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2.スキル『強烈な一撃(スマッシュインパクト)』

感想お待ちしております

 俺たちは、部屋を出て村の大きな広場に行くことにした。

 移動中は村人たちの注目の的で一挙手一投足を見られていた。

 居心地が悪かったが警戒されているというよりは、むしろ期待されていると前向きに捉えることにした。

 ゴーフリーは村の長老的な立場のようで、村人たちに指示を出している。

 村人は外でもエプロンを着用しているようで、どこか西洋の田舎を感じさせる格好をしていた。


「へぇー。大きな倉がいくつもあるんだな。」


 村には穀物が貯蓄されている大きな倉がいくつもあり、羊のような生き物が柵の中に入れられている。

 のどかな風景に思わず見とれてしまう。


「平和そうなんだけど、本当にホブゴブリンが襲ってきたりするのかな?」


 荒んでるのかと思っていたが比較的安定しているようだ。

 周りを見渡しながら歩いているうちに村の中央にある広場へとたどり着いた。


「ヒカル様、ここが村の中央広場となっております。ここからさらに西に行くと森に繋がる村の出入り口があります。」

「へぇ~なるほど。」

「先ほど辿ってきた東側は主に穀物の蔵やカーリーを飼っている場所となります。その奥に村人の住居を設置しております。」

「ふ~ん。村の出入り口から倉までは住居が無いんだね。」


 中央広場から西の出入り口までは小麦畑がひろがっており住居らしい建物はない。


「さすが軍師様!良いところに目を付けていらっしゃる。その通りでございますじゃ。」

「でも、この配置だとゴブリンとか盗賊とかにいろんなものを盗まれ放題じゃない?」

「ふふふ。そうなのですじゃ。実は、盗まれることを前提に一定の食料をわざと表このような配置にしておりますじゃ。我々はゴブリン達に抵抗する手段が乏しい状況です。穀物を持っていかれるだけで済むのであれば、まだ良いと判断してのことですじゃ。平和的に解決という奴です。」


 なるほど、村人に危害が及ばないようにあえて食料を盗られやすい場所に配置しているのか。


「魔物たちに抵抗する手段が乏しいって言ってるけど、ホブゴブリンってそんなに強いの?」

「強い弱いという以前の問題なのですじゃ。我々の世界では職業にあわせて戦力の優劣が大きく関係してきますじゃ。しかしながら、ここ数年の間に若い村の者が兵役として出払ってしまったため戦闘職として戦える者がほとんどいないのですじゃ。」


 数年も兵役に出されるというのは穏やかでない。何か事情があるのだろうか。


「特に強い魔物を倒すには得意武器の熟練度を上げる必要がありますじゃ。我々の多くは生産職であるため得意武器がありませぬ。これは戦闘において致命的なことなのですじゃ。」

「え!?さっき俺も聖水写しで得意武器無しって表示されてたけど大丈夫なの!?」


 魔物を倒せないのであればホブゴブリンの巣に向かっても結局返り討ちに合うだけだ。さすがに自分の身を危険に晒してまで意味のない行動をとるわけにはいかない。


「問題ないですじゃ。異世界から来た方々は我々よりも成長力が高いことが多いですじゃ。ヒカル様であればきっと得意武器を習得されると信じておりますじゃ。」

「その自信はどこから来るんだよ。」

「こう見えても長年この村の村長をしていますがゆえ、人をみる目はあると自負しておりますじゃ。わたくしの目に狂いはないですじゃ。」

「まぁ良いや。俺にも強くなるチャンス十分にあるってことね。」

「はい。今は小さくか弱い力かもしれませねが、やがて強く大きなものになると、わたくしめは信じております。」


 そう言うとゴーフリーは、ゆっくりと片手を前に添えながらお辞儀をし、にやりと笑った。

 ゴーフリーの表情を見て確信した。

 この爺さんは俺が大したことない奴だって最初からわかってたんだろう。わかっていた上で、俺を持ち上げるために演技していたのだと思われる。


「わかった。大体了解したよ。とりあえず魔物が襲って来ても、今は穀物をわざと取って帰ってもらってる。本当は撃退したいんだけど、村人たちでは魔物を撃退する力がないから俺たちで魔物をなんとか退治してほしいってことね。」

「物分かりが早くて助かりますわい。軍師を名乗ることだけありますな~。」


 俺がいつ軍師を名乗ったんだよ。調子のいい爺さんだ……。


「じゃぁ、先にフィーフィーさんとイノックさんの能力を教えてほしいかな。」

「フィーフィーさんなんて言わなくてもいいにゃ!フィーフィーもしくはフィーって呼んでにゃん!」


 フィーフィーが反応して会話に割り込んでくる。


「うん。わかった。じゃぁフィーフィーで。」

「うーんッ。もうヒカにゃんは特別フィーにゃんって呼んでも良いにゃん!」

「うん。わかったよ。フィーフィー。」

「うーんッ。ヒカにゃんはノリが悪いにゃんっ。」


 おいおい、ヒカにゃんってなんだよ。もう勝手にあだ名作ってんのか。


「ヒ、ヒカル、フゴ―、フゴ―、オデもイ、イノックと呼んデグレ。」

「わかったよ。イノック。ありがとう。」


 イノックは結構怖いけど意外と素直で良い奴っぽいな。向こうの方が年上なのだろうけど、これから仲間になるんだし、ここはイノックと呼ばせてもらおう。


「ゴホンッ。ヒカル様、フィーフィー殿とイノック殿の能力でございましたな。聖水は高額なので頻繁には確認しておりませぬが、2週間前のステータスをお伝えしておきます。」


ゴーフリーから二人のステータスがメモされた紙を渡される。


 ◆氏名:フィーフィー

 ◆レア度:★1(ノーマル)

 ◆種族:キャットピープル

 ◆職業:女猫兵士キャットソルジャー

 ◆ステータス

 ・筋力 54 (H)

 ・敏捷 103 (G)

 ・耐久 47 (H)

 ・知力 61 (H)

 ・技  68 (H)


 得意武器:爪(熟練度3)、短剣(熟練度1)

 特殊能力:(青)身のこなし〇

      (赤)気まぐれな行動

      (赤)狂喜乱舞

      (赤)集中攻撃×

      (赤)団体行動×

      (赤)熱耐性×

 戦闘スキル:猫みかわし

 生産スキル:なし



 ◆氏名:アレクサンドロ=イノック

 ◆レア度:★1(ノーマル)

 ◆種族:岩人形ロックゴーレム

 ◆職業:岩鎧戦士アーマーロック

 ◆ステータス

 ・筋力 112 (G)

 ・敏捷 10 (H)

 ・耐久 134 (G)

 ・知力 3 (H)

 ・技  37 (H)


 得意武器:拳(熟練度2)、ハンマー(熟練度0)

 特殊能力:(青)頑丈な甲殻

      (青)電撃耐性〇

      (赤)戦術理解× 

      (赤)反応速度×

      (赤)動作遅延

      (赤)不器用

      (赤)水、氷耐性×

 戦闘スキル:強烈な一撃スマッシュインパクト

 生産スキル:なし



「なんか俺と違って特殊能力が色々ついてるね。青と赤の違いって何?」

「聖水写しの際に青色で表示される特殊能力と赤色で表示される特殊能力があります。基本的に青色が良い特殊能力、赤色が足を引っ張りがちな特殊能力だと言われています。」

「ふ~ん。ってことはほとんどダメな能力ってこと?」


 二人とも赤の特殊能力が圧倒的に多い。


「まぁそういうことになりますじゃ。ちなみに特殊能力の中身については、名前から推察する必要があります。どうしても詳細を把握したい場合は、王都などに存在している特殊機関の鑑定師にみてもらうことはできますが、結構なお金がかかりますじゃ。」


 詳細を把握してないって大丈夫か!?また、嫌な予感がしてきた。


「名前から予想するに、フィーフィー殿は素早い立ち回りが得意ですが団体行動などの連携が苦手なのではと思いますじゃ。また、熱にも弱いですじゃ。イノック殿は反応が遅く戦術を理解できない事はという弱点がありますじゃ。水や冷気にも弱いですが、雷には強く頑丈な肉体とパワーを持っておりますじゃ。」

「なるほど。大体予想はついてるって事ね。」


 特殊能力の内容が少しだけ分かって安心した。

 ゴーフリー説明から察するに俺のステータスと違って二人とも特徴のある尖った能力のようだ。


「ちなみに戦闘スキルというのは、ここが持つ特技で攻撃技や防御技、あとは回避技なんてものがあります。フィーフィー殿の『猫みかわし』は回避技、イノック殿の『強烈な一撃スマッシュインパクト』は攻撃技となっておりますじゃ。」

「へ~。なんかカッコいいな。俺にもスキルがあれば良かったのに。」

「いえいえ、ヒカル様は、職業が軍師でいらっしゃいますので、それだけで十分でございますじゃ。」


 職業が軍師ってそんなに珍しいのか!?何かができるみたいな実感はないのだが悪い気はしない。


「状況はわかった。とりあえず今は修行してステータスを上げていくことが優先かな。それと意思疎通を図りながら作戦とかをスムーズに実行できるようにしないと。」

「まさにその通りです。実は我々もゴブリンを撃退するための作戦をお二人にお伝えしていたのですが、なかなか意思疎通が図れず手を焼いていたところです。いやはや軍師様というのは頼もしいですな。」


 やっぱり手を焼いてたんだな。この二人のステータスと性格に癖がありすぎなんだよ……。

 まぁとりあえず。なんとか意思疎通ができるように頑張ってみるか。まずは素直そうなイノックから色々聞いてみるかな。


「あの、突然の質問しちゃって悪いんだけど、イノックって何か得意なこととかある?」

「フゴ―!フゴ―!オ、オデハ、チカラモヂ。」

「力持ちね。まぁそうだろうな。」

「フゴ―!アドハ、ガンジョウ。」

「ま、まぁそうだろうね。耐久もあるみたいだしね……。」


 敏捷、知力が著しく低いから、やっぱり典型的な脳筋タイプなのかな。この体格からして破壊力がありそうだし、タンク的な役割が合うとは思うんだけど……。


「あともう一つ教えてほしいんだけど、君のスキルに『強烈な一撃スマッシュインパクト』ってのがあると思うけど、これはどういう技?」

「フゴ―!オ、オデノ、ワザ、ドガーン、ヅヨイ。」

「あっ。そうなの。よくわかんないな。う~ん。」


 ゴーフリーは攻撃技って言ってたが、敵と戦う前に、どういう技なのか把握しておきたい。


「ヒカにゃん!あんまりイノックにゃんをいじめちゃダメにゃん!」

「え!?いや、ちゃんとスキルを把握しておきたいだけで、別にいじめてる訳じゃないんだけど。」


 イノックとのやり取りを見てフィーフィーが横から口出しをしてくる。


「イノックにゃんは、こう見えてもまだ8歳にゃん!戦闘教育ばかり受けて来たからフィーフィーと違って話下手なのにゃん!」

「えっ!?8歳なの?」

「オ、オデ、ハッザイ。」

「8歳で召喚されるってヤバくない?」


 8歳でこんな異世界に呼ばれるなんて、いくら何でもひどすぎるだろ。


「ヒカにゃんの常識で考えちゃだめなのにゃん!種族が違うにゃん!ロックゴーレムは生まれながらにして戦闘を生業とする種族にゃん!」

「オ、オデ、ヅヨイ。」

「『強烈な一撃スマッシュインパクト』が知りたいのならこうやって言うにゃん!イノックにゃん、強烈な一撃スマッシュインパクトやってみてにゃん!」

「ワガッダ、ヤッデミル。フゴゴゴゴゴゴ―!」


 フィーフィーに促されるとイノックは、両腕をお腹の前に降ろして力を溜めた後、フゴー!っと言いながら勢いよく息を吐きだし、南の方へと猛烈に走りだした。


「え!?オイ、どこに行く?」


 猛烈に走り出したイノックを慌てて追いかける。今までの遅い動きとは違い意外と速い。

 イノックは、蔵の前に立つと急ブレーキをかけて止まる。そのまま両手をあわせお祈りのポーズをとる。一瞬動きが止まったかと思うと次の瞬間、そのまま両拳を勢い良く頭上へと振り上げた。


「オ、オイ、ちょっと待って!そこは蔵だからダメだって、オイ、嘘だろッ!」

「ウオオォォォォ!スマッジュインパグドォォォ!!!!!!」


 イノックの両拳はまるで巨大なハンマーが振り下ろされるかの如く蔵の壁に叩きつけられた。


「ドガガガガッガーーン!!!!!!!!!!」


 まさに『強烈な一撃』と共に、蔵の壁が飛び散る。

 砂煙が舞い上がる中、破壊された蔵からは穀物がザザーっと流れ出てきた。

 壁が大破された蔵。穀物に埋もれるイノック。そこには目も当てられない光景が広がっていた。


「ううわぁぁぁぁ!イノック殿!何を!ついにご乱心なされたか!?」

「にゃはははッ!イノックにゃん、やるにゃ~!」


 さすがのゴーフリーも慌てた様子でイノックの近くに駆け寄る。

 フィーフィーは面白がって笑い転げているようだ。

 マジでヤバイ。このパーティー、本当にヤバイ……。まともな奴が一人もいないよ。

 凄まじい衝撃と音で、村人たちも慌てて様子を見に来る。最初はざわついている様子だったが、状況が判明すると大きな騒ぎとなってきた。


「ここは謝っておいた方がいいのかな。」

「にゃははははっ、ヒカにゃんが見たいって言うからこうなったにゃん!謝るにゃん!」

「いやいや、俺はどういう技か教えてほしいって言っただけで、見たいとは言ってないぞ!そもそも、イノックをそそのかしたのはフィーフィーだろ!」

「そうだったかにゃん!?細かいことはどうでもいいにゃん!早く謝ってくるにゃん!」


 なんで俺がと思いながらも、原因が俺に無いとは言えない。

 俺はゴーフリーと一緒に渋々村人たちに謝りに行く。

 ゴ村人たちに詰め寄られたが、訓練中の出来事として村人達もなんとか納得してくれた。

 どいつもこいつもむちゃくちゃだな……。


「ゴーフリー、俺やっていく自信ないよ。」


 俺はゴーフリーに向かって嘆いた。


「ヒカル様、そのようなことはおっしゃらないでくださいますじゃ。我々もやっとまともな方に出会えたと心よりほっとしている次第であります。なにとぞ、このゴーフリーに免じてお許しを!」


 ん!?今、『やっとまともな方に出会えた』って言ったか?この爺、あの二人がまともじゃないってやっぱりわかってたな。その上で俺に押し付けようなんて企んでたに違いない。


「爺さん、さては、こうなるってわかってたな?」

「はて!?なんのことですかな?」


 とぼけやがったな!この爺!!!


「こんな状態でホブゴブリンの巣なんて行けると思った?行けるわけないでしょ!」

「いや~。ヒカル様ならなんとかしていただけるかと思いましてですじゃ。」


 マジでそう思ってるのか?こんな状況では絶対に無理だ。


「いや、マジで無理だって、全然、意思疎通が取れないし、これじゃ作戦とかも立てても瓦解するだけだよ。」

「そこをなんとか軍師様のお力で……。」


 ゴーフリーが再び懇願してくる。


「軍師、軍師って言うけど、俺はただのサラリーマンなんだって!」

「そう言われましても、ヒカル様に見放されてしまったら、我々はこれからどう生きて行けば良いか……。」

「今までも上手くやって来たんでしょ。だったら大丈夫じゃない!?」

「いや、それが今は状況が違って来てまして……。」


 俺は、あまりの酷さにゴーフリーに詰め寄る。


「とにかく、こんな状況だと命がいくらあっても足りなっー……。」

「カンッカンッカンッカンッ!」


 俺が話をしている途中、それを遮るかのように村の入口の方から鐘が鳴りだした。


「カンッカンッカンッカンッ!出たぞー!ゴブリンの襲撃だ!」


 村の見張り台の村人がゴブリンの襲撃を警告する。


「え?マジ?こんな時に?」


 村人たちは走り出し、慌てて避難をはじめる。


 その向こう側には、予想通りと言える恰好をした小汚い老人のような姿をしたゴブリンが4匹。こちらに向かってくる姿が見えた。


誤字、脱字、わかりにくい部分があれば感想と共に気軽にご指摘ください。

少しでも楽しんでいただけるのであれば頑張って書いていきたいと思いますので、

よろしければ、ブックマーク、評価等お願いいたします。

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