とある男と暮林家①
「さぁ、どうする紅葉くん」
俺の正面で微笑むお義父さん。
なんで…。
どうしてこうなったんだ…。
俺は愛海の同棲願いに来ただけなのに…。
遊びはここまでだ。
覚悟だ。
覚悟が必要なんだ。
お義父さんを倒して、愛海との同棲を認めてもらうっ!
「俺どこかおかしくない?」
「ガッチガチに緊張してる紅葉がおかしいことになってる」
大輝さんと会ってから1週間。
俺は暮林家の前で固まっていた。
愛海に調整してもらい、暮林家に挨拶に伺っている。
途中のコンビニで身嗜みはチェックしたけど、変なとこないよね?
愛海が迎えにきてくれたけど、緊張素過ぎて心ここに有らず…。
「ただいまー」
「ちょ!まだ心の準備が…」
「おかえりー。いらっしゃい、紅葉くんでよろしいのかしら?」
ちょっと!まだ心の準備できてないんだけど!
愛海はお構いなしに暮林家の玄関を開けた。
奥から現れたのは綺麗な女性。
なんとなく愛海と似ている。
「は、初めまして。愛海さんとお付き合いさせていただおります、竹科 紅葉と申します。本日は休日のところ、お時間頂戴し、ありがとうございます」
「あらあら。ご丁寧にありがとうございます。愛海の母の冬子です」
「紅葉」
「あっ…。こちらつまらない物ですが」
「ご丁寧にありがとう。さ、上がって。お父さん待ってるわよ」
お土産をお義母さんにお渡しし、靴を脱いでお義父さんが待つリビングへ…。
事前に愛海から聞いてるけど…。
大輝さんに似てるって言ってたけど…。
大輝さんと似てるって体がっ!?
お義父さんもマッスルなの!?
暮林家はマッスル一族なのか!?
「失礼します」
「あなた~、紅葉くんよ」
「いらっしゃい。歓迎するよ、紅葉くん」
………。
はっ!?
おいおい…。
愛海さんや、嘘つかないでくれますかね。
ニューヨーク市警の警部や娘残して地球守った俳優そっくりやんけ…。
どこが大輝さんに似てるんだよ!
ここハリウッドだったっけ…?
「初めまして、竹科 紅葉と申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「愛海の父の正俊だ。まぁ、座りたまえ」
「失礼します」
正面にお義父さん。
右側には大輝さん。
左側には弟さんと思われる男性が座っている。
お義母さんと愛海はリビングにはいらず、外から見守っている。
「愛海さんと結婚を前提にお付き合いさせていただおります。つきまして、同棲をお許しいただけないでしょうか」
「…ほう」
「「………」」
まどろっこしいのは止めだ。
搦め手無しの本丸狙いだ。
「そうかそうか…」
「………」
「紅葉くん。キミは愛海がまたストーカー被害にあったらどうする?」
「え…」
「判断が遅い!」
お義父さんが目を開いて俺に声をあげる。
判断が遅いって…。
「キミがすぐに答えれなかったのは、覚悟が甘いからだ」
「そのようなことは…」
「さぁ、どうするのかね?」
「守ります。僕が愛海さんを守ります」
「酒に倒れるキミが?」
くっ…。
簡単には認めてくれないか。
「父さん。紅葉くんが困っている。茶番はそこまでだ」
「そうだよ親父~。昨日話し合って認めてるじゃん。お袋の決定に逆らうの?」
「うぐ…」
どういうこと?
もう決まっている?
「ゴホン…。紅葉くん、愛海との同棲を認めてもいい」
「ありが――」
「ただし、勝てたらの話だがね」
どういうこと?
勝つ?何か勝負か…?
もしかして!大輝さんの言ってたアレか!?
「ツモ。タンヤオドラ2…2000/1000だ」
「相変わらずダマが好きな父さんだ」
「まだ始まったばっかりじゃんかよー」
俺は今…お義父さんたちと麻雀を打っている。
何を言っているかわからないと思うが、麻雀を打っている。
大輝さんと愛海から事前に聞いていた。
お義父さんは麻雀が好きだから、勝負を挑まれると。
俺も付き合いで打つこともあるから、麻雀は打てる。
だけど、同棲のお願いにきて麻雀って…。
しかも家に自動卓があるんかい…。
お義父さんが、同棲を認める方法は一つだけ。
お義父さんたちを抑え、勝利すること。
「さぁ、紅葉くん。愛海との同棲を認めてほしければ勝つんだな」
「いいでしょう。僕にも勝たなければならない理由がありますので」
お義父さん…。
あなたを下し、愛海との同棲を認めてもらいますよ!




