“ビイズバニキズホセ街道運動” その2
打ち合わせをしたあと解散し、明日の出発に備えて寝るだけとなったとき、家族部屋でネゾネズユターダ君が口を開いた。「さっき報告を受けたんだけど、南の国が国境に軍を集めているらしい」
「へー、攻めてくるつもりなのかな?」
「こっちも派兵してるから睨み合いで終わるだろうって話。ラブパレードに水を差すだけの嫌がらせだろうって」
「単独で戦争を仕掛けるわけがないけどねえ」狙いがどこにあるのか分からない。レシレカシ周辺国のことは知っててもこの辺の地理や情勢には詳しくない。「南の君主ってどこに住んでるの?」
「いや、そこまでは。そもそも本気なのかどうかも分からないよ」ネゾネズユターダ君は肩をすくめた。
私は溜息をついた。「こういうのは一箇所に集めた方がいいな……。国境って近いの?」
「ここから半日くらいのなんとかっていう川らしいよ」
「……近いな」
「僕らが行くのはやめてって言われてる。僕らが出るとどっちもあとに引けなくなるからって」
「うーん」話をつけたいところはあるが、ラブパレードの日程は1週間きっちり決まっているからなあ。あまりここで仕事をしたくない。祭りだけやりたい。「分かった」
9歳のピュゴダ゠グスは黙ってこちらを見て話を聞いている。隣で4歳のボラキュクケが、「楽しい祭りなのにねえ」と率直な愚痴を言った。
ボラキュクケは相当に大きくなっていて、もう馬や牛のサイズを越えていた。ダトベ城の部屋は広いのでみんなが入るのに問題なかったけど道中の宿の部屋は確保が大変だった。馬小屋に寝させるわけにもいかないしね。
「お母さんはやっつけようと思えばやっつけられるんでしょ?」7歳のケテマ゠シソが明るい声を出した。
私とネゾネズユターダ君は目を合わせた。
彼の方が口を開く。「軍隊の方は『恐慌』を唱えればなんとかなる?」
「そこでネゾ君が魔法を叩き込む?」
「僕の魔法は防がれちゃうんじゃないかな。あ、『風刃』ならいけるかも」
「案外、100人200人ならいけるかもね」
「向こうに魔法使いが何人いるかだけどね」ネゾネズユターダ君は子供たちを見た。「子供たちが防御を請け負ってくれるならかなり有利に進められるんじゃないかな」
9歳の息子、7歳の娘、そして4歳のドラゴンはどれもなぜか防御系が上手い。妨害したり逸らしたり解除したり。対象に何かをするよりも対象から何もされないことの能力が伸びていた。これが私たち夫婦のせいなのか、長女パビュ゠ヘリャヅのせいなのかは分からない。
「できれば背後を狙うよりも正面からぶつかってきて欲しいけどね」私は言った。
「この祭りの間に何かは起こるよ。それは間違いない。たぶん、2日目か3日目って言われてる」
「そこまで分かってるのかー」
「襲ってくるのは君の兄さんの手下だってさ。そろそろ邪魔くさいから消してしまおうって考えてて、南のネラズグレと手を組んだらしい。明後日にネラズグレが侵攻してきて、それにタイミングを合わせて賊に扮した急襲部隊がパレードを狙うんだそうな」
「で、こっちはそれを逆手に取ろうってことなんだ?」
「そういうこと」




