J⑤
現在、俺は、Jリーグ一部の、リボーン福島に所属している。
そう、かつてオファーを断ったクラブだ。なのに、また声をかけてくれたのだ。とてもありがたかった。そして率いている監督が葛城さんであることも、ここに入団する決め手の一つだった。
今日、これから行われる試合は、俺のサッカー人生において、最大級に重要な一戦だ。相手チームのFC熊本には工藤がいて、俺たちはともにワントップのフォワードで先発出場する。中学生のときに出会ってからおよそ二十年、あいつと初めて敵味方に分かれて戦うのである。
そのホイッスルが鳴った。
試合開始直後に、工藤と目が合った。一瞬だけ笑みがこぼれた。
以降、俺と工藤は互いに何度も相手のゴール目掛けてシュートを放ち、二点を取り合った。スコアもその得点のみの二―二だ。俺も負けていないと思うが、あいつのプレースタイルは相変わらずで、見事だった。
両チームとも置かれた状況としてはそのままドローで終わっても問題なかったけれども、フル出場した俺たちは最後の一秒までゴールマウスを狙い続けた。
ピピー!
試合終了の笛が鳴り響いた。
「くそー!」
俺と工藤の二人だけが勝ち越し点を奪えずに悔しがっていた。
少しして、俺たちは健闘を称え合った。
グラウンドから引き揚げるとき、年下のチームメイトである五十嵐という奴に話しかけられた。
「引き分けでいいのに、あんなにまで点を取りたがって、あげくに悔しがって、野島さん、欲深いですねえ」
「バカ。お前、プロなんだから特に、それくらいの気持ちじゃなきゃ駄目だぞ。チームも上に上がれないし、今は安泰でも、レギュラーだって失いかねないんだからな」
俺が工藤にスタメンの座を奪われてしまったように。それが頭をよぎったために、少々言い方がきつくなってしまった。
「す、すみません……」
五十嵐はたじろいだ。
「おお。わかりゃいいよ、うん」
俺は焦って、その言葉は優しく述べておいた。
「それにしても、二ゴールともすげえシュートでしたね。さすがうちのエースストライカーですよ」
「フッ。そう言ってくれて嬉しいけど、俺、もうすぐで誕生日が来たら、三十五だぜ。いつまでエースストライカーの看板を背負わせるんだよ」
そう口にしながら、俺は「でも、あいつもか」と思い、振り返った。
FC熊本のエースストライカーである工藤もこっちを見ていて、またも目が合った。なので、軽く手を振った。
少し前にあいつと、こんな会話になった。
「野島くん、もう海外でプレーする気はないの?」
「あるよ。全然ある。代表に復帰する気だって満々だぜ」
「フフフ」
「何だよ、そんなにおかしいかよ? 絶対に無理なわけじゃねえだろ」
俺は唇を尖らせた。
「いや、不可能だからっていうので笑ったんじゃなくて、僕も同じことを考えてたからさ。知ってる? 僕たち、そういう負けん気が強いところが似てるからって……」
「ああ、知ってるよ。兄弟みたいだ、ってんだろ?」
「それどころかさ、前世は双子だったんじゃないかって話もあるんだよ。でも、確かに諦めの悪さは似てるかもね」
「だな」
俺たちは笑い合った。
しかし、本当は似てなんかいない。あいつに影響を受けて、俺も工藤のように高い志を持つ意識に変わったんだ。
お前が俺を一流のサッカー選手にしてくれたんだよ——。
今、去っていく工藤の背中を見つめながら、俺は思った。
そうだ、「いつまでエースストライカーの看板を背負わせるんだ」なんて言ったけれども、まだ物足りない。
あいつと、チームのエースストライカーの立場のまま、もう一度対決し、次こそ向こうを上回るゴールを決めて、勝利をつかむ——俺はその目標に向かって練習に励むことだろう。




