魔族との戦い
現れたのは、間違いなく魔族……人の姿をしているが、全体的に黒く、額には角が生えている。
そして、人間との決定的な違いが、その背中に生えた漆黒の翼だ。
「これが……魔族か!」
これまでとは明らかに違う敵を前に、ドーマスさんを筆頭に全員の警戒レベルが引き上がる。
人の姿、それに言語を喋る魔族……魔物なんかとは、格が違う。本物の、邪悪だ。
「最近、我らの同胞が狩られていると情報が入ってな……お前たちだな?」
「だったら、どうする」
「困るんだよ……いかに低能な魔物とはいえ、貴重な戦力には変わりない。それを、むざむざ殺されてしまっては」
「戦力だと?」
「あぁ……人間は、増えすぎた。この星を破滅に導く害悪だ。だから、我らが統治するために、ひとつ人間を殺し尽そうと思ってな。面倒なことは魔物に任せておけば、楽に事が進む」
腕を広げ、どこか仰々しく話す魔族。うーん……なんか、前世で魔族のことをペラペラしゃべった魔族も、こんなタイプだったような? 同じやつか?
ともかく、魔族は人間を滅ぼすつもりのようだ。
それを聞いて、黙っていられるはずもない。
「聞き捨てならん言葉だ……なら、それを阻止するために、我々はお前たちを倒すだけのこと」
「多少腕に覚えがあるからといって、思い上がるな人間。格の差というやつを見せてやる」
直後、魔族の体を黒いもやが覆っていく。同時に、あいつから放たれる威圧感も跳ね上がる。
「っ、おい、あれが魔力ってやつか!?」
「そう、聞いてます!」
ゲルドの誰へともわからぬ問いかけに、シャリーディアが応える。そう、あれこそが魔力。
魔力とは、魔族のみが使うことのできる超常的な力のことを言う。もっとも、魔族について直接目撃されたのはずっと前なため、それは伝え聞かされてきた話でしかない。
俺は、前世で見ていたが……ここにいるみんなは、初めて見る。
「塵となって消えろ!」
「! みんな、リリーの周りへ!」
魔族は両手を前に出し、手のひらに溜めたエネルギー弾を放つ。魔力により作られた超常的な力、あれを魔法という。
見た感じでは、精霊術とさほど変わりはない。が、違いを挙げるとし例えるならば精霊術は光、魔法は闇、だろうか。
「リリー!」
「う、うん!」
俺たちはリリーの周りに集まり、リリーは【絶対防御】を展開。リリーにとっては、これまでの訓練で自分の力に自信は持っていても、魔法を防ぐのは初めてだから不安は残っているはずだ。
……だが、俺は知っている。
ドッ……!
黒いエネルギー弾、魔法がリリーの作り出した壁にぶち当たり、力が拮抗する。
攻撃と防御、その互いの力がぶつかり合い……目の前で、爆発した。煙が、周囲を包み込んでいく。
「ふん、なにやらごちゃごちゃと騒いでいたようだが、所詮は人間。消し飛んだか……」
「誰が消し飛んだって?」
「!」
勝利を確信した魔族、しかしその目が驚きに見開かれる。
顔をずらし、間一髪かわした短剣は、魔族の頬を切り裂いていった。
「ちっ、外したか」
「ば、バカな……あの攻撃を、耐えきっただと」
ゲルドの投げた短剣は避けられたが、魔法を耐えきったことで魔族は驚いている。
「ウチの子の防御力を、あまく見ないことだな」
「えへへ……」
ドーマスさんが、誇らしげにリリーの頭を撫でている。リリーも、嬉しそうだ。
「おのれ……ならば、さっきよりも力を……」
「させるか!」
「! なに……」
魔族が再び魔力を高めつつある。それを感じ取り、俺はその場から飛び出すように、駆け出した。
【勇者】により、身体能力は向上している。それは、体力や攻撃力だけではなく、脚力も同様にだ。
「バカな、人間ごときがこの速さ……」
「魔物が狩られてるって情報を得ているわりに、俺たちの情報は全然みたいだ、な!」
ドムッ……!
「か、は……!」
右拳を握り締め、魔族の腹部へと打ち込む。魔物ならば、一撃で消滅させることの出来る威力。
……だが、それを受けても魔族は、苦しそうにはしつつも消滅していなかった。
「やっぱり、魔物とは違うな」
「おの、れ!」
魔族は、俺を突き放し……その翼をはためかせ、上空へと飛び立った。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
もし面白い、続きが見たいと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えるとテンション上がります!




