。
側妃から生まれた姉もいるのだそうだが、彼女は銀髪と言うより灰色と言った方が正解らしい髪色に、側妃そっくりの青い瞳なのだそうだ。
異母姉も王色はないと言われればそうだが、灰色の髪は見ようによっては銀髪と言う事で、正当な血筋と認められていると言う。
(……もう疲れた……)
罪人は心の中でそっと呟き目を伏せた。
この地を悪魔の力から守り、人の住む地とする為に、ずっと聖なる力を吸い上げられているが、明日の朝にはそれが終わると言うなら、どうか早くして欲しいと願ってしまう。
聖なる力を強制的に吸い上げられるのは、身体的、精神的苦痛を伴う。
いっそ狂ってしまえていたら、少なくとも精神的苦痛には蓋をする事が出来たかもしれないが、罪人は狂う事も許されなかった。
(でも、明日には終わる……やっと、終わるんだわ)
ツキンと鋭い痛みが頭に走る。
聖なる力の吸い上げが齎す痛みは、もっと重く押さえつける様な痛苦で、こんな鋭さは珍しいと、ぼんやりと思っていると、痛みはますますその鋭さを増して行った。
「………っく…」
まだ声帯なんてあったんだ…と、おかしな事を考える。
そんな事を考えるくらいには、声を出すなんて殆どなかった。
とは言え、どれほど痛かろうと苦しかろうと、手当は勿論、薬等恵んでくれるはずもない。
必死に耐えるしかないのだ。
「…………ぅ………ッ…」
………ぃ…
「…………………っぁ………」
………………ぉぃ、って】
「……ぇ…?」
【おい、おーーい!】
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