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私が異世界に流されて…  作者: カルバリン
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第62話 激突、そして…


「おい!やべぇぞ!!」


時間を潰していたカオリの耳に慌てたような男の叫びがギルド内に響く


「なんだぁ?また飲み過ぎて幻覚でもみたのかよ??」


何人かの厳つい男達が酒を飲みつつ笑い声をあげた


「馬鹿!そんなんじゃねぇ…『銀髪の悪魔』と『黒剣』が鍛練場で闘うらしいぞ!」


その言葉に周囲がざわめく。


まじかよ…黒剣ってあのシーラか?!相手は最近噂の…


銀髪の悪魔ってアイツだろ?ダルトンに絡まれて返り討ちにした女!


男達の話に耳を傾けていると


「カオリ!大変よ!?先生が決闘ですって!」


慌ててアディが走ってきたけれど…


「でも先生って凄く強いしそこまで慌てる事でもないような…」


「でも相手は『黒剣』シーラよ?!元SSランクでギルドマスターのアルバート様から認められた凄腕の冒険者なんだから!」


アディに引っ張られながらカオリが鍛練場に着いた時には周りを様々な冒険者達が囲んでいる中央でリンとシーラ、それにアルバートが立っていた。


「ではお互いに武器の使用は問わない。どちらかが鍛練場の許容範囲を越えたダメージを受けた時点で終了、終わった後は双方遺恨は残さない事じゃ」


アルバートが二人の顔を交互に見る。


「異論はないわ」

「ありません」


確認を終えたアルバートが離れると二人は自分の武器を構える。


「息子が家で待ってるからさっさと終わらせるわ」


リンは村雨の柄に手を添えるとシーラを見据える


「その余裕…捻り潰してあげます」


シーラは左腕に装着した小型の円盾から歪な形の艶消ししたような黒のショートソードを抜き放つ。


あれは…ソードブレイカーね、また厄介なモノを…


「では、始め!!!」


開始の合図と同時に二人は動く


シーラは円盾を構えながらリンに飛び掛かる


それに対してリンはシーラのソードブレイカーを警戒して村雨を抜く事はせずに攻撃をバックステップでかわしていく


「避けるだけですか!馬鹿にして…!!」


剣を振り抜いた後に出来る隙を補うかのように初級魔術の炎弾をリンに向けて放つが、リンはそれに対して村雨の鯉口を切る。


「遅いわよ…斬空閃」


鞘から滑り出した刀身は振り抜くまで一気に加速し大気を斬り裂いた衝撃波を飛ばして迫りくる炎弾を捉える。


放たれた炎弾はパァン!と乾いた音を立てて斬り裂かれ、リンは振り抜いた体勢から身を捻り、シーラへとナイフを投擲するがそれをシーラは円盾で弾く。


「まさか魔術を斬るなんて…」


苦々しく呟くシーラ


「あんなのは銃弾を斬るより楽よ、モノが見えてるんだから」


かといって銃弾を斬るなんて2度とやりたくはないけどね…あれは少しでも間違えば大変な事になるし。




「やっぱり高ランク同士が戦うと凄まじいというか…」


アディの言葉にカオリは


「……先生は全然本気を出してないみたいだけれどね…」


だってまだ私にですら村雨を抜いた瞬間が見えるんだもの。

この前シュノア君と私が鍛練の最後に叩きのめされた時は抜いた瞬間どころかいつ動いたのかすら分からなかった。

今の先生は明らかに手を抜いている…のかな?それとも相手の手の内を見極めてるのだろうか?


そうしている内に先生とシーラさんは物凄い速さで剣と剣を打ち合わせているけれど…



「…チッ」


シーラの剣はリンが予想していたよりも裁き難く、知らずの内に舌打ちしていた。


「貴女が一体どこでここまでの技量を身につけたのかは知りませんが…ここ最近の不審な事件の数々を調べていけば貴女が関わっていた…いえ、貴女がこの街に現れてから事件が続いていると言える」


左手の円盾で村雨を弾き、リンが弾かれた反動で蹴りを繰り出せば蹴りの軌道に右手に持った剣を滑り込ませる…完全に守りに入るかと思えば隙を突いて魔術を放つ。


「トラブルに巻き込まれる体質なのかもね!…だからといってあなたからこんな仕打ちを受けなければいけない様な事は何一つしちゃいない!!迷惑なのよ!」


リンは苛立ちを隠そうともせずに村雨で刺突を放ったがそれに合わせてシーラの剣はソードブレイカーとしての本来の役目を発揮するかのように村雨の刀身をガキンッ!と音と火花を散らしながら捉えた。


「いきなり現れて奇妙な武器を使い、帝国や聖教国といった国との接触までしておきながらよく言う…!」


「あーもねぇ!!ほんっとうに話が通じない女ね!?なんなのよ?!本気でブチ殺すわよ!?私が好きで接触した訳じゃないっての!」


「殺れるのであれば。ただし貴女は昔戦った剣士と戦いかたや武器が似ているお陰で対策が練りやすいです。その武器は切れ味こそ凶悪ですが…」


村雨にガッチリと食い付いたソードブレイカーがギチギチと音を立てる


「…強度が弱点って言いたいんでしょ?そんなことは言われなくても分かってんのよ!」


そう叫ぶと村雨の柄を思いっきり殴り付けるリン


シーラはソードブレイカーの突起を噛ませて剣を捉えていたがこれ以上力を込めた場合刀身を折られると考えていただろうリンの予想外の行動に一瞬反応が遅れてしまう。


村雨は噛んでいた突起を殴り付けた衝撃で滑りながらシーラの右肩へと突き刺さった。


「横からの斬撃には強いだろうけど噛ませる力自体はあんたの腕の力だからね、勢いがつけば止められるものじゃない。受けた時に刀身を叩き折れなかった時点でこうなる事は分かってたのよ」


刺さった村雨を抜く為にがら空きの腹に蹴りを入れてシーラを吹き飛ばす


「!!?」


腹を蹴られたせいで悲鳴をあげる事も出来ないまま為すすべなく吹き飛ばされ地面を転がるシーラを見て周りの野次馬がざわめく


「あの黒剣があそこまで一方的にやられんのかよ……」

「武器を引き抜くために蹴り飛ばすなんざ明らかにやりすぎだろ」

「血も涙もねえのか銀髪の悪魔は…」

「そういえばダルトンも容赦なく利き腕を叩き折られてたぜ?」

「赤なのか、いいな…俺もあの足で蹴られてぇ」


最後になんか不穏な言葉が聞こえたけれど概ね私が悪辣な人みたいになってるわね。

そもそも銀髪の悪魔って…せめて銀の閃光とかさ…


昔考えていた2つ名が頭に浮かんだがそんな場合ではなかった。



しかしルールはルール。相手かわたしが戦闘不能になるまでやるしかないわけだし、ぶっちゃけ意味が分からない言いがかりをつけられて黙っているほど気は長くない。


さっき蹴りを入れた時に確かな手応えがあったから間違いなく内臓を痛めてる。

ここからはそう時間も掛からないだろうから相手が降参するならこれ以上は止めてもいいけれど…


「…あんたが私に疑いを向けてる意味が分からないけどここで素直に負けを認めるならよし。認めないなら徹底的に叩き潰す」


立ち上がったシーラへとそう言ったのだが…


「舐めるなよ…!まだ私は負けていない!」


シーラの全身から漆黒のオーラが立ち上り始めると頭の中でこれは不味いと警告が鳴り響く。


脳裏に自分があの剣で貫かれる映像が再生されていく。


そう思った次の瞬間にはシーラが脳裏によぎった通りの動きで迫り、それに対して咄嗟に村雨で斬り掛かったのだが…


ギィン!!!


金属と金属が激しくぶつかり合う音が響き渡り村雨はシーラの円盾によって弾かれていた。


「これで終わりです!」


スローモーションの様に自身の胸に突き立てられる剣を眺め、確実に避ける事は叶わないと悟った瞬間…


「タダじゃやられはしない…!」


数多の激戦を潜り抜けた身体は左手でナイフを抜き敵の心臓目掛けて突き刺す事を一挙動で繰り出した。


お互いの心臓に剣を突き立てた所でリンの視界は暗転した…


簡易人物紹介


《名前》 シーラ


《年齢》 23


《2つ名》 黒剣


《備考》


リンと同じくらいの身長で髪はライトグリーン、顔は整っているがどこか冷たい印象を与えるのは普段は感情を表に出さないからなのか…ちなみに既婚者である。

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