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エースストライカー  作者: 柿井優嬉


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3/7

中学③

「そういうわけで、野島くんのご厚意で、ときどき参加させてもらいます。よろしくお願いします」

 水本は、俺が誘ったときはあんなにドギマギしてたのに、部室で部員みんなにあいさつする際、普段の堂々とした態度で、そう述べて頭を下げた。

「ちなみに、私と野島くんは付き合ってなんかいません。私は気にしないので構いませんが、野島くんは好きに思われているコからアプローチされづらくなって迷惑なようなので、私たちを恋人みたいに扱うのはやめてくださいね」

 それを聞いて、間近にいる辰巳というでしゃばりな奴が俺に話しかけた。

「お前を好きなコって、どこにいるんだよ?」

 この言葉を受けて、あちこちで笑いが起きた。

「だって、サッカー部のエースですもん。好意を寄せている女子生徒なんていっーぱいいますよ」

 水本が言った。

「え? マジで?」

 俺が心の中で思ったのと同じ台詞を、辰巳が口にした。

「多分そうだろうなってだけですけど」

「何だよー」

 辰巳がコケる動きをし、再びメンバーたちから笑いが漏れた。

 チッ、水本め。余計な発言をして、俺を笑い者にするなってんだ。

 でも、今のやりとりで、水本とみんなの距離が一気に縮まった感じがするし、まあ、いっか。


「ありがとね」

 その日の帰り、昇降口のところで、水本が俺にお礼を述べた。

「ああ。もういいよ、感謝するのは。それで終わりな」

「わかった。ねえ、野島は、将来はJリーガーを目指すの?」

 水本は笑顔でそんなことを口にした。

「ええ? 無理、無理、プロの選手なんて。なれるわけねえじゃん」

「え? なんでよ。だって、何試合も続けてゴールを決められるくらい上手なんでしょ? 私みたいな素人だけじゃなくて、サッカー部のみんなもあんたのことをすごいって言ってるんだし、頑張れば可能性はあるんじゃないの?」

「たくさん点を取ってるっていっても、中学の部活レベルの話で、全国的に有名な強豪校相手とかでもないからさ。本当に上手い奴は、プロの下部組織に所属してるんだよ。まあ、なかには学校のクラブでずっとプレーしてプロまでいく人もいるだろうけど、俺のゴールは、何人もドリブルでかわしてみたいんじゃなくて、こぼれ球を押し込むようなのが大半だし、ちゃんとサッカーのことを理解してる奴なら、俺はそこまでのプレイヤーじゃないってすぐにわかるよ」

「ふーん、そう……」

 水本は、うなずきつつも、完全には納得していない様子だ。

 そこへ、小山という、サッカー部で、俺とクラスも一緒の男子が、そいつも帰るので近づいてきた。

「よー。なに話してんだ?」

 水本が、その問いかけに反応して、言葉を返した。

「ねえ、野島って、どうしてモテないのかな? サッカーがすごく上手なうえに謙虚で、顔だってハンサムではないけれど悪くはないし、私をわざわざ部に誘ってくれるくらい親切なのに」

「ああ、しかもこいつ、勉強もできるんだぜ」

「えー、ほんとに? だったら、なおさら」

「おそらく、すげえ変態だったりすると思うんだ」

 ぶっ。

「何だよ、それ!」

 俺は腹を立てているぞという口調で言ったが、小山は少しも悪びれず平然とした顔をしていやがる。加えて、反撃する調子でしゃべった。

「世の中に完璧な人間なんていないだろ。それに、そんなとこでもなけりゃ、割に合わないってこと」

「なるほどね。そっかー、気をつけよう」

 水本がふざけて俺を怖がるジェスチャーをした。

「おい!」

 俺はツッコむ感じで水本にも怒りを向けた。

 そして、可笑しくなって、三人で笑い合った。


 こんな具合で、俺は楽しく充実した毎日を送っていた。

 その平和が、この少し後に崩壊することになるなどとは、まったく思いもしていなかったのだった。


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