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閑話4:家族の肖像

 孤児院に、セレスティーナが来てから数ヶ月が経った。

 かつて、埃まみれの廃墟だった場所は、今や、温かい家族の家へと変わっていた。


 朝、子供たちは皆で庭に出る。セレスティーナが前世で培った知識(管理栄養士、心理学)を活かし、庭の一角に小さな畑を作ったのだ。

 リリィは、植物の成長に興味を持ち、どの野菜がいつ頃収穫できるかを完璧に把握している。ルカは、水魔法を使って畑に水をやり、ハンスは、頑丈な体で土を耕した。


 「セレスティーナ様、この野菜は、もう少ししたら食べられますか?」


 リリィが、嬉しそうに尋ねる。


 「ええ、もうすぐね。美味しいスープにしてあげましょう」


 セレスティーナは、そう言って優しく微笑んだ。


 昼間は、セレスティーナが子供たちに読み書きや算術を教える。

 リリィは商売の計算を、ルカは魔法の理論を、ハンスは剣術の歴史を、それぞれが楽しそうに学んでいた。

 彼らは、もう「忌み子」として怯えることなく、未来への希望を胸に、毎日を過ごしていた。


 夜になると、皆で焚き火を囲んで食事をするのが日課だった。

 今日のご飯は、皆で育てた野菜と、セレスティーナが作った特製のスープだ。

 食事を終えると、子供たちは、今日あった出来事をセレスティーナに話す。


 「今日、ディランが剣術を教えてくれたんだ!」


 「私、もうすぐ、隣の村の人と新しい商売を始めるの!」


 彼らの言葉は、セレスティーナの胸を温かく満たしていった。


 子供たちが眠った後、セレスティーナは一人、夜空を見上げていた。

 かつて、王都にいた頃、彼女はいつも孤独だった。

 華やかな生活の中に、心の拠り所はなかった。


 しかし、今は違う。

 この子たちがいる。

 血の繋がりはないけれど、彼らは、間違いなくわたくしのかけがえのない「家族」だ。

 彼らとの生活は、彼女の心に、静かな幸せと、生きる意味を与えてくれた。

 悪役令嬢として追放された彼女は、今、真の幸せを見つけていたのだ。

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