魔族vsコンビネーション
「はぁはぁ、おのれぇ……!」
上空に飛んだ魔族は、怒りに満ちた表情で俺たちを見つめている。
どうやら、逃げるつもりではないようだが……そりゃそうか。見下していた人間相手に逃げるのは、プライドが許さないよな。
もし逃げようとしたら、めちゃくちゃ煽ってやろう。
「私の魔力を防ぎ、この体にダメージを与えるとは……ははは、だが、ここまでは追ってこれまい! 人間は飛べないからな!」
なぜか、高らかに笑う魔族。あいつ、上空でダメージを回復させるつもりか。
というか……あいつ、上空なら安全だと、本気で思っているのか。
「はぁ……ミランシェ!」
「言われなくても!」
こういう状況に備えて、遠距離にも対応できるミランシェがいるのだ。彼女は、弓矢を構え、魔族へと狙いを定める。
その様子を見て、笑う者がいた。
「くはは! そんなものが、魔族に通用するわけがないだろう! 実に浅はかな考えだな!」
……あいつ、本当に俺たちの情報なんにも知らないんだな。
確かに、ただの弓矢に魔族にダメージを与えるだけの威力はない。……ただの弓矢なら、だ。
「はっ」
「いきます!」
矢を放つ。その直後、シャリーディアにより精霊術の付与が開始。ただの矢は、炎を纏いし精霊術の力が加わった矢へと変化する。
狙いは、もちろん魔族。
「バカな、精霊術だと!」
途端に、焦った魔族は体を大袈裟に動かし、矢を避ける。
矢は一直線にしか動かない以上、軌道を読みやすい。狙いがバレれば、それだけ避けるのも容易い。
「ふん、精霊術には驚いたが、当たらねば意味はない!」
「そうだな。……当たらなければ、な」
「なに……っ、か……!」
不思議そうに首を傾げる魔族の顔が、驚愕に染まる。それもそのはずだ……完全に避けたはずの矢が、背中に刺さっているのだから。
ただの矢なら、ダメージはないに等しい。だが、精霊術を付与してあれば、威力は段違いだ。
「バカな、矢が……曲がったとでも、いうのか!」
「まあ、間違ってはいないかな」
「なに……」
ミランシェの【百発百中】。それは打ったものを、視界にあるものならなんでも命中させることができるものだ。
だから、魔族が避けた矢は、実際に曲がり、魔族の背中に命中した。見えていなければさすがに当てようもないが、見えていれば必ず当たる。
普段ならばあり得ない、軌道の変化をも可能とする。
「く、そ……あつっ!」
「ただの炎は、魔族に効果は薄い……でも、精霊術なら威力は段違い。やっぱり、精霊術は全然違うんだな」
魔族の皮膚は、人間のそれとは全然違う。だから、人には危険な炎であっても、魔族にはたいした効果はない。
しかし、精霊術は違う。精霊の力を借りた術……それは、いくら魔族でも簡単には防げない力を持っている。
「だが、こんなもので私を倒せるなどと……」
「あぁ。だから……もっと効果のある方法で、お前を倒す」
「もっと……!?」
地響きが起こる……ような錯覚。それは、俺の後ろで【獣化】したドーマスさんが、天高くへと飛び上がったからだ。
普通に人間がジャンプしても、到底届かない位置にいる魔族に、ドーマスさんは迫る。
「バカな、こんな巨体で、なんだその動きは……っ! くそっ、どうなって……!」
眼前に迫るドーマスさんの姿に、魔族はその場を退こうとする。しかし、突如胸元を押さえ、その場に留まってしまう。
背中に刺さった矢、その先端に纏った炎が魔族の体内を燃やし、魔族の動きを奪っている。体内を燃やす炎は、いくら魔族であっても耐え難い苦しさを感じているはずだ。
精霊術だけでも魔族へダメージを与えられる。が、俺たちが狙っていたのは、そこからさらなる攻撃に続けること。
「ぬぉおおおおお!!」
「いかに獣の姿をしていても、人間ごときの拳が効へぶら!?」
炎の苦しみにその場を動けない魔族は、ドーマスさんの拳を顔面に受け、思い切り地上へと吹き飛ばされる。
なにか言っていた気もするが……魔族程度で、ドーマスさんの、【獣化】した拳を耐えられるわけがない。
「ぐ、ぅう……」
「あ、まだ生きてる」
地面が大きくへこむほどの、強烈な一撃……それを受けてまだ、魔族は原型を留めていた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
もし面白い、続きが見たいと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えるとテンション上がります!




