陰暦七月続
今回が本番みたく言ったものの、終わりませんでした。
前回の反省点と対策を考える。
まずは水分量が多すぎた、という点。
以前「6月下旬」の経験上、クモノスカビは水分量が多い方がよいというイメージを持っていたが、今回は「培地を突き固めて作る」という形態であり、50%量ではあまりに多すぎた。
その結果として、3週間もの期間を使いながら、繁殖はごく表層部分に限られ、おそらく中心部……というよりも表層以外の大部分で、細菌優位の環境が形作られたのかと思われる。
(実のところこのあたりは、最初からレシピ通りの小麦粉を使っていれば、問題にもならない部分であった。これほど加水してはそもそも形にならない)
水分量は40%程度、要は以前と同様米ぬか重量の半分を加水という形で行うこととする。
次は容器の能力的な部分。
発泡スチロール製容器に蓋をすると、内と外をほぼ隙間なく遮断しており、培地から蒸発、内側で結露した水分が底で溜まっている状況にあった。
上と被るが、これでは培地中心部から水分が飛ぶはずもなく、中心部への成育を阻む要素ともなっていただろう。
今回は当初蓋をしつつも、クモノスカビの繁殖が確認でき次第布蓋に切り替え、乾燥を促すこととした。
2023/09/07
0日目時点。
今回は繁殖旺盛だった生糠培地のみを扱う。
米ぬか100gに重量比半分の水を加え、突き固めてヨモギの上に置いた。
撮影は忘れていたが、まぁこの段階では前回と変わらない。
2023/09/09
2日目時点。
前回からするとあまりにも早いのだが、すでにヨモギに白い菌糸が生えていた状態からのスタートであり、十分と判断して蓋を開ける。
その瞬間立ち上ったのが、熟れたバナナを思わせる濃厚な香り。
コウジカビ系の製麴においても、種切後最初に行う切り返しの際に甘い匂いが漂うが、明らかに異なる風味と言える。
培地を翻して置き、これ以降は布蓋へ切り替えて様子を見ていくこととする。
2023/09/11
4日目時点。
表面の菌糸はかなり乾燥が進んだようである。
培地を翻そうと思って触れてみると、特に中心部あたりでかなりの発熱を確認できた。
ただ問題点として、乾燥が進むにつれ、コウジカビ系だろう黄緑色の胞子が急激に増加している。
2023/09/13
6日目時点。
コウジカビがあまりに強い。
一応これはヨモギの側で繁殖し、胞子がこぼれたという雰囲気であり、培地そのもので成育しているわけでは無いようだった。
培地を翻してみると、すでに発熱は終わっているようだ。
2023/09/15
8日目時点。
変化が無い。
重さを量って見ると80g……元の米ぬかより軽くなっている? という疑問点はさておき、少なくとも水分はほぼ完全に失われたようであり、これでは繁殖など望みようもない。
一応の完成、ということにせざるを得ず、割って中を確認していく、
外側から1~1.5㎝程度の範囲は白っぽくなっており、おそらくはクモノスカビが順調に成育できたのであろう。
ただ中心部に行くほど色は元の糠そのものであり、とても出来がいいとは言えない。
2023/09/18
上の培地1つを砕き、炊飯米を混ぜ、常温で3日ほど経過。
元が米ぬかということもあり、正直見れたものではないので写真は載せないが、とりあえず十分な糖化能力を持つことは確認できた。
資料を見る限り、クモノスカビは米系の素材の場合極端に酵素力価が低下、特に加熱した場合だとほとんど繁殖しないという。
米ぬかならタダでいくらでも手に入るから、という感じで行ってきた実験であるが、素材という面で限界はあるのだろう。
今回の実験をまとめると、方向性自体は間違っていないと感じるものの、布蓋程度では猛暑の中での乾燥があまりにも進みすぎ、到底ベストとは言い難い出来、というものだ。
ただ前回と今回の実験を通じて、クモノスカビの成育特性は概ね掴めただろうと感じており、いよいよ小麦系素材へと移っていきたい。
中国や東南アジアではクモノスカビ系の餅麴が主流だというが、経験して見るとよく分かった。
若干のアルコール生産能と複雑な香味、製麴を進めている段階でしかないというのに、コウジカビ系よりも遥かに「酒」を思わせる。