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08.復活した裏生徒会

「裏生徒会っていうのは理事長の権限の元、表では解決できそうにない事柄を別件で解決していく、まあ、組織みたいなものだな」

ざっくりとアリオス先生に説明をしてもらったけど。私は別の意味で少し怖くなっていた。

(私の前世ではあり得ない設定の生徒会がこの学園ではあったなんて)

恐るべし乙女ゲームの世界。

(まさかとは思うけど。これからファンタジー要素追加されますとかならないよね?)

今さらながらここはゲームの世界なのだと感じつつも、ゲームの中なら私たちはただのキャラクターで思考や感情なんていらないはずだ。何も考えなくていいから用意された台詞を棒読みで言っていればいい。

重要キャラじゃない私には台詞すらないだろうが。

(思考だってあるし感情もある。たとえここがゲームの世界だろうと私にはやっぱり現実世界だよ)

ゲームのようにやり直しますか?イエス!とはならないのが現実世界だしね。

(きっとゲームのようにやり直しはできない世界のはずだ。なのに戦わなきゃならなくなったらどうすればいいの〜!?)

あとで梓紗に確認しなきゃ!


「裏生徒会に理事長が関わるのは何故ですか?」

学園のトップで恐らく誰よりも忙しいはずの理事長が裏生徒会に関わろうとするのはどうしてだろうと気になった私は聞いてみた。

「暇だったから」

「……はい?」

あまりにもあっさりした返答に私はぽかんとした。

(いや。理事長ってすごく忙しいイメージを勝手に持っていたけど、この学園の理事長は違うの?)

「大体、こんな面白そうなことを歴代の理事たちは凍結していたなんて俺には理解できねぇな」

ニヤリと笑みを浮かべるアリオス先生に私は若干引いていた。


「ノクト」

アリオス先生が1人で楽しそうにしていることを尻目に私は隣にいるノクトに声を掛けた。

「うん?」

「今さらなんだけど。今の学園の理事長って誰?」

「あの人だよ。1番楽しそうにしてる人」

(ですよね〜)

驚くことを放棄するかのように私はガックリと項垂れた。

アリオス先生の言動からもしかしてとは思っていたけど。

(アリオス先生が理事長をしているこの学園。まさかとは思うけど大問題を抱えていたりしない……よね。さすがに)

アリオス先生が理事長ってことが1番の大問題かもと思ったのも束の間で。

(けど。歴代の理事長が凍結していた裏生徒会をこれからはするとなると……)

やっぱり何かしら大きな問題があるかもという考えになってしまうのだった。


「アリオス先生。裏生徒会のことについてはわかりましたが、その生徒会には俺たちも関わらなくてはならないのですか?」

ノクトがアリオス先生に質問していた。

「お前たちは表の生徒会があるからな。知らせておくのが道理だと思っただけだ」

「それはつまり。手伝ってほしい時は力になれよ。という意味ですか?」

アリオス先生のもっともらしい言動に間髪なく斬り込んで質問するノクト。

「まあ、そういうことになるな」

悪びれることもなくアリオス先生は言った。

「学園長を始め他の教師の方々も当然、裏生徒会のことはご存知なのですね?」

「…………」

(あ、黙った。これはこっそりやればバレないと思ってるパターンだ)

アリオス先生の態度にノクトはため息をついた。

「この学園の生徒会長としては裏生徒会の発足は断念して欲しいです」

「な、なんでだよ!」

アリオス先生は食いついてくるがノクトも負けていなかった。

「理事長の権限とか言ってるけど、裏生徒会で出た建物の被害やましてや生徒に対しての被害はどう保証するつもりなんです?」

ノクトの表情は微笑んでいるけど目は全く笑ってはいなくて尚且つ声音は絶対零度になっていた。

(ノクト。めちゃくちゃ怒ってる!!)

「しかも。理事長と教師と生徒会顧問という3足のわらじを履いててそれに加えて裏生徒会にも手を出すとか馬鹿ですか!!」

誰も何も言えず生徒会室は重苦しい雰囲気になった。


「あの」

ふと誰かが声を出す。みんな声がしたほうを振り向いた。

タスクくんが手を上げていた。

「裏生徒会のことはどうでも、いいんですけど。……莉桜さんにヒドイ内容の紙を、書いて出した犯人は許せないです。そういう、人を野放しにするのは莉桜さんの、ような人を、傷つく人を増やして、しまうのではないのでしょうか」

「タスクくん」

タスクくんはふわりと笑って言ってくれた。

「莉桜さんも僕も、みんなも仲間。傷ついた仲間がいるなら、助けたいし、守りたい。傷ついてしまった心を癒してあげたい」

「…………」

「…………」

「だから。見つけましょう。生徒を守るのも生徒会の仕事だし」

「タスクの意見は私も同感だけどさ」

傍らで聞いていたシャルロットが今度は声を出した。

「でも。生徒会は犯人捜しをするためのモノではないよね?顔バレしてるから他の生徒の反感を買うかもしれないよ」

「それは……」

タスクくんが言い淀んだ所にガタン!と立ち上がった人物がいた。

生徒会顧問のアリオス先生である。


「顔バレしないアイテムならあるぜ!」

「とりあえず。アリオス先生は黙ってください」

ノクトがすかさず間に入った。

『なんだよノクト、お前だってアイツを傷つけたヤツを許せねぇって思ってるんだろう?』

『それはそうだが。生徒会はそういうことをするための……。そうか。そういうことか』

ノクトとアリオス先生の会話は小さすぎて聞こえてこなかったが、何やら2人で頷き合っていた。


(なんで頷き合っているんだろう?)

首を傾げているとノクトとアリオス先生は顔を上げた。そしてノクトはこう言ったのである。


「裏生徒会発足します」


この学園で凍結していた裏生徒会が長い年月を得て復活しようとしていた……ってええ!?反対していたはずなのに一体何故!?

お読みいただきありがとうございました。

次回は番外編です。

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