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十四話 最強の魔法使い

 剣と魔法を使って南のダンジョンから出てくる魔物を倒している。


 まだ、魔氾濫がまだ終わってないのか倒しても倒しても魔物が現れる。

 魔物の質も上がりつつあり、C級パーティーでも撤退を始めている奴らもいる。


 戦っていると複数人が飛ばされてきた。


「ギガジャイアントボアか。あいつ赤毛が普通なのか」


 かなり強い魔物が現れて、場が混乱している。

 特に戦線を維持するのに貢献していた魔法使いへの被害が多い。


 ギガジャイアントボアは魔法が通用しにくい特性がある。しかもそこそこ堅い皮膚と切りにくい巨大な体のせいで厄介な魔物だ。そんな奴が暴れているとなると周りの冒険者が逃げ出すのも時間の問題になる。


 トラッパーのシャーネを守るためにも俺から魔物に向かって行くのはいい策ではない。


 少し挑発してこっちにおびき寄せるか。


 魔法を使おうとした瞬間。


「剣の腕はいいかもしれないけど、魔法はそこそこだね」


 女の声と共に家屋よりも大きいギガジャイアントすら飲み込む光線が背後から放たれた。


 見た目から魔法であることは分かるがギガジャイアントボアには魔法が効きにくい。いくら上級魔法でも倒しきれるか分からないような相手だ。


 後ろで魔法を使った奴の存在が気になるが、剣を構えて警戒を続けた。


 光線が巻き上げた土煙が晴れた。

 そこには黒焦げになりながらも生きている魔物が経っていた。


「これだから魔物は嫌いなんだ。でも、天才であるボクはすでに対応は考えているんだ」


 指が鳴らされた。

 すると、前方にいたギガジャイアントボアが消えた。


 次の瞬間地鳴りと共に肉が地面に落下した。


 打ち上げたとかそんなんじゃない。あんな大きな魔物を上空に()()させた。


 ――空間魔法。

 非常に高度な技術を要する魔法だ。


 特に瞬間移動を使える魔法使いは世界でも両手で数えられる程度しかいない。そんな連中でも長い時間の詠唱は必須なんて言われている。

 そんな魔法を後ろの奴は無詠唱で使った。


 こんな事ができる魔法使いは一人しかいない。

 次元を超えた強さを持つ『世界最強の三人』の一人に数えられ、至高の魔法使い。


 噂程度だが、俺はその魔法使いの名前を知っている。


 後ろをゆっくり振り返った。

 シャーネの隣に一人の少女が立っている。


「魔法を扱う者として当然、魔法関連の本は読むよね? レヴィ・セリーン。一度は見たことがあるよね?」


 そこには肩まで伸びたさらさらの金髪を風に吹かせた若い女が立っていた。左目を隠すように包帯を巻いている。

 なぜか空中には三冊の本が空中でとどまっている。


 この少女が世界最強と言われる魔法使いだ。

 意外と若かったが、あの魔法を見た後に疑うなんてことはできない。


 強さもそうだが、雷魔法やら空間魔法とかの特殊属性の魔法を研究していて難しい論文をいっぱい出しているらしい。

 彼女のお陰で魔法の理論は数十年以上は先の次元に到達している。


「予想以外に若いんだな。俺はゼオンだ」

「一応、十四歳。学校は入る前から卒業させられたから、今は宮廷魔導士だよ。今日は……言わなくても分かるよね」

「ああ。魔氾濫を鎮めるぞ。援護する」


 ここで最強の魔法使いが来たのは心強い。

 殲滅力のある魔法を専門に使える奴がいるだけで、対多数はすごい楽になる。


「本来、ボク一人で過剰戦力なんだけど。ダンジョンには知性があるのか魔法の効きが悪そうな魔物が増えている気がする。ダンジョンや魔物はボクの専門じゃないけど、少し興味が出てきた。帰ったら少し研究してみよう」


 詠唱も何もなしに天から光線が降り注いだ。


 ギガジャイアントボアを瀕死にしたものと同じ光線だ。

 数と威力が桁違いだ。一体どれだけの魔力と技術があればこんな芸当が可能なのだろうか?


 やはり、魔法を専門でやっている奴の火力は異様に高い。


 俺の出番はほとんどなくなった。


「よーし。これで仕事おしまいっ! ってわけにはいかないかぁ」


 辺りの魔物が殲滅され、魔物の気配がなくなった。


 内心、安心していると目の前に黒い影が浮かび上がり、それが形を変えて一体の魔物に変わった。


 全身を真っ白な毛で包まれた人型をした獣。


「資料で見ただけならワーウルフだけど、これは普通との比べてかなり強そうだ」


 レヴィがそう呟いた。


 ワーウルフは獣と人間の中間みたいな見た目をしており、ダンジョンの階層によって強さが変動しやすい魔物だ。


 レヴィが無言で魔法を使い、天から光が降り注いだ。


 数秒だったがあの破壊光線を喰らえば魔法耐性のある魔物でもかなりきついはずだ。


 煙が晴れると毛先が少しだけ焦げたワーウルフが立っていた。


「なるほど、対ボクで対策をしてきた訳だ。面白い」


 ワーウルフが突進してきた。

 魔法の効きもよくなさそうだし、俺が対処した方がいいな。


 盾を構えて、突進を受け止めた。


 なかなか重たいが、さっき戦ったダンジョンマスターと比べると見劣りするレベルだ。


 力が釣り合った所で剣を魔物の首筋に向けた。


「堅いな」


 斬れないことはないが、堅い筋肉で覆われていて致命傷になってはいない。

 攻撃したことで魔物が距離を取ってきた。


 一回接敵して分かったが、戦うことはできる。

 魔法への耐性を上げたせいで、それ以外の能力はそれほどでもない。


「ボクが倒す! 援護して!」

「俺だけで倒せる」


 次に突進してきた時に反撃すれば確実に倒せる。


虚葬(きょそう)空間魔法。《黒点こくてん》」


 詠唱が聞こえたと同時にワーウルフを中心に光を通さない球状の何かが現れた。


 一体何が起こったか分からなかったが、最強の魔法使いが詠唱までして使ってまで発動させた魔法。次元が違う魔法であることは分かる。


 魔法が消えるとそこにはただ抉れた地面があるだけだった。


 魔物が完全に消えた。


「どうだっ! しばらく魔法は使えなくなる弱点はあるけど、どんな存在だろうと消し去る魔法だ! やっぱりボクは天才だ!」


 レヴィは何やら勝利したかのように声を出している。だが、魔氾濫はこれで終わりにはならなかった。


「グルルル」

「こっちにもダンジョンマスターが出てくるか」


 真っ赤な肉が獣のように四足歩行をしながら俺たちの前に現れた。



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