とある男女のお家デート①
約束の金曜日。
俺は絶対残業させるじゃねーぞ、とオーラを出して仕事を処理していた。
部内の人間も感じ取ったのか、いつものように質問されることもほとんどなかった。
せっかくの暮林さんとの飲みを邪魔されるわけにはいかない!
俺の邪魔をしようものならどうしてくれようか!
今の俺は無敵だ!
はっはっはっは!
あ、この処理はこっちですね。
リス子!これよろしく。
暮林さんが指定した店は自宅の近場だった。
連絡すると、待ってると返信があった。
また遅刻か。
急がないと。
「飲むのでは?」
「飲むよ。竹ちゃん家でね」
「え!?」
「今日は竹ちゃん家で宅飲みしよ」
宅飲みだと…。
え、泊まるってのは聞いてたけど、最初から家なのか。
ま、まぁ、前もって掃除はしてあるし大丈夫だ…。
「行こっか」
「持ちますよ」
「やっさしー、よ、イケメン」
「褒めるなよ」
「前言撤回」
テイクアウトした料理を暮林さんからもらう。
その後、ドラッグストアでお酒と化粧品などを購入し、自宅へと向かう。
化粧品?
暮林さん持ってき忘れたのかな。
仕事終わりに暮林さんと買物デート。
夫婦みたいでいいな。
「お邪魔します」
「いらっしゃいませ。狭い部屋ですが」
「竹ちゃん」
「はい?」
「ん」
「へっ」
暮林さんにキスされた。
玄関でキスされると思ってなかった。
柔らかかったなぁ…じゃなくて!
暮林さん酔ってるのかな…?
でも酒の味はしなかったし…
これが彼氏(仮)の力なのか!!?
「部屋行こ」
「そ、そうですね」
「わっ!1LDKじゃん」
「ですです。といっても寝室はベットしか置けない広さですけどね」
「さすが大企業は違うねー」
暮林さんからコート受取る。
鞄はここでいいかな。
うん。昨日掃除したから綺麗だ。
見られるとマズイものも隠したから問題なしだ。
「コップは大きい方がいいですか?」
「竹ちゃんストップ。飲む前にちょっと…」
「どうしました?準備は僕はやりますので、ソファーに座っててくださいな」
「そうじゃないの…」
「あー、お手洗いですか。トイレはこっちに―――」
「飲む前にお風呂入ってもいい?」
ナンデスト?
飲む前に風呂?
おかえりなさい。お風呂?それともご飯?ですかー!?
もしかして、先週のこと気にしてるのかな?
襲い襲われ…アレの件で今回も襲われると思ってるのか…。
ぜ、前回は流されたが今回は大丈夫だ!
こ、今回は………。
煩悩退散!
「戻りました」
「……おかえり」
風呂から戻ると、暮林さんはソファーに体操座りで俯いていた。
自分が入浴する前と服装が変わっている。
なんというか…部屋着だな。
Tシャツに短パン。
髪の毛も団子にしてる。
「着替えたんですね。部屋着ですか?」
「…うん」
「元気ないようですが…」
「…笑っていいよ」
「へ?」
暮林さんが沈んでいる理由がわかった。
カップル(仮)だが、自分のことを知ってもらいたいらしい。
こんな干物女だけどいいの?と言われるが、その恰好エロいので個人的にOKです。
「さ、飲みましょう」
「うん」
宅飲みの準備をし、暮林さんの横に座る。。
二人掛けのソファーのため、暮林さんとの距離が近い。
二人掛けのソファーを購入した過去の自分よくやった!
「らしくないですよ。飲んでいつもの暮林さんに戻りましょ」
「うん……そうだね。ごめんね、竹ちゃん」
「彼氏ですから」
「仮だけどね」
最初は固かった暮林さんも、徐々にいつもの暮林さんに戻ってきた。
料理も食べ終え、ツマミでチビチビと、まったりしている時間だ。
「暮林さん、次何にします?」
「あのさ」
「はい」
「私たち付き合ってるわけじゃん。それなのに暮林さんって、他人行儀に聞こえて嫌なんだよね。私も竹ちゃんじゃなくて名前で呼びたい」
「よかですよ愛海さん」
「愛海でいいよ、紅葉」
名前で呼ばれるっていいな…。
特別になったって感じがして好きだ。
…でもね愛海さん。
そうじゃないんだよ!
「のー!わんもあ!」
「へ?」
「のっと紅葉!秋のこうようじゃなくて平坦にこーよーが正解です」
「そうなの?」
「YES!わんもあ!」
「こ、こーよー……」
「YEAH!that's right!」
戸惑う愛海さん可愛い。




