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想いに応えられない辛さ

「アーノルドさん達帰って来ねぇな」


「坊主がワシらのパーティーでもクリア出来るかどうかと言っておったからの。よほど意地が悪い仕掛けがしてあるんじゃろ」


「あー、そうだろな。強さだけじゃクリア出来ねぇんだろうよ。だいたい想像付くわ。あちこちに転送の仕掛けしてあるんじゃねーか?」



ーアーノルドとアイナー


「アイナ、いまここ何階かわかるか?」


「いいえ。もうどこかすらわからないわよ」


「こんなんもん、人間がクリア出来る訳ないだろ。脱出すらできねぇんだぞ」


「何かヒントとか無いのかしら?」


「あっても古代文字だったろ?あんなもんゲイルしか読めん」


「外の壁よじ登った方が早かったわね」


「おっ、それやってみるか。あの高いとこにある窓から出られるんじゃねぇか?」


「また罠かもよ?」


「まあ、試して無いことやるしかねぇからな」


アーノルドとアイナはロッククライミングの要領で窓まで登り外に出た。


「ちっ、壁が緩やかに反り返ってやがる。これ登るのかなり難しいぞ」


「壁削ったら足場作れないかしら?」


「強化してそうするしかねぇな」


アーノルドは刀を強化して壁を削り、少しずつ登っていく。


「あいつ、どこまで意地が悪いんだよっ」


反り返りの途中から壁が硬くなり、なかなか削れなくなっていた。不安定な体制で壁を削るのには体力と神経を使う。何日もかけてようやく梁に手が届い・・・


グラッ


「わっ わぁぁぁぁぁぁ」


梁は固定されておらず、やっと到着したと気を抜いたアーノルドは梁ごと下に落ちて行った。


「あの子アーノルドの性格よく読んでるわね・・・」


「クソッ」


ガガガガガガガガッ


落下しながら壁に刀を突き立て、それを防ぐアーノルド。足場を見付けてそこに飛ぶ。


ブォン


その足場もゲイルの罠だった。アーノルドはまたしてもモンスターハウスに転送された。


「もうっ」


アイナは仕方がなくその罠に自らから飛び込みアーノルドを追った。


そこの魔物を倒し尽くすと転送ゲートが2つ。


【もう一度挑戦する人は左、外に出たい人は右】


「一度帰る?」


「そうだな。別に食わなくてもいいが、水だけだとストレスがたまるな。仕切り直すか」


すでに数年このタワーに閉じ込められていたアーノルドとアイナは右を選んだ。


ブォン


「はぁ、やっと外か。これ本当にクリアさせる気あるのか?」


「これ、ゲイルとの直接対決の時の参考にしろっていってたわよね?」


「あぁ、今のゲイルはこれだけ自在に魔法陣を組めるってこったろ?それプラスあいつの魔法だ。俺、負けんじゃねーか?」


「あら、私を諦めるのかしら?」


「んなわけ、ねーだろっ」


ブォン


「えっ?」


「あれ?さっきの部屋よね?」


「いや、書いてあることが違うぞ?」


【もう一度外に出たい人は左、挑戦する人は右】


「殺すっ」


アーノルドはゲイルに殺意を抱いていた。




「そろそろ休みにする?」


「そうじゃな。アーノルド達が帰ってこないんじゃがどれぐらいでクリアすると思ってるんじゃ?」


「ちゃんとマッピングすればそんなに掛からないと思うけど、父さん達はそんなのしないだろ?実体化解除されるくらいには帰ってくんるんじゃない?」


「ぼっちゃん、どんな意地悪な仕掛けしてあるんだ?」


「普通の人なら脱出は可能なんだよ。いくつかのモンスターハウスには外に出られるゲート作ってあるからね。1回目は外に出てもまた戻されて、もう1回外に出るを選ぶと出られるんだ。父さんなら1回戻されたのにムカついてタワーに戻ると思うけど」


「そんな転送ゲートだらけなら誰もクリア出来んだろ?」


「宙層以上はそうだね。それまでは規則的に魔法陣置いてあるから、法則に気付いたら比較的簡単。宙層以上は魔法で浮かないと難しいね」


「そんなやつおらんだろ?」


「そのうち少しぐらい浮けるやつ出てくるって。父さん達ならジャンプだけでもいけると思うけどね。」


「戦いの時も同じ仕掛けか?」


「いや、こっちのは倒す為の仕掛けを組んである。タワーはそこまで強い敵は出ないよ。ゴーレムを自動で動かすのには限界があるから」


そう、アーノルド達はモンスターハウスに落ちて戦ってるだけで、あとはずっと罠に掛かってたのだ。


本当に強いのは最上階のゴーレムだけ。物凄く硬くてめちゃくちゃ暴れるだけのゴーレムだが。



まだまだアーノルド達は帰って来なさそうなので皆で遊びに行くことに。もう時間を止める必要もない。



「なぁ、ぼっちゃん。アーノルドさん達気になってんのか?」


「そうだね。ちょっと見に行ってみようかな?」


「いや止めとけ。アーノルドさんならクリアするだろうよ」


「そうだね」



そしてアーノルド達が帰って来ないまま時が過ぎ、ナターシャをグリムナ達と見送った。ちゃんと昇華してくれたのでいずれグリムナの元に戻ってくるだろう。



「ゲイルよ、ありがとう。ナターシャは満足して逝ってくれたようだ。それに俺も今回は最後まで一緒にいれて見送れた事を感謝する」


「ゲイル、ありがとう。幸せをやり直させてくれてありがとう」


「ナターシャさんは俺にたくさん幸せをくれた人だからね。ちゃんと昇華してくれて良かったよ」


「どんな幸せ?」


「味噌と醤油とシルフィ」


「もうっ、私と調味料を一緒にしないでっ」


でも本当に良かった。



人の死を次とか言うのは不謹慎だけど、デーレンやポットは未練はクリアできただろうか?


結局あの二人は仲良いまま結婚しなかった。子供が出来たらそれが心残りになるかもしれないとの理由だった。どれぐらい前の前世かわからないがその時の子供がどうなったか俺にもわからない。何かを成したのかどうかすらわからんからな。


ポットとデーレンは昇華間近だったし、ドワンの星で流通のシステムの確立とお菓子の伝導ということをやってくれた。途中でめぐみの星に残してきた家族と会いたいかと聞いたら不要と言われた。あまり良くない家庭環境だったのかもしれない。二人とも二つ返事でこっちに来たからな。



そして次の休みに二人をエデンに連れてきた。もう二人とも結構歳とったよな。俺達は全く変わらないから向こうも不思議な感覚だろう。



「なぁ、ポット。向こうの星で色々な広めてくれてありがとうな。後は好きな事をやってくれたらいいぞ」


「じゃあ、チョコレートと南国フルーツは手に入りますかね?」


「こっちから持って行くことは出来るけど、栽培して流通させるにはまだ人口が足らないな」


「いや、マリさんの分だけでいいんです。俺はあの人の為にお菓子を作って死んでいきたいんです。いつまでも変わらないあの笑顔を見れて本当に幸せです。後はチョコレートがお好きだったので、それを食べて貰いたいなって」


「あそこでずっとお菓子を作り続けるのか?」


「はい。皆には基本の物は教えきりましたので、残りの人生は自分の為に作りたいんです」


「わかった。なら材料は俺が手配してやる。保存魔法の掛かる保管庫を作ってやるからそこに入れておくよ」


「いつもありがとうございます」


そういってポットは微笑んだ。



「デーレン、流通を発達させてくれてありがとう。あとはもう好きにしてくれてもいいぞ」


「うん、ありがとうゲイル。でも私は最後まであそこにいるわ。次の世代が育って行くの見てるのも楽しいのよ」


「そっか。なら好きにしてくれ。俺に何かをしてやれることあるか?」


「うん、あるけど・・・・。もうおばさんになっちゃったし」


「いや、歳とってもおまえは可愛いぞ」


「本当?嬉しいわ。そんな風に言ってくれて。マリさんもずっと綺麗だと言ってくれたのゲイルだけだったって言ってたわ」


「いや、本当にマリさんもずっと綺麗だったよ。おばあちゃんになってもね」


「ふふっ、ゲイルって不思議ね。男の人ってそんなこと言わないじゃない。特にずっと一緒にいると」


「思ってても恥ずかしいからね、俺はそれを悔いた経験があるから」


「ゲイルは何回も生まれ変わって全部記憶あるんでしょ?」


「そうだよ」


「辛く無かった?」


「いや、自分が自分で無くなるかと思うぐらい辛かったよ。最後は記憶を消してくれとめぐみに頼んだぐらいだからね」


「で消えたの?」


「一応消してくれたんだけどね、めぐみを見て記憶が戻った。今では消えなくて良かったと思うから不思議なもんだね。時間が経つと辛い思いも大切な思い出だ」


「めぐみさん愛されてるのね」


「初めはムカつくことの方が多かったけどね、まぁあいつが旨そうに飯を食ってるのを見るのは好きだな」


「ふふ、羨ましいわ」


「お前ともこうして仲良くなれただろうが」


「そうね。うん。そうよ。あのままスレ違ったまま終わるよりずっと良かったわ。ねぇ、ゲイル」


「ん?」


「もしも、もしもね。前世の記憶が無くて、シルフィードやめぐみさんも居なかったら、あの時初めてをもらってくれたのかな?」


「あぁ、あのまま押し倒しただろうね」


「良かった。一応女としては見ててくれたのね」


「前から可愛いと思ってたと言っただろ?」


「うん、ありがとう」



デーレンの未練は俺だろう。だが応えてもやれないし、昇華もして欲しい・・・


ちょっと申し訳ないけどチルチルに相談してみよう。


チルチルは俺への未練をまた会うという強い願いに変えて昇華した。グリムナもそうだ。


デーレンもそうなれば昇華出来るかもしれない。でもそれで昇華しても応えてやれないのにそれをしていいのだろうかとゲイルは思い悩むのであった。



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