【絶対防御】の力
「ど、ドーマスさん?」
リリーが『スキル』を授かり、さっそくその力を披露した。次に確かめるのは、その性能性……すなわち防御力だ。
前世の記憶がある俺は、【絶対防御】の力をよく知っている。が、他のみんなはそうではない。張本人のリリーでさえ、だ。
だから、テストの意味も含めて、防御性能を確かめるのは必要だ。……まさか、ドーマスさんが名乗りを上げるとは思わなかった。これも、前世との流れが違う。
「ま、まずは軽いものから、いったほうがいいのでは?」
と、ミランシェが少し心配そうに声を上げる。そう、前世ではミランシェの言うとおり、まずは軽い攻撃から徐々に重たい攻撃へと変えていった。
結論から言えば、ドーマスさんの力でも壊れない力が、【絶対防御】にはある。だが、それを知らないミランシェが心配に感じるのも当然だ。
「おいおいどうしたおっさん、あんたあのガキにやけに入れ込んでたじゃねぇか」
珍しく、ゲルドもちょっと心配そうだ。ドーマスさんの力をよく知っているからこそ、リリーの『スキル』がちゃんと機能するか心配なのだろう。
というか、ゲルドの言うように、ドーマスさんはリリーを自分の娘のように思っていた。だから、ドーマスさんの力を試すのは本人の希望もあり最後の方になると思っていたのだが……
「否定はしない。が……私は、これまでリリーが頑張ってきたのを見てきた。だから、必要以上に子供扱いするのをやめようと思ってな」
「ドーマスさん……」
「それに、国王様が言っていただろう。どんな攻撃をも打ち消す力だ、と。なら、私はそれを信じる」
確かに……どんな攻撃も打ち消すとわかっているのなら、わざわざ軽い攻撃から重く変えていく必要はない。
結果的には、ドーマスさんが重い一撃を放ち、それをリリーが防御できれば、耐久性の心配はなくなる。それでも、いきなり重い攻撃は怖いと思うが。
「いいか、リリー」
「う、うん! ドンと来てよ! 最初から、全力でいいよ!」
「……よし」
どうやらリリーは、覚悟を決めたらしい。リリー本人が問題ないと言うのなら、こちらはもうなにも言うまい。というか、本気でいいって……ずいぶん、大きく出たな。
リリーは【絶対防御】を展開したまま、ドーマスさんは歩みを進めていく。ドーマスさんは上着を脱ぎ、力を集中させていく。
【獣化】が、始まった。リリーの言ったように、最初から全力で挑むつもりだ。
「大丈夫かよ。あのおっさん、最近じゃ金属製の壁に穴開けたらしいぞ」
「あぁ、俺も見た。やばかったよな」
【獣化】したドーマスさんは、最近ますます力を増している。大木に跡をつけるレベルだったものが、今や金属壁に穴を開けるほどだ。
それに、魔物と度々戦う機会があるのだが……ゲルドやミランシェは、【鑑定眼】の力で弱所を突く。俺だって、その力は頼りにさせてもらっている。
だが……ドーマスさんは【鑑定眼】の力を借りずに素で魔物をぶん殴り、気絶させるまでに至った。あの硬い皮膚を超えて、魔物に大打撃を与えたのだ。
正直、怖かった。なんか、前世よりもパワーアップしていた気がする。
「いくぞぉ!」
「!」
気合を入れたドーマスさんの咆哮、それは離れたところにいる俺すらちょっとビビるくらいの迫力だ。
果たしてリリーは……? ……手を前に出したまま、ドーマスさんから目をそらさず構えていた。
「むぅん!」
ドーマスさんは腕を振りかぶり……
ドォン……!
巨大な音を立て、巨大な腕は透明な壁へとぶち当たる。ドーマスさんの力を思えばこそ、当たったものは粉々に砕けてしまうだろうほどの、衝撃。
しかし……ドーマスさんの拳を受け止めた壁は、びくともしていない。壊れるどころか、ヒビすらも入っていないのだ。
「す、すごい……」
ミランシェの言うとおり、それはすごい光景だった。ドーマスさんの、それも【獣化】した一撃を受けて、平気なんて。
「……は、ぁ」
「リリー……すごいじゃないか、わっはっは!」
「わ、わっ」
覚悟していたとはいえ、気が抜けたのかリリーが『スキル』を解除する。同じく『スキル』を解除したドーマスさんは、リリーへ近づき、背中をバシバシ叩く。
上機嫌に笑っている……が、バシバシと叩く姿は、微笑ましくもちょっと怖い。
「ど、ドーマスさん、そのくらいに! リリー涙目になってますから! ドーマスさーん!」
……『スキル』は凄まじい防御力。だからといって、本人もそうでは、ないのだ。
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