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私が異世界に流されて…  作者: カルバリン
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第85話 野外実習へ向けて


黒竜騒動から数日後…リンは診察を一応受けて問題無しと診断されるとすぐに仕事へと復帰した。


今日もグラウンドで走りこみをした後、実技指導を行っていた。


「オルト、ちゃんと全身のバネをしっかり生かしなさい!剣を扱うより前に基礎的な動きをマスターする…その為の組手なんだから」


「そうは言っても…!」


オルトはすぐにリンと距離をとって構える…さっきからリンに対して打ち込んではいる。だがそれをリンはキッチリとガードし、身体の動きがおかしい箇所をその都度指摘する。


「常に身体強化に頼る戦い方は駄目よ?もし身体強化が使えない状況になったら何も出来ずに敗北する…それはあなたたちが目指す冒険者や騎士にとって絶対にやってはいけない事だと分からなければ自分が死ぬのは当然として周りにいる同僚や仲間まで危険に晒す事になるのよ」


どんな状況でも生き残れるように。かつて自分が家族に叩き込まれた技術はそういったものだった。


「ある程度身体を動かせる様になるまで身体強化は禁止、それは絶対。今すぐどうにかなる訳じゃない…でも大氾濫は止められない以上それまでに自分を守れる位にならないとね」


最近色々とありすぎて忘れそうだったけど魔物が異常なほど集まるらしい大氾濫が起こる危険性があるらしい。

何故大氾濫が起きるのか、原因は分からないらしいけど様々な説はある。


中でも土地を巡る竜脈…魔力の流れに異常が出て魔力の流れが滞り、大量の魔力が関係しているらしい。非常にゆっくりではあるけれど確実に魔力溜まりは広がっていく…止める手段はないが猶予はそれなりにある。


聞いた話ではこの国の王は愚王と言われているみたいだけど……大氾濫に対してきっちりと対策を講じている点や各地方の領主に自治を任せている事…それで上手く国が運営出来ている事を考えたら噂通りの愚王とは考えにくいわね。


まだまだ先の話だというにも関わらず騎士団も派遣されるし、冒険者にも国から協力要請が既に出されていて対応の早さに感心する。


観測では半年位先に起きると予測されてる以上、騎士団もキッチリと準備が出来るってアルバートには聞いてるから騎士団には合流せずにこの街近辺の守りになる可能性が高いらしいけどね。


「実習はあなた達の望み通りサントレイドだから気合いいれて頑張りなさいよ?」


よっしゃぁぁぁぁ!とか水着買いに行かなきゃとかはしゃいでいるのを見てフッと笑みを浮かべる。


「それと、今回少し変更があって小等部と合同になったのよ。上級生二人につき1人を引率するんだけど…この後発表されるクラス再編成でこのクラスにはあなた達しか残らないのよねぇ」


本来ならこのクラスは15人の生徒がいるのだが…問題児達が大人しくなった以上私じゃなくとも問題無いとアルバートが決めたのだ。


だがシュノア達に教えるのは私が適任だろう、という事で実力が抜きん出ているシュノア達6人を私が、残りの生徒をシャルドネが教える事となった。


『なんでぇ、じゃあこいつらが面倒を見れるのは3人までってことか?というかこいつらに近寄りたいってガキがいるとは思えねぇぞ?』


散々やらかしてきたシュノア達の評判は下級生にも広まっている…下級生からしたら怖い上級生という認識が大半なのだ。


「まぁそれについては一応対策はあるんだけど…私は反対なのよねぇ」


『珍しく歯切れがわりぃな』


そりゃそうよ。小等部の担当のワルド先生が私に担当してほしい生徒を伝えてきたんだけど…それがレンとスタン、シアの3人だったから。


『レンと友達2人かよ、別に何も問題無さそうじゃねぇか?』


そうなんだけど…


「レンにはなるだけ私がいない所で色々な経験をして欲しいのよ。学校でまでレンに私がついていたらレンの為にならないからね」


『なるほどなぁ、嬢ちゃんなら二つ返事で了解するって思ったんじゃねぇか?』


「んー。まぁアルバートからしてみたらそうなんだろうけど…」


あんまりよろしくないのよねぇ…。ただもうそうするしかないのだけど。


実際レン達3人は同級生に比べて能力に差があるのも事実…


『そんなに悩まなくても良いんじゃねーか??嬢ちゃんがレンを過保護に扱ってないってのは誰もが分かってるこった。能力の差っていってもそりゃレンが嬢ちゃんの訓練にしっかりついてきてる結果だろ?ありゃ俺から見てもスパルタだって思える内容だぜ?』


実際レンは訓練で何度もリンから叩きのめされている。

リンの訓練に容赦はない、ギリギリ耐えられるラインを見極めてやっている以上どうしてもそれは厳しいものとなる。


『だからレン達に合わせて相手を選ぶのが悪いことだとは思わねぇよ。……ただまぁ、嬢ちゃんの心配事は別の…レンが嬢ちゃんの息子だから特別に、周りと違う扱いを受けてるって思われてハブられたりすんのが嫌なんだろ?』


ほんとにこの魔剣は……


普段おちゃらけた口調で誤魔化してるけど誰よりも私達の事を見ている。

……ま、だから魔剣に関して調べて万が一の為にアルバートに依頼して"顕現の腕輪"を用意してもらったのだ。

予想外だったのは顕現召喚をどうにかする術式を組む為に協力してくれたのが"あの女"だったことね。


「…決まった以上は従うわよ。実際レン達に近い実力といえばシュノア達が最適ではあるし…」


訓練しているシュノア達の方を眺めながらそう呟いたリン。


『そういや聞きてぇ事があったんだった、嬢ちゃん…お前さんはヴァンパイアなのかよ?』


うーん、やっぱり聞いてくるか…


「…分からないのよ。こっちに来てからたまに頭痛がするようになってたんだけどさ…その時に意識が薄れる事があったんだけど」


薄れそうになる度に気合いで抑え込んでいたから大丈夫だったがあの時…黒竜に対峙した瞬間意識が一気に持っていかれたのよね。


「部分的に覚えてるというか自分を自分が見てるというか…」


間違いなく自分なのに夢を見て覚めたみたいに曖昧な記憶しか残ってないし自分でも何なのか分からない。

…まぁステータスにあったようにクォーターエルフとか書いてあったくらいだし何があっても今更不思議ではないような気もするけど。


『…気合いでどうにかすんのが嬢ちゃんらしいっつーか…だがよ、あんときの嬢ちゃんは間違いなくヴァンパイアの特徴を持ってたぜ?昔戦ったヴァンパイアが再生する時の光景そのまんまだったからな』


ガルが言うには血を媒介に再生するっていうのは高位のヴァンパイアが使う固有スキルらしい。


『しかも嬢ちゃんが言った低俗なやつと一緒にするな、っていうのと日の光を浴びても平気な事…更に吸血もしてないって事なら…嬢ちゃん、おめぇは"真祖"なんじゃねぇか?』


真祖ハイディライトウォーカー…吸血鬼の最上位個体。不死性が高く長い年月を生きる為に強大な戦闘力を持つが現在確認されているのは二人しかいない。


『高位ヴァンパイアなら国1つ簡単に滅ぼせる強さなんだがよ…真祖ってのはそんな高位ヴァンパイアとは比べらんねぇ化け物さ。俺の生きていた当時二人いたが…どっちの真祖でも現れたら諦めろってのが常識だったぜ』


「…だけど私は普通に死ぬと思う。これを見たら分かるだろうけど…普段は至る所にある傷も治癒出来ないのだからそんな化け物と一緒な訳ないと思いたいわ」


『…嬢ちゃんに関してはよく分からねぇ。まぁ嬢ちゃんの親なら答えを知ってそうだが…聞けねぇよな』


親……。そういえば神様(へんたい)がお母さん達もこの世界にいるって言ってたな。


「いや、その内聞く機会があるんじゃないかしら。皆こっちにいるみたいだし」


この世界に来たって事は私を探しに来たんだと思う。両親二人もお祖父ちゃんも普通とはかけ離れた様な人達だしすぐに私を見つけるだろう。


『あぁ、そういやジンが妙な事言ってたな…海賊がどうとかよ。今度行くサントレイドなら大丈夫だとは思うけどな』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その日の夜…


「ああ、確かに転移前だけど海賊が不穏な動きをしているとは聞いたね」


「この世界の船舶ってレベル的にはどうなの?この前読んだ本には帆船が主流みたいに書いてたけど…」


カルネの冒険記は結構昔の話みたいだし今はどうなんだろう??


「帆船も普通にありはする。例えばこの国の船舶は帆船だけど帝国は魔力を使った魔導船を軍で使っているし…聖教国に至っては遺跡で発見された飛行戦艦を持ってたりする」


技術力は帝国が1番だが聖教国は飛行戦艦っていうロストテクノロジーを所有している……ならこの国が1番技術的にも戦力的にも遅れているって感じね。


「この世界で海賊は遭遇したくない部類の敵っていうのが常識だね。実際俺も幾つかの海賊団と戦ったけど国の海軍と渡り合う程の戦力を持っていた奴らもいたからな」


国家と敵対しても渡り合える海賊ってなんなのよ…そんな存在がいるなら海路を使った輸送なんて出来ない。


「商人はみかじめ料を払ってって感じで海賊と上手くやっているみたいだから問題無い。海を渡るなら商人に金を払えば乗せて貰えるから物流にはあまり影響は出ないからね、だがそれも縄張りとしている海賊団による訳だけど」


「…なるほどねぇ。じゃあギルドが言ってるその海賊団はそういった連中じゃないって事ね」


「そうだね、今日もギルドで噂は色々聞いたけど…そいつらは無差別な略奪で稼いでいる事で有名な奴ららしいよ?とはいえ奴らが目指してるアネス島はこの街がある大陸とは離れてるし関わる必要もないね」


「アネス島…なんでわざわざそんな島を?お宝が眠ってるとかでもあるまいし」


「…実はお宝が眠ってるみたいなんだよな」


割と真面目な表情で答えたジン。


「"カルネの冒険記"に出てきた神の方舟…それが存在するのがアネス島らしい」


カルネの冒険記に出てきた……あぁ!確かに何か同郷の人が書いたっぽい文章が出てきてたわね…って事は…


「気が付いたみたいだね、俺達日本人なら内容が分かるあのメッセージ…間違いなく転移者が遺したものがアネス島にはある。それもとびきり厄介な代物がね」


確かに、私が考えている物と一緒なら間違いなくとんでもないお宝だろうけど…


「書いてあったキーワードだけが鍵って事も無いだろうから大丈夫じゃないかしら?」


バカっぽい内容のメッセージだったからもしかしたら本当にキーワードだけで動かせる可能性もありそうではあるけど…。


「ま、まぁそうだよな!幾らなんでも……ないよな?」


…サントレイドでの実習で何も起きなければ良いけど。

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