重すぎる一撃
それはゆっくりとだが確実に再生を始めていた。
俺達が気付いた時には既に半身が再生し、左の腕以外は元の姿に戻っていた。
「一成さん、動けますか!?」
「走って!!」
4人の内最後に確認したのは俺だ。
それまで意識がはっきりしなかった上に体が思うように動かなかったからである。
レインに肩を借りながら揺れる視界の中必死に壁まで駆け寄ったが、間に合わないと踏んだ俺はレインを突き飛ばして振り向いてその巨大な拳に応戦した。
しかし充分に魔力が溜まっていない状態の俺に、容赦なく振り下ろされた隕石を止める事は出来ず、羽虫のように地面に叩きつけられて全身の骨が粉々にされた。
「一成さん!!」
「レインさん、この位置から回復できますか!?あの一撃は流石の一成さんでもヤバい!!」
「一成さんの音が小さすぎて位置が掴めないんです!!」
かと言って声を上げるとゴーレムに位置を悟られるし、そもそも最早声を上げる力が残っていないんだよな。
「でも、分からなくても、今、行きますからね。」
「レイン、何しようとしてるの?」
ソールの声でレインが何をしようとしているのか想像はつく。
レインなら自分は死なないからと、俺とゴーレムに向かっていくだろう。
やめろ、やめてくれ。
さっきの一撃で瀕死状態の俺の声は呻き声にすらならない。
まるで何かに導かれるように歩き出すレイン。
止めようとするソールとルシウスに見向きもせず、俺に1歩ずつ近付いてくる。
当然ゴーレムもそれを黙って見ているはずもなく、ズシンズシンと大きな足音を立てながらレインに寄っていく。
「危ないレインさん!!」
「レイン!!」
2人が叫んでいるがレインは我関せず、ゴーレムを横切り俺の元まで歩み寄ってきた。
そしてまた涙を流しながら俺に回復魔法を必死にかけ、
「……ゴーレムが、反応していない?」
「ってことはルシウス。あのゴーレムこっちに来てるんじゃ……?」
「……へ?」
珍しく間抜けな声を出したルシウス達は顔を青ざめさせながらゴーレムの注意を引いてくれている。
「一成さん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。何とか喋れる程度には回復したが、まだ体は動かねぇな。」
レインの回復が早かったのと、タバコを口から離さずにいた関係で回復自体は早かったのだが、それ以上にさっきの一撃と【灰の一撃】の負荷が残っているようだ。
完全に回復するにはまだかなり時間がかかりそうである。
「それより、なんでこんな危険な真似をした。」
「一成さんこそ私を助けてこんなことになったじゃないですか。反省してください。」
レインにそう言われては俺も何も言い返せない。
「お2人とも少しはこっちを手伝ってはくれませんかね!?」
「巫女様が救助を求めてるんですけど!?」
俺がレインに説教されてる最中ルシウスとソールはゴーレムから必死に逃げ惑っていた。
「無理だ。体が動かん。」
「も、もう少し頑張っていただけますか?」
「……もう少しだけですよ!!」
レインに言われるとルシウスも否定しづらいようだ。
無茶を言われているはずなのにソールも少し嬉しそうに走り回っていた。
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