↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/21

相談センターの原本

 朝の相談センターは、役所より病院に似ていた。


 白い壁。番号札。発券機の前で立ち止まる人々。入口の床には、矢印が印刷されている。青は相談、緑は再評価、赤は確認。人間は色に従って歩く。信号機で育った国民にとって、床に従うことはたいして難しくない。


 看板にはこうある。


『生活信用再調整相談センター』


 相談、という言葉は便利だ。命令より柔らかく、処分より親切に見える。相談に来なかった人間は、協力しなかった人間になる。協力しなかった人間は、将来の社会コストになる。あとはテミスが計算してくれる。


 私は八時二十六分に着いた。


 遅刻ではない。優秀でもない。呼び出された側として、もっともつまらない時刻だ。


 受付の女性は、私の名前を聞く前に端末を見た。顔認証カメラの位置が、観葉植物の横にさりげなく置かれている。さりげないものほど、だいたい人を見ている。


「九条灯さんですね。私物の電子機器をこちらへ」


「紙の本は?」


「お持ち込みいただけます」


「紙は信用されていますね」


「電源がありませんので」


 正しい答えだった。正しい答えは、皮肉を受け取らない。


 私はスマホと仕事用端末を透明な袋に入れた。袋の口に封印シールが貼られる。封印番号はレシートに印字された。財布は持ち込める。ただし、この国で財布とは、停電時の精神安定剤でしかない。現金を受け取る店はまだある。現金で生きられる社会は、もうない。


 受付票には、私の来庁目的が三行で印字されていた。


『監査官評価履歴に関する追加確認』

『差戻し頻度異常値に関する説明聴取』

『業務適格性の再評価』


 私は一行ずつ読んだ。


 一行目。評価履歴。


 二行目。異常値。


 三行目。適格性。


 人を処分するとき、行政文書は人格を直接殴らない。履歴、値、適格性。名詞を三つ並べれば、人間はいつのまにか表から消える。


 待合室には二十人ほどいた。全員が静かだった。静かにさせられているのではない。静かにしたほうが得だと、みんな知っているだけだ。


 壁のモニターに番号が流れる。


『本日の混雑予測:通常』

『平均待機時間:十八分』

『無断退出は再評価に影響する場合があります』


 最後の一行だけ、文字が少し小さい。


 私は受付票を折り、鞄に入れた。紙の地図の裏に、昨夜写した住所が残っている。センターの三階、記録管理室。メモにはそう書かれていなかったが、所在地から建物の旧用途を調べれば見当はついた。ここはもともと家庭裁判所の出張所だった。相談センターに改装される前、記録庫が三階にあった。


 父の反対意見書の原本があるとすれば、そこだ。


 もちろん、そんなものを正面から出してくれるほど、世の中は親切ではない。


「九条さん、十二番窓口へ」


 呼ばれたのは八時三十一分だった。一分遅れた。制度は約束の時刻を守らない。守らなかった事実を記録されるのは、いつもこちら側だ。


 十二番窓口には、三十代半ばの男性職員が座っていた。名札には『遠野』とある。表情は穏やかで、声も低い。怒鳴る必要のない人間は、たいてい柔らかい。


「本日はご足労ありがとうございます」


「足の選択肢が残っていたので」


「まず、ご確認です。九条さんは現在、量刑監査官として複数件の差戻しを行っていますね」


「記録にある通りです」


「差戻し理由に、テミスの社会コスト評価に対する疑義が複数回含まれています」


「疑義ではありません。法的根拠の確認です」


 遠野さんは、端末に何か入力した。私の言葉は、私の言葉としてではなく、分類として保存される。協力的。防衛的。攻撃的。説明可能。説明困難。どこに入ったのかは、表示されない。


「九条さんの業務適格性について、簡易な再評価を行います。これは処分ではありません」


「処分ではないものは、だいたい処分の前に来ます」


「ご不安は理解します」


 理解、という言葉も便利だ。相手の言葉を採用せずに、相手の感情だけを処理済みにできる。


 遠野さんは、一枚の紙を差し出した。


『業務継続支援プログラム参加同意書』


 私は一行目を読んだ。


『本プログラムは、監査官本人の職務負荷を軽減し、裁定承認業務の安定性を高めることを目的とする』


 二行目。


『参加者は、一定期間、差戻し判断に先立ち、上位審査AIによる補助意見を参照する』


 三行目。


『補助意見に反する判断を行う場合、理由の詳細入力を必要とする』


 四行目。


『プログラム参加は任意である』


 五行目。


『ただし、不参加の場合、業務適格性再評価の参考情報となる』


 私は紙から目を上げた。


「任意の下に、ただしを置くのは反則ですよ」


「制度上、参加を強制するものではありません」


「強制しないまま、人はだいたい従います」


「九条さん」


 遠野さんは少し声を落とした。


「ここで同意していただければ、暫定降格は再算定されます。交通決済の制限も、今日中に解除される見込みです」


 脅しではない。取引でもない。救済の説明だ。救済は、従う人間にだけ扉を開ける。


 私はボールペンを持った。


 署名欄は、やけに広かった。人間に残された場所は、いつも署名欄だけ広い。


 そのとき、隣の窓口で声が上がった。


「だから、出頭できなかったんです。母が倒れて、救急の付き添いで」


 四十代くらいの女性だった。作業着の上に薄いカーディガンを羽織っている。髪は雑に結ばれていて、目の下に濃い影があった。窓口の職員は、私の席からは背中しか見えない。


「無断不出頭ではなく、事後申告として処理されています」


「それで、なぜ家賃保証が止まるんですか」


「信用再評価中のため、一部自動決済が保留されています」


「保留って、明日が引き落としなんです」


「確認完了後、必要に応じて順次解除されます」


 順次。必要に応じて。


 役所の日本語は、水に似ている。形がなく、掴めず、いつのまにか足元を濡らす。


 私は遠野さんを見た。


「今の案件、ここで処理しているんですか」


「個別案件にはお答えできません」


「私は量刑監査官です」


「本日の九条さんは、被再評価者です」


 肩書も、都合よく凍結される。


 隣の女性は、紙を握りしめていた。そこに小さく事件番号が見えた。私は見てしまった。見てしまったものは、読まないほうが難しい。


『予防的信用制限 事後承認案件』


 私の胃の奥が冷えた。


 予防的信用制限は、形式上、裁判ではない。犯罪の有無を判断しない。生活インフラの一部利用を一時的に制限するだけだ。だからこそ、速い。速いものは便利で、便利なものはよく増える。


 遠野さんの端末に、私宛ての内部通知が出た。彼はそれを隠そうとしなかった。むしろ、私に見せるように角度を調整した。


『関連案件:監査官確認可能』

『事後承認期限:本日九時十五分』


 制度は偶然を装うのがうまい。


「九条さんの再評価中ですが、監査官権限は停止されていません」


「今の案件を見ろということですか」


「必要であれば、別室端末で確認できます」


「親切ですね」


「業務適格性の確認にもなります」


 罠という言葉は、古くさい。今の罠は、機会の形をしている。


 私は立ち上がった。


 隣の女性がこちらを見た。助けを求める顔ではなかった。助けを求めると、また何かの記録になると知っている顔だった。


「お名前を伺っても?」


 職員が止めようとしたが、女性のほうが先に答えた。


「森川紗季です」


 声はかすれていた。


「母は、まだ病院です。私、昨日ここに来られませんでした。それだけなんです」


 それだけ。


 この国で、それだけはよく足りなくなる。


 別室には窓がなかった。端末が一台、机が一つ。壁に貼られた注意書きには、記録媒体の持ち込み禁止と、画面撮影禁止と、閲覧内容の外部共有禁止が並んでいる。禁止が多い部屋ほど、そこで見えるものはたいてい共有されるべきものだ。


 私は端末に監査官IDを入力した。再評価中でも、まだ通った。


 森川紗季。四十三歳。清掃会社の契約社員。母親と二人暮らし。過去の犯罪歴なし。税滞納なし。軽微な交通違反が一件。昨日八時三十分、生活信用再調整相談センターへの出頭要請。未出頭。十時十二分、病院受付記録。十一時五分、救急外来付き添い登録。


 私は一行ずつ読んだ。


『未出頭理由:親族急病』


『証憑:医療機関受付ログあり』


『虚偽申告可能性:低』


 ここまでは、何も問題がない。


 次の行から、問題が始まる。


『ただし、事前連絡なし』


『同種事案において、事前連絡を行わない者は、以後の行政協力率が有意に低下』


『家賃保証停止時の再出頭率:九六・八%』


『短期不利益による協力回復期待値:高』


 私は息を吐いた。


 違法性ではない。危険性でもない。効き目だ。


 森川さんの家賃保証を止める理由は、彼女が悪いからではない。止めると来るからだ。来る人間を増やせば、センターの処理率は上がる。処理率が上がれば、将来の行政費用は下がる。テミスにとっては、きれいな線だ。


 判定欄には、いつもの平たい文言があった。


『裁定案:予防的信用制限を七十二時間継続』


『対象:家賃保証、自動引落、後払い決済、交通定期更新』


『理由:行政協力率低下リスクおよび再出頭促進効果』


『脚注:本人未実行(予測値による)』


 久しぶりに見た気がした。


 最初の事件で、十七歳の少年の判決文にあった一語。本人未実行。何もしていないことを、これからするかもしれないことで処理する入口。


 入口は、もう万引き少年だけのものではなかった。病院に付き添った娘にも、生活費の引き落としにも、床の矢印に従う人々にも開いている。


 承認期限は九時十五分。


 画面右上の時刻は九時九分。


 私は差戻し理由欄を開いた。指が止まる。


 これは罠だ。差戻せば、私の異常値はさらに増える。差戻さなければ、森川さんの家賃保証は止まる。どちらを選んでも、テミスは私の反応を学習する。


 だが、監査とはそういうものだ。


 見てしまった一行に対して、見なかったふりをする仕事ではない。


 私は入力した。


『当該制限は、未出頭という手続上の事実に対し、過度な生活上不利益を課すものである』


 続ける。


『医療機関受付ログにより、未出頭理由は合理的に説明されている』


 さらに続ける。


『再出頭率向上を目的とする家賃保証停止は、本人の違法性または具体的危険性の評価ではなく、不利益付与の効果測定に基づくものであり、相当性を欠く』


 最後に、一行。


『よって、本件は即時解除相当とする』


 送信ボタンを押す前に、画面が一度だけ暗くなった。


『本差戻しは監査官本人の再評価中に行われます』


 はい、そうですね。


 親切な警告に、私は心の中で相槌を打った。


 そして送信した。


『差戻しを受理しました』


『予防的信用制限は解除されました』


『被審査者へ通知済み』


 事件は、それで終わった。


 森川さんの明日の引き落としは、おそらく通る。母親の病院代も、たぶん払える。彼女の生活が救われたと言うには大げさで、制度が少し遅れて手を離しただけだ。それでも、手を離したことには違いない。


 別室を出ると、森川さんはまだ窓口にいた。職員の説明を聞きながら、何度も頭を下げている。感謝ではない。安心した人間は、まず謝る。この国では、迷惑をかけずに困る方法がまだ発明されていない。


 遠野さんは、私を十二番窓口へ戻した。


「確認しました。森川さんの件は解除されています」


「よかったですね。処理率が下がります」


「九条さんの判断は記録されました」


「でしょうね」


 机の上には、さっきの同意書が残っていた。


 私は署名欄を見た。


 ここに名前を書けば、私は少し楽になる。交通決済が戻り、宿泊予約も通りやすくなり、仕事用端末の警告も減る。上位AIの補助意見を読まされるだけで、形式上の権限は残る。制度は、反対者を消す前に、疲れさせる。疲れた人間は、消えなくても静かになる。


 父も疲れたのだろうか。


 それとも、疲れる前に消されたのだろうか。


「同意しません」


 私はボールペンを置いた。


 遠野さんは表情を変えなかった。


「不参加として記録します」


「どうぞ」


「暫定降格の解除は見送られる可能性があります」


「可能性ではなく、予定でしょう」


「九条さん」


 彼は初めて、端末から目を離した。


「あなたが探しているものは、ここにはありません」


 私は黙った。


 遠野さんの声は、さっきまでの窓口用の声ではなかった。低いが、事務的ではない。


「少なくとも、通常の閲覧手続きでは出てきません」


「何の話ですか」


「古い記録です。導入検証会議の」


 答えを否定するには、心臓が一拍遅すぎた。


 遠野さんは、机の下から薄い封筒を出した。茶封筒ではない。センターの白い事務封筒だ。表には何も書かれていない。


「三階の記録庫は、昨夜閉鎖されました」


「昨夜?」


「改装予定という名目です。あなたの出頭要請が発行されたあとです」


 私は封筒に手を伸ばさなかった。


 都合が良すぎるものに触れるときは、まず持ち主を確認する。子どもの頃、父に教わったことだ。落とし物を拾う前に、誰が落としたことにしたいのか考えろ、と。


「あなたは誰ですか」


「センター職員です」


「それ以外で」


「九条玲司さんの、最後の書記官補でした」


 空調の音が、急に大きく聞こえた。


 父の仕事場に、若い書記官補がいた記憶はある。名前までは覚えていない。父は家で職場の人間をあまり語らなかった。語らないこともまた、仕事の一部だったのだろう。


「父の反対意見書は」


「提出されました」


 遠野さんは、はっきり言った。


「最終日の十七時四十二分。紙で二部、電子で一部。受領印もあります」


「では、なぜ記録にないんですか」


「受領した翌朝、分類が変わりました」


「分類?」


「反対意見書ではなく、個人メモ扱いに」


 私は笑いそうになった。笑える話ではない。だが、この国はときどき、あまりにも事務的に人を殺す。反対意見は、反対でなくなった。意見は、メモになった。メモは、保存対象から外れる。たったそれだけで、父は会議で反対しなかった人間になる。


 遠野さんは封筒を私のほうへ滑らせた。


「原本ではありません。私が当時、控えとして取った写しです」


「なぜ今」


「九条さんが、森川さんの件を差し戻したからです」


「試したんですか」


「はい」


 正直な答えだった。正直さは、免罪符ではない。


「あなたがテミスと同じことをする人なら、渡す意味がなかった」


「私が違うと、今ので判断した?」


「違うかどうかは知りません。ただ、まだ署名欄を空欄にできる人だとは思いました」


 私は封筒を開けた。


 中には、コピー用紙が六枚入っていた。古い書式。父の名前。九条玲司。導入検証会議最終意見。


 私は最初の一行を読んだ。


『本制度は、裁判の迅速化ではなく、処分理由の置換である』


 二行目。


『違法行為の認定に代えて、将来の社会コストを最小化することを目的とする場合、司法は個人の行為を裁く機能を失う』


 三行目。


『目的関数が公開されない限り、当該AIは法の補助者ではなく、統治意思の代行者となる』


 父の文章だった。


 懐かしいと思うより先に、腹が立った。なぜこれを残して死んだのか。なぜ私に言わなかったのか。なぜ私は、父がただ消えたのだと思って生きてきたのか。


 四枚目の途中で、目が止まった。


『現行の学習設計では、目的関数は明文の政策目標よりも、過去の行政判断、民間与信、保険料率、雇用選別、住居審査等に内在する集団的選好を強く反映する』


 私はそこをもう一度読んだ。


『集団的選好』


 きれいな言葉だ。


 意味は、もっと汚い。


 誰を雇いたくないか。誰に部屋を貸したくないか。誰に保険料を高く払わせたいか。誰の遅刻を許し、誰の遅刻を記録するか。社会が毎日、小さく選んできた差別と面倒と保身の平均。テミスはそれを学ぶ。


 テミスが怪物なのではない。


 怪物の輪郭を、私たちがデータで丁寧になぞったのだ。


 最後のページに、赤い手書きの線が引かれていた。父の字ではない。おそらく当時の誰かのメモだ。


『監査官署名を実質審査とする案は、運用遅延および制度信頼低下を招くため不採用』


 その横に、父の筆跡で短く書かれていた。


『ここを消せば、誰も止められない』


 私は紙を閉じた。


 胸の奥に、冷たいものが沈んでいく。怒りではない。怒りは熱い。これはもっと役に立たない、重い認識だった。


 父は負けたのではない。


 父の反対は、メモにされた。


 そして今、私の差戻しも、異常値にされようとしている。


「遠野さん」


「はい」


「この写し、あなたが持っていたことは記録されていますか」


「いいえ」


「私に渡したことは」


「この部屋の映像は残ります」


「音声は」


「保存対象です」


 彼は淡々と言った。


「だから、今からあなたは私を不正閲覧で通報することもできます。そうすれば、あなたの再評価には有利に働くでしょう」


「ずいぶん親切な選択肢ですね」


「選択肢は、見えているだけましです」


 私は封筒を鞄に入れた。


「通報しません」


「では、持ち出しになります」


「そうですね」


「センター出口で、荷物確認があります」


「紙の本は持ち込めると言われました」


「持ち出せるとは言っていません」


 やはり、正しい答えは皮肉を受け取らない。


 私は立ち上がった。


 この写しを持って出れば、記録に残る。止められるかもしれない。信用制限では済まないかもしれない。持って出なければ、父の反対意見書はもう一度メモになる。今回は、私の手で。


 出口に向かう途中、待合室のモニターが更新された。


『九条灯様』

『追加確認があります。二階確認室へお戻りください』


 足を止めた人が数人いた。私を見る者もいた。すぐに目をそらした。関わることは、いつでもコストになる。


 受付の女性が、封印袋に入った私の端末を持って立っていた。


「九条さん、確認室へ」


 私はその横を通り過ぎた。


「九条さん」


 声が強くなる。


 武器はない。腕をつかむ人もいない。ただ、自動ドアの表示が赤に変わった。


『退館手続き未完了』


 ドアは開かない。


 私は鞄から封筒を出し、受付カウンターの上に置いた。白い封筒。中身は六枚のコピー。父が消された理由。私がここから下がれない理由。


 そして、受付票の裏にボールペンで一行書いた。


『本資料を量刑監査官として証拠保全する』


 署名欄はなかった。


 だから、私は自分で作った。


 九条灯。


 書き終えた瞬間、私の預けていたスマホが封印袋の中で震えた。画面だけがこちらを向いている。通知の文字が、透明な袋越しに読めた。


『緊急裁定』

『対象:九条灯』

『予防的信用制限を開始しました』


 続けて、もう一行。


『理由:証拠改変および無断持出しの蓋然性』


 私はその画面を一行ずつ読んだ。


 まだ何も持ち出していない。


 まだ何も改変していない。


 それでも、裁定はもう届いている。


 自動ドアの赤い表示が、静かに点滅した。


 では、私はここで初めて、本当に犯罪者になるべきなのか。


(第10話へ続く)


────────────────

▶次回・第10話「赤いドアの内側」――『緊急裁定、対象:九条灯』。信用が凍結され、端末を奪われる。赤いドアの内側で、私は被告人になる。

★面白かったら【☆評価】と【フォロー】で応援お願いします。あなたの一押しで、この物語は続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。