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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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気持ちの切り替え

 翌日になってもイライラしていた。

 出発してしまったらもう会うことはないだろう。この館の地元ではなく離れたところから挨拶でやって来たと言っていた。今ならまだ間に合う。連絡を取る最後のチャンスだ。

 起きて体を拭いてもらった。それから着替えさせた。今日の服もラブパレード専用デザインのものだ。首や肩、袖までがカバーされているのに胸が大胆にカットされた上着に、ハイレグのショーツと膝上のストッキングを組み合わせている。それを着せられながら私はまだ昨日のことを考えていた。

 やっぱり町を案内してちょうだいというのは無理がある。やれるとしたら今日のパレードに一緒に参加しなさいと命じることだ。やれることはある。まだ無理ではない。

 横ではネゾネズユターダ君が同じくラブパレード用の衣装に着替えさせられていた。去年、私の横にいた彼を見てインスピレーションを得たデザイナーがいたらしく、今年は彼の衣装ということで持ち込まれた服が何点かあった。

 ジャケットの形をしているが胸のところに編み込みが組み合わされている。

「チャンスを逃したと思ったときってネゾ君はどうしてる?」

 彼の返答は躊躇がなかった。「同じチャンスは二度とない。昔から言うでしょ?」

 冷たい回答だが正鵠せいこくは射ている。「そういうときはどうしてるの?」

「何回も自分に言い聞かせてる。同じチャンスは二度とないって」

 メイドが私の髪を整え始めた。ブラッシングを頭に感じた。

 彼は私を見た。静かな目だ。「自分で口に出してみるといいよ。やってごらん。『同じチャンスは二度とない』って」

「なんだそれ」

 彼は黙って私を見ていた。思ったより真剣な顔だった。

「同じチャンスは二度とない」私は言った。「同じチャンスは二度とない」

 彼がずっと私の顔を見ている視線を感じた。

「じろじろ見ないでよ」

「うん。分かった」彼は別の方を向いた。「それで、効き目はあった?」

「あったようななかったような」まあ気は楽になったかな?「次のチャンスに切り替えていかないとね」

「そうそう」

 着替えて部屋の外に出ると見送りの人が集まってきていた。世話になったこの館の関係者だ。ラブパレードの宿泊の礼を言われた。

「今後もザラッラ゠エピドリョマス様にますますのご発展がありますようお祈り申し上げます」

「ありがとう」私はそれから一言付け加えた。「頑張る」


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