とある両家の顔合わせ
愛海にプロポーズをし、無事に承諾を得て、晴れて婚約者となった。
それから色々なことを決めた。
籍を入れるのはいつにするか、結婚式はどうするか、いつにするか。
住んでいる場所もそうだ。
これから子供もと考えると、今住んでいるマンションでは狭すぎる。
最低でも3LDKくらいがいいが…。
俺はマンションに借りるか買うか悩んでいた。
しかし、愛海は俺の実家でいいじゃんと。
ちょっと待ってくれ。
嫁姑とか大丈夫なの?
え?母さんとなら仲良くやってるから大丈夫?
それに母さんからどうかって誘われてた?
いつの間に…。
ということで新しい住居は実家になりそうだ。
幸いにして、実家は部屋数も余っており、新婚の悩みである防音についても問題ない。
俺が学生の頃に親父が建てた家だが、兄妹で色々と注文をつけたから問題ない。
来年は大輝さんと小海ちゃんの式が決まっており、今年中に愛海と結婚式を挙げる必要がある。
大輝さんと小海ちゃんは、小海ちゃんが大学を卒業するタイミングで式を挙げるみたいだ。
俺としては愛海との結婚式なのだから、盛大に行いたいと思っていたが、愛海は慎ましい式がいいとのこと。
今年で30にもなるということで、親族だけの慎ましい式を希望している。
教会で式だけして、披露宴はなし。
親族だけの食事会で終わり、が愛海の希望だ。
愛海の希望だから、もちろん叶えるさ。
だけど、ドレスだけはしっかりとしたものを選ばせてもらうよ。
それくらいは我が儘言っていいよね。
「紅葉の父の和彦です」
「愛海の父の正俊です」
今日は暮林家と竹科家の顔合わせ。
愛海と調整し、無事に顔合わせとなった。
料亭だぞー、みたか親父!と思っていたら、ここかーと言いやがった。
来たことあるのかよ…。
暮林家からは、お義父さん、お義母さん、大輝さん、小海ちゃん、勇悟くん、和香ちゃん、蓮司くん、陽菜ちゃんが参加している。
竹科家からは親父、母さん、葵、良亮、千尋だ。
最初は親兄妹だけと思っていたが、みんな家族だ、ということで全員呼んだ。
ルール?俺がルールだ!
「紅葉くんにはボコボコにされましてね。愛海を欲しい気持ちに敗けました」
「お聞きしております。正俊さんも嗜むようで」
「和彦さんもですか。どうですか、後日一局」
父親同士はすでに意気投合しており、勝手に二人で酒を飲んでいる始末。
親父も麻雀好きだから、お義父さんとは気が合うんだろうな。
俺も親父から麻雀習ったわけだし…。
暮林家対竹科家の戦いがあるのかと思ってしまう。
「愛海ちゃんがお嫁さんに来てくれるなんて夢のようです。うちのバカ息子には勿体ないほどで…」
「紅葉くんもしっかりされた男性ですし、愛海がご迷惑をおかけしないか心配で心配で…」
母親同士も問題ないようだ。
親同士がギスギスしていたら、顔合わせを調整したこちらとしても悲しい気持ちになる。
逆に打解けすぎて変なこと言わないでくれ…。
おい、母さん。
高校時代のカレーパン事件は止めてくれ。
「良亮!俺の酒が飲めねーのか!」
「ちょ!これ以上無理!俺飲み過ぎと寝るんだって!」
「情けないぞ良亮くん。ビールなんて水と一緒だ」
「大輝さん!?勇悟を止めてくださいー!」
勇悟くんと良亮は同い年ということで、すぐに打解けた。
君たち知り合いかな?
打解けすぎだろ…。
共通の趣味があった?
大輝さんもストッパーになってくださいよ…。
「あと3か月?3か月なんてあっという間よー。準備できることは今のうちに準備しておかないと大変」
「参考になる!うちは旦那が子供の名前ばっかり考えちゃってて。やっぱり痛いの?」
「痛い!でも陽菜はそこまでだったねー」
和香ちゃんと葵は、葵がもうすぐ子供が産まれるとあって、子育ての先輩である和香ちゃんに色々聞いている。
愛海との間に子供ができたらあの二人相談するか…。
「次は千尋ちゃんの番だよー」
「うーん、どれがいいかなー?これ!はい、陽菜ちゃんの番だよー」
「おみちゃん!どれがいい?」
「んー、これにしよっか」
蓮司くんと陽菜ちゃんは小海ちゃんと千尋とトランプで遊んでいる。
どこから持ってきた…?
まぁ、カオスだ。
初の両家の顔合わせなのにただの飲み会みたいになってるじゃねーか!
今日の主役は愛海と俺だろ!
「仲がいいね」
「カオスやん…」
愛海と俺と二人で周囲の惨状を見つめている。
良亮の顔合わせの時はもっと静かだったのに…。
離れの個室を頼んでおいてよかった…。
「仲が悪いよりいいでしょ?」
「そうだけど…」
「へるぷ!紅葉くんへるぷ!」
「紅葉くんは飲めねーだろうが!良亮が飲むんだよ!」
「うるせーぞ!バカ二人!」
「おにー、勇悟ちゃんとみててよ」
「任せろ」
「ちょ!大輝さんもダメですって!大輝さんが3杯飲むから俺が1杯って!?」
うん…。
両家との付き合いは色々と大変そうだ…。




