残った押し麦をどうするか
前回ほぼ失敗に終わってしまった押し麦なのだが、1㎏パックということもあり、結構余っているのである。
あの後麦麴のサイトなどを見てみると浸漬を1時間程度とする指示が見られ、なるほど水分量さえ抑えれば、米麴に準じる形で普通に成功するだろう。
ただ今回それではつまらないので、中国の紹興酒製造に準じた「草包曲」の方法を試してみたい。
0日目時点。
まず本来の方法を述べると、小麦粒を4~5個程度に挽き割り、重量比20%の水を、かきまぜながら3度に分けて吸水させる。
そうして調整した小麦粒を円柱状に突き固め、周囲を稲わらで囲う、というもので、加熱の工程は持たない。
ただまぁ色々と用具があるわけでも無いので、かなり簡略化して実施。
重量比20%の水を、かきまぜながら3度に分けて吸水……までは実施したが、後は多少通気性のある木皮の籠に突っ込んだという程度。
その上に切り藁をまとめたものを載せた。
4日間経過。
いきなり飛んだが、何かしらの変化を感じるまで3日、その翌日まで来てやっと視覚的な変化を確認できた。
拡大してもイマイチだが、それなりの範囲で菌糸が生じ、若干色づき始めている。
鍋に水滴が付いているのが確認できるかと思うが、手をかざすと結構な高温が生じているようであった。
6日間経過。
中心部分は明確に胞子を形成しているが、範囲はそう広くもない。
8日間経過。
この頃だともう発熱は見られない、念のためもう2日間観察。
10日間経過。
日数的に完成の頃。
表面上の変化は乏しいと感じたものの、割って中を確認してみれば極めて良好であった。
表面に関しては、おそらく切り藁を雑に載せただけではあまりにも粗く、十分な湿度を確保することが出来なかったのだろう。
藁はしっかりと全面を覆いつくすように被せなければならなかった。
しかしほんの数㎜も下に行けば、コウジカビの胞子が全体を完全に覆いつくしており、視覚的に確認できる範囲では、他の種のカビらしきものも見当たらない。
少なすぎないかと感じた水分量だが、他のカビの成育を阻害するという点で、非常に有効だったと言うべきなのだろう。
さて元のタイトルは「野生コウジカビ採取法の検討」というものであったが、何度も実験を繰り返すといい加減に分かってくることもある。
大前提としてコウジカビは空気中、土壌中、植物体などあらゆる場所に存在している。
ただ空気中から自然落下を待つというのは、専用に設えた麴室じみた場所以外では不安定かつ不合理と言うべきだろう。
前近代的な技術としてのコウジカビ運用というものは、水分を調整した穀物「粒」――通気性の確保で最適な形状――に、何かしらの植物体をかけておけば出来る、と言えようか。
明治~大正期の食品加工系技術書だと、それは「藁」だとか「新しい蓆」とされ、大豆や麦に対しては「種麴は必要ない」といった文言も見られた。
どうしても種麴で作るものという認識に頭が行ってしまい、えらく遠回りをしていた気がするが、別にハードルがあるような技術では無い。
日本酒製造のように、最適な酵素力を引き出すとなると非常に困難なものの、本来的には家庭レベルで問題なく運用できるものかな。




