第1話【 執筆という名の絶望と、無限スクロールの罠 】
祖母の家(父親の実家である古本屋)の
2階で暮らす
主人公のヒュッゲ満喫した暮らしぶりです。
主人公は、
作家志望(夢みてるだけ?)の無職。
祖母が
外出する時だけ店番しているだけの
居候。
「今を幸せに生きる」をモットーに、
定職に就かず、
暴飲暴食や爆買いなど欲望のままに
日々を
謳歌する26歳の主人公の日常です。
どんなに羽目を外しても、
彼独自の
相殺処理に着想を得た「自己流相殺術」で
チャラにできる
という独特なマイルールを持って自由に
生きています。
朝、零は珍しく早起きし、
ノートパソコンの前に正座した。
「今日こそ書くぞ。
プロローグの一文目さえ決まれば、
あとは芋づる式に書けるはずだ」
零はキーボードに指を乗せ、
深呼吸した。
カーソルが白い画面の上で点滅している。
「……えーっと」
5分経過。カーソルは点滅を続けている。
「いや、まず主人公の名前からして
再考の余地があるな。
もっと文学的な響きが欲しい」
10分経過。零はスマホを手に取り、
「小説 主人公 名前 かっこいい」で
検索を始めた。
30分経過。
零は気づけば全く関係のない
猫の動画を
無限スクロールしていた。
(……いかん。
時間泥棒に完全にやられている)
零は青ざめてスマホを伏せ、
脳内電卓を叩き始めた。
「執筆時間ゼロ、
無為な時間の浪費、
マイナス150は堅い……。
だが待て、諦めるのはまだ早い」
零は苦し紛れに理論を組み立てる。
「猫の動画は、実は『癒し』による
創作意欲の回復インプットだ。
あれを見た今、
俺の心は間違いなく浄化された。
プラス60は妥当なラインだろう」
それでも収支はマイナス90。
零は天を仰いだ。
今日ばかりは、
こじつけの相殺術も分が悪いようだった。
【 言い訳の量産と、正午の敗北宣言 】
昼が近づく頃、
零は結局一文字も書けないまま、
ベッドに寝転がって天井を見つめていた。
「そもそも、いい作品っていうのは、
無理に
書こうとしても生まれないんだよな。
むしろ今は
『構想を熟成させる期間』と言える」
零はそう自分に言い聞かせながら、
枕元に置いてあった漫画に手を伸ばした。
資料研究という建前で、
気づけば3巻を読み終えていた。
階下から祖母の声が響く。
「零ー、お昼できたよー」
「はーい」
零はのそのそと起き上がりながら、
最後の抵抗とばかりに脳内電卓を叩いた。
「今日の執筆進捗ゼロ、
無為な時間マイナス150。
漫画3巻分の『資料研究』、
プラス30が妥当か……いや、
正直これは自分でも苦しい」
零は階段を下りながら、
深いため息をついた。
「まあ、こういう日もある。
明日こそは、きっと書ける」
その台詞は、
もう何十回目になるか零自身も
覚えていなかった。
祖母が用意した
昼食のかおりが漂ってくる中、
零は今日もまた、白紙のままの
ノートパソコンを2階に残し、
現実からの
一時撤退を決め込むのだった。
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夕方、腹の虫が鳴きだした零が1階に
降りていくと、
台所から香ばしい匂いが漂ってきた。
祖母が珍しくフライパンを振っている。
「零、今日はハンバーグ定食にしたから。
デミグラスソースも自家製だよ」
零は思わず身を乗り出した。
祖母の手料理は、……。
明日、20:40 に、第2話を投稿します。




