「不思議」を愛するシュウヤ
シュウヤは、「不思議」が大好きだ。
宇宙の存在を知った時、宇宙人やUFOについて目をキラキラさせて語っていた。
小二の夏休みの自由研究には、日本全国の妖怪について調べ上げていて、翌年は世界の伝説上の生き物にバージョンアップしていた。
小三のその夏休みの自由研究を最後に、表立ってそういうことを公言することはなくなったけど、ヒロやコテツには変わらず話し続けた。
―見えないからいないとか、物理法則からかけ離れてるからありえないとか。ちゃんと否定できないのに、自分の五感で捉えられないからって信じないのは、違うと思うんだ。だから俺が最初に見つけて、証明するんだ。そこにいるって。そこにあるって。
シュウヤはいつだって、不思議を見つけることに真剣だ。
「はぁ。まぁ、コテツだしな……。ちゃんと確認しなかった俺も悪いし」
ため息を吐いたシュウヤは、スコップをコテツに手渡した。
「これで魚のエサになりそうなミミズでも獲ってきてよ。釣り竿が反応したら呼ぶから、あんまり遠くに行くなよ。大物釣れたら一緒に引っぱろーぜ」
「ラジャ!」
駆けだしたコテツを見送って、さて、ぼくはどうするべきだろうかとヒロは思った。
「ヒロ」
「な、なんだよ」
「失恋でもしたのか」
「……は?」
全く予想していなかった問いかけに、ヒロは目を見開いた。
「ちがうのか。じゃあ、振られた?恋わずらい?」
「いきなりなんの話だよ」
「超絶鈍感なコテツは気づいてないと思うけど、けっこーわかりやすいぞ。授業中ぼーっと空見てること多いし、ため息の数も増えてる。大好きな本だって、読んでないじゃん。いつも持ち歩いている本、毎日タイトル変わってたのにここ一か月ずーっといっしょ。これで気づかないとか、ある?」
「ほ、本にはブックカバーかけてるだろっ!」
「そのブックカバーの紙、白いからよーく見るとタイトルわかんの。ほら、隠してないで白状しなよ」
シュウヤは釣り竿の糸を巻き上げて確認すると、また針の先に新しい小エビをつけて釣り糸を水面の下に沈めた。
シュウヤの視線が外れたことでほっと息をついたヒロは、両手で握ってた虫取り網の柄をくるりと回して言葉を選んだ。
「や、好きとか、そんなんじゃなくてさ。頻繁に会ってた人が急に行方不明になって、ちょっと心配なだけ」
「ふーん。逃げられた上に音信不通かぁ」
「逃げられてねーよ!」
「でも居場所わかんないし、連絡つかないんでしょ」
「それはそーだけど……」
「自覚ないうちに怒らせちゃったんじゃないの?いや、ヒロに限ってそれはないかな。単純に飽きちゃったとか?」
「あの人がぼくに飽きるとか、そんなのないからっ!」
言って、ヒロはハッと口をふさいだが時すでに遅し。
「ふぅん。あの人、ね。年上かぁ」
「うぐぐぐ……」
ニヤリと笑うシュウヤに、これ以上は何も言うまいとヒロは口を固く結んだ。




