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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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地元の評判を聞く

「何か尾鰭おひれの付いた噂でしょう」私は優雅に見えるように微笑んでみせた。「いかにも民衆が喜びそうな話です」

 兄はうなずいた。それから話題を変えるように声のトーンを低くした。実際には話題は変わってないのだけど。「それで、何を企んでいる?」

「私は身の程をわきまえております。ギュキヒス家あっての今の生活です。ただ、そうですね。子供が増えまして、援助などしていただけると助かります」疑ってる相手には回答を示した方がいいと思ったので言ってみた。

 兄の顔に歪んだ笑みが浮かんだ。「金か?」

「聞いたぞ。何だ? 『女同士で子供を作る魔法』って?」2番目の兄が馬鹿にするように言った。「こっちでも噂になってるぞ」

「そんなに子供が余ってるなら引き取ってやるぞ」

 背筋に怒りがぞわっと走った。なんとかそれを抑えた。「子供が欲しいなら授けましょうか? “授けの魔法使い”の異名も頂いていますよ、私」手をちょっと上げて構えてみせる。もちろんこの部屋では魔法は使えないのでただのポーズだ。

「いや、いい」と兄は言った。その声は思ったより弱かった。同席している妻らしき女性のリアクションも暗い。

「『双子にする魔法』もありますよ。気が変わったら言ってください」手を下ろして構えを直した。

 兄は私とネゾネズユターダ君を交互に見た。2人ともここに来るときのいつもの格好、魔法使いっぽい黒い服とローブだった。多少のアレンジをして見栄えは良くしてるけど。

 まだ利用価値があると認めたんだろう。兄は、「子供を育てるのは大変だろう。検討しておいてやる」と言った。

「ありがとうございます」

「祭りは派手にやっていいぞ。やればやるほどいい」

「かしこまりました」

 下がれと言われて私とネゾネズユターダ君は子供と一緒に退出した。

 今回は娘も満足したようだ。いじめられなかったという評価だった。

 私としてはいじめられた気もするんだけど、子供の目からは違うらしい。

「まあ、いじめられなくてよかったよ」私は娘に言った。彼女はにこっと笑った。

 本邸の廊下を歩いてメイドたちのいる控室に戻るとき、案内してくれた執事が退席せずに少しお話よろしいですかと言ってきた。許可してそのまま部屋に入れると、メイドたちもいる前で、子供の欲しい使用人がいましてと切り出した。どうやら去年の室外の面会では本邸の使用人は来れなかったらしい。

「いいよ。とっとと連れてきて」

 私が言うとほとんど時間を置かずに廊下に人が集まった。服装から絶対に本邸の使用人じゃないと分かる人間も半分以上いた。全部で10組くらい。私はその男女に子供を授けて本邸をあとにした。

 その年の飛行隊も去年と同じだった。

 王都の魔法部隊に私のコネで入ったタイスザアニビャは相変わらず出世はしてなかったが地位は安泰といった様子だった。魔法部隊については変化はないそうだ。

「王都の魔法使いは前線に出ることがないですからね。魔法が使えなくても務まります。ははは」政治については分からないという。ただ私のことは噂になってるそうで、「門前払いのドラゴンを懐柔したって噂ですけど本当ですか?」と聞かれた。

「それはただの噂! けど会って話をしてるのは本当。門前払いの話は聞いてないよ」

「えー、聞いてくださいよ。ソギャ・メミュルメレ(英雄を門前払いした兄)は5歳までママのおっぱい飲んでたって本当ですか?」

「はははは。今度聞いてみるよ」私は背中を叩いた。「こんなところまで噂になってるの?」

「そういう噂は流れるの早いですね。たぶん、ダトベでもみんなに聞かれるんじゃないですか?」

「うーん。めんどいなあ……」

 空の移動はやはり快適とは言い難かった。転送ゲートのことも考えたけど、彼と会えなくなるのも寂しい気がした。


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