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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
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140 tr33, serpents in disguise/偽りの蛇

「アタシ、決めた」

結局疲れ果て、そのまま客間で寝てしまったアンゲラ、一旦仕切り直しで借りている部屋へ戻してもらい、身支度を整える。

昨日食べなかった分を取り戻すかのようにモリモリ朝食を食べる彼女は、唐突に言い出した。

「アタシ、ちゃんと読み書きできるようもっと頑張る。

 ルスキ語も、話ができるようにする。

 昨日聞いたこと、忘れちゃいけない事だ。

 アタシそんなに頭良くないから、ちゃんと文字で、文章で書いて残すんだ。


 アタシのご先祖様が志半ばで眠りについたのも、きっと理由があるはず。

 ケインについていけば、きっと何か分かるはず。

 だってアンタ、SSSR工作員?なんだろ?」


…勘が鋭いな、ナージャシュディさんが復活して今生きてること、教えてなかったはずだけど。


「残念ながら身体はそうでも、頭の中身は別物だ。

 出来れば一緒にしてほしくないな。

 だが、オレに付いてきたら判ることもあるかもしれない。


 わかった、もう帰れとは言わない。

 だが覚悟してくれ、今日の話以上に辛いことだってきっとある」


 いつか分るだろう、その時、彼女たちはどう感じるだろう。



「だがその前に、スヴェリエの文字で単語の書き出しと文章を書く練習だ。

 食べ過ぎると眠くなるぞ」

「ひーん」



――――――――――



「先日は悪い事をしたの。

 儂らの歴史を教えるには、どうしても避けられない事だったんじゃよ。

 お詫びに、お嬢ちゃんにはこれを差し上げよう。

 フセスラフ様が最後に作ったとされる、カメオのペンダントじゃ。

 肖像画共々そっくりじゃろ?

 もともと手先が器用で彫刻を生業にしていた時期もあっての、死の間際にふと思い出したように彫り込んだそうな。

 この容れ物と共に、大切にしておくれ」

「そんな大事なもの、貰っていいのか?」

「大事だからこそ、じゃ。

 儂らの時代にすべて決着をつける、これはそのための決意の様なものじゃ。

 先日の儂からお詫びは、こっちの容れ物じゃよ」


一見素っ気ないただの木の箱だが、空けると金や絹で装飾を施したとんでもない豪華なものだった。

「ちょ、ちょっと!なんだいこれ!なんだかピカピカしてるんだけど!」

「ほっほっほ、あれから数日しか時間を取れなかったからの、これしか細工できなんだ。

 平和な時代になったら、外側も外してみい。

 ちょっとした財産になるぞい」

「じい様よう、あんま小娘に贅沢さしちゃいかんぞ…」

「何を言うか、ケイン殿こそもっとアンゲラ殿の事を大事にしないと、逃げられてしまうぞい!」

「いやオレたちゃそういう関係じゃねえよ」

「じゃあどんな関係じゃ?」

「旅の仲間」

「ほっほっほ、まあそういう事にしておこうかの。


さてその旅の話じゃ。

お主ら、これからルスカーヤ聖導帝国のモスカウまで行きたいとあったな。


…念のため聞くが、正気か?

何をしに行くかまでは聞くまい、じゃがお主らは目立ちすぎる。

このことは、そのままでは看過できぬ。


 一つ、知らないであろうことを教えよう。

ここに来るまでに、ルスカーヤ人を見たか?

やつらはの、おそらく魔力の影響で多産の低身長に進化したのよ。


あの国にはいくつか魔力を含んだ隕石があっての、近くに行けば行くほど影響が強く出る。

じゃが不思議なもので、その土地によって多少の影響力の違いがあっての。

ルスカーヤで影響力がある隕石はサリシャガン、エカチェリンブルク、ツングースカ、あとシベリアにいくつかある。


サリシャガンやエカチェリンブルクの隕石は、人間、いや、動植物生きとし生けるものすべてに影響を与えた。

あの周辺で生まれる動物や植物は、やたらと繁殖力が強い。豚や牛は通常の七割程度の背までしか育たず、倍は子を産み、その分寿命は短い。


人間も例外でなく、平均するとケイン殿の腰より下くらいまでしか育たんのよ。

小人族、とすら呼ばれておる。

多産で数だけは揃うから、やたら戦争したがる。

そして、短気で残忍なものが多い。



奴らは沢山戦い、沢山死に、沢山補充される。

領地が大して増減しないのが不幸中の幸いじゃが、要は人間なぞ使い捨て扱い。

残忍な人間になると、遊びで小人族を殺すなんて噂も聞いた。

奴らはいつも飢えていて、食べ物を探している。

幸い他の生き物も多いから、人に手を付けることはなさそうじゃがの…


つまり、あの国は生き物の価値が低い。

そんな国でお主らみたいな大きい人間や狼が来てみろ、目立ってしょうがない上にとんでもない因縁を付けられて追い詰められるのが落ちじゃ。



ただし、手がなくはない。

全員が全員小人族ではない、ちゃんと支配者層や一般人だって住んではおる。

小人族でも、中には賢い者もおる。

彼らも娯楽を欲しておるからの、貧しいことに変わりはないが場所を選べばちゃんと人はおる。

何も知らないままで行くことは、儂は反対じゃ。


じゃから、お主らにはロマ族と共に南下することを提案する。

観光や、ガイドとして雇うのではないぞ。

お主らもロマの、旅芸人一座の一員として行くんじゃ。

当然、客を呼べる程度には芸を覚えてもらう。

…これで、どうじゃ?

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