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最終兵器の彼女その2

リーサルウェポン投入です。


「えっと…隣良い?」


小首を傾げて許しを請う視線はその奥で「いいよね?」と言っているのが分かる。

許可を求めているように見えて結局は決定事項ですか、そうですか。


「どうぞ、私は戻るから…」

「授業はないんでしょう?」


立ち上がろうとベンチに手をつく。

それを抑えるように肩に置かれた手を思わず振り払った。


「っ、」


やめてよ、そんな傷ついたような顔しないで。


一瞬伏せたあと、前に視線を戻すと何もなかったように微笑んでいた。

欠点なんかない、男のくせに綺麗な肌、彫が薄くて整ったパーツ。


いつき、授業は」


「さあ」


「樹」


「…」


だんまりか。

ため息をつくと腰をずらす。

すかさず隣に陣取る男に何とも言えない気分になった。

…どうせ気が済むまで逃がしてはくれないのだろう。


「樹、クラスの人を困らせるのはやめなさい。ちゃんと行事には出て」


「李緒がいなきゃ意味ない」


「それこそ意味のないことよ。クラス対抗なんだし、堂々と敵を応援できるわけないでしょ」


「じゃあ李緒は同じクラスだったら俺のこと応援してくれるの?」


「…」


急に責めるような口調に閉口する。

返事してよ、と静かに言われても無理なものは無理だ。

この男は分かってないし、知らないのだ。

いや、この男に限らず麻生さんにだって、全校探したって誰も知らない。


『―――樹くんって、麻生さんとお似合いだよねえ!』


噂好きの女の子とその友達の話し声がちり、と頭をかすめる。

一瞬過去に意識が飛んでいたのか、気づくとこちらを樹が覗き込んでいた。


「わ、」

「聞いてないの」

「ごめん、何?」

「だから」


「ちょうど去年の今くらいだよね、俺を避け始めたの」


ひどく嫌な鼓動を心臓が刻んだ。

何故って、偶然か否か、今私もそのことを思い出していたから。


「べ…つに」

「嘘だ」


さらりと否定されて言葉に詰まる。

無表情の双眸が観察しているのが分かる。

あわてて視線をずらすとくすりと空気で笑われた。


「家にも遊びに来なくなったし…一緒に帰るのもだんだん無くなった」


ね、なんで?


『あの子さあ、ただの幼馴染なんだよね?』

『なんであんなべったり?』


「ただの、幼馴染だし…べったり仲良くする歳でもないでしょ?」


目を細めてただ観察される。

暴かれる、ばれてしまう、ばれる?何を?


「本当にそう思ってるの?」


『本当に好きじゃないって思ってんの?』

『だったら麻生さんに申し訳ないとか思わないわけ?!』


「うん、思うよ」


ああ、嫌だ。

こうなるからこの男には近づかなかったのに。


「ふうん、そう」


そっか、そっか、


きし、ベンチが軋んで僅かに樹が離れたのがわかる。

ほっとした次の瞬間だった。


「うそつき」


突然がっちり手を掴まれてびっくりする。

そのまま樹の方に向かされて、否が応でも目が合う。

久しぶりに見るこの上なく冷たい表情に顔がこわばる。


「ていうかさ、さっきから誰と喋ってるわけ」

「は、」

「いや、は、じゃないし。全然こっち見ないで、上の空だったけど」


気に入らないな、と笑う樹はさっきの麻生さんとびっくりするほどそっくり。

本当だ、苛々するほどお似合いね。


「離してよ」

「やだ、まだ話終わってないし」

「っこの、」


ぐ、と自分の体の方に引き寄せようと力をこめてもびくともしない。

いつの間にこんなに力の差が生じたのか、愕然としていると鼻で笑われた。

む、とするとさらに手を引かれる。


「確かに、ただの幼馴染はべったりするのはおかしいよねえ」


微笑む樹になにか不穏なものを感じる。

本能から身を引こうとすると捕まれた手を引かれた。


「麻生さん」

「…!?」

「あ、図星?」


さらに抵抗する私をやすやすと抑え込みながら楽しそうに笑う。

さっきの冷酷無比を具現化したような顔はどこへやったのか。

くるくると表情を変える男に冷や汗が止まらない。


麻生さんのばか、私にしか扱えないとか嘘ばっかり。

最終兵器なんて手におえないから譲ったのに。


「麻生さん、…ああそうか」

「な、に」


なにか心当たりがあるのか、人の好い笑みで小首をかしげる。

…確かに線が細くて外見人畜無害だから、とっても、ええ、私よりもよっぽど似合ってますけど。

そのポーズは男としてどうなのだろうか。


「たしかあの頃って俺とまゆが噂になった頃だよね」

「…!」

「うん?もしかして知らなかったと思ってた?」


さすがにそこまで愚鈍ではないよ、ときらきらしい顔で朗らかに言う。

世間一般の高校生男子は愚鈍とかいう言葉は使わない。

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