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最終兵器の彼女その3

「それと俺を無視してたのと関係があるんだ?」

「別に、無視なんてしてないわ」

「へえ、でも少なくとも避けてはいたよね?」


掴まれた手首がふと緩まる。

けど、自分の方に引き戻す前に掌が合わせられた。


「ちょ―――」

「まゆにさ、何か言われなかった?」

「…!」


まゆ。

そういえば、さっきから麻生さんのことをずっと呼び捨てにしていることに気付く。

私とこの男が一緒のクラスの時はまだ苗字で呼び合っていたように思う。


「…何か言われちゃ困ることでもあるわけ?」


ふ、と挑戦の意を込め笑うとにいまりと笑い返される。


「うん。…よかった、その様子だと何も知らないよね」


何を?

樹と麻生さんが付き合ってること?

そんなもの端から匂わせられすぎてばればれだ。


「いい加減離してくれない?…もう戻りたい」

「だめ。今は自習でしょう?次の時間はHRなはずだから、受けなくても支障はないはずだけど」


だから、何故この人たちは私のスケジュールを把握しているのか。

カップルで私をターゲットにストーカー?

その無駄な労力をお互いに割けばいいのにと激しく思う。


「ふ、なんでそんな人の時間割を知ってるのかって顔してる」


…あー、幼馴染ってほんと損だ。

知りたくないことは大抵わかるから。

逆に知りたいことは靄にかかったみたいに分からないことが多い。


「…ずっと計画してたんだから」

「は?これを?」

「うん。本当はもっと待つつもりだったけど。なかなかこちら側に来ないどころか遠ざけ始めたから」


話がよく読めないが、つまりこの趣味の悪いいたずらを綿密に企ててきたってことだろうか。

呆れを通り越していっそ尊敬するほどの暇人だ。


「…生産性のない計画ね」

「そう?俺には利益しかないよ。…李緒次第だけどね」

「私次第?…もっと驚いたほうがよかったの?」

「うん?驚くというより、頷いてほしいかな」

「はあ…」


…わけが分からない。


「ふふ、ね…もしかしてさ、まゆに嫉妬した?」

「は………ッ?!」


ぞわっ、


ぴん、と私が手を引っ張ったために力が均衡する。

手…が、!


「ん?」


組まれた手。

私の指と指の間に樹の指が滑る。

虫か何かが這うような、ゆっくりとした撫で方に背中に悪寒が走る。


「ちょ、と。やめて」

「んー…何を?」


こいつ…!!


「やめてってばっ」

「っと、あぶな」


堪忍袋の緒が切れると同時に繰り出した攻撃ももう片方の手でやすやすと封じられる。

手を出したのは悪いけど、無性によけられたことに腹が立つ。

きっと映画の中の「待ちやがれ!!」とか言ってる人、こんな気持ちなんだろうなとか考えているうちに両の手がひとまとめにされていた。


「よし。それにしても李緒、外見おとなしそうなのに乱暴なのは変わらないんだね」


そうじゃなきゃ李緒じゃないけどね。

微笑まれてさらに怒りのボルテージが上がる。

もともとおとなしいのを樹が挑発するのだろう!


…ああ、まだ自分の立ち位置をわかってなかったときはこうやって突っかかっていたっけ。

忘れていた感覚にうなだれる。


「あれ、もっと突っかかってこないの?樹のせいでしょう!とか…」

「…樹」


「なにがしたいの」


突然無表情になった私に紡ぎかけた言葉を樹が引っ込める。


「………怒った…?」

「どうして」

「じゃあ嫌いになった?」

「わけがわからない」

「じゃあ」


なんで突然避けた…?


「…面倒くさいから」

「え」

「麻生さんと樹が付き合い始めたって噂が流れたの、知ってるんでしょう?」

「…まあ」


歯切れ悪そうに頷く樹。


「よくある話だよ。女子のやっかみ」


そりゃまあすごい攻撃で、と精一杯軽く言う。

樹に知られていたならもう隠す必要はない。

でも、それを私がどう思ったかについては話は別だ。



誤字脱字等ございましたらお手数ですがご指摘お願いいたします。

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