第23章 恋心
第23章 恋心
「俺、星羅のこと好きなんだ」
エリザの街の噴水広場に腰掛け、エイトが呟いた。周囲のざわめきに混じったその告白は、隣に座るレンにもはっきりと聞こえたが、彼は言葉を失ったまま口をパクパクさせている。
「なんだよ、その顔は。馬鹿みたいな顔をしてるぞ」
エイトはわざとらしくそう言って笑った。
「だって、だってエイトが、突然そんなこと言うから・・・・。だからびっくりしたんだ」
本当にそれだけなのか？エイトが星羅を好きだったことには驚いたけど、なんだろう、この気持ち・・・・。エイトの気持ちを知って焦ってるのか？
レンは困惑していた。エイトの告白を聞いて、彼を応援する気持ちよりも先に感じたのは焦りだったのだ。
「驚いてるだけじゃなさそうだけど？」
眉間にしわを寄せた状態で考え込んでいるレンにエイトは呆れた表情で声をかけた。
「なんで、呆れたような顔するんだよ」
今度は不満げな表情を浮かべるレンに、エイトは呆れた顔のまま笑ってみせる。
「自分の気持ちすらわからないなんて、鈍感なやつだなって思っただけだよ」
「エイトの言ってることが、よくわからないんだけど・・・・・・」
「不満そうな次は、悲しそうな顔か。表情がコロコロ変わるから、みてて飽きないよ」
「バカにしてないで教えてくれよ。何が言いたいんだ？」
エイトは益々呆れて溜息を吐く。
「だから！レンは星羅のことをどう思ってるんだ？ってこと」
「僕が星羅をどう思ってるかって？」
「そう。俺が星羅を好きだって言った時、どう思った？」
「どうって・・・・。驚いた」
「それだけ？」
「・・・・」
数秒の沈黙の後、「焦った」とレンは言った。
「なんで焦ったんだ？それがわかれば、俺が最初に聞いた質問の答えになるだろう」
「焦った理由なんて・・・・、だって、どうしようって思って。もしも、エイトと星羅が、その、付き合うとか、そうなったらどうしようって。それは嫌だと思ったんだ」
レンの顔が緊張と恥ずかしさで真っ赤になっている。
「バカ、俺の前で真っ赤になるな。で、嫌だと思った理由は？さすがにわかっただろう」
コクリ、と頷くレンの頭をエイトが優しく叩いた。
「な、やめろよ。子どもじゃないんだぞ」
「こうでもしないと自分の気持ちをはっきり理解しないなんて、子どもみたいなものだろうが。ま、俺も少しいじわるなやり方だったかもな」
レンが「まさか・・・・」と言葉を発した。
「そう、そのまさか。レンに自分の気持ちを理解させるために、わざと俺が星羅を好きだって言ったんだ。悪かったな」
安堵の表情を浮かべるレンをエイトが肘でつついた。
「星羅が来たぞ」
