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その8 こんな水着回があってたまりますか


 脱出してきたタンポポの話はこうだった。


 タンポポたちメンズメンバーが連れて行かれたのは村の一番大きな建物で、そこにゴブリンの族長がいたらしい。


 そしてサムライは族長に、マンクはその息子に気に入られたらしく、マンクなどずっと横に置かれてお酒のお酌とかさせられていたようだ。


 族長はサムライぐらいの大きさがあり、なんとか愛だといって相撲を取って親睦を深めていたらしいのだ。頭が痛くなる内容である。

 タンポポはというと。


「身体の大きい族長の右腕とかいうやつに、ずっと左腕でお尻を触られてたんだもん」


 これまたゴブリン部隊の幹部に気に入られていたようである。


「変な要求してくるんだよ? オッサンゴブリンの膝の上に座るとかありえないんだもん、オッサンのゴブリンだよ、オッサンだよ?」

「そこまでオッサンに拘りますか」


 若いゴブリンだったらいいのかとつっこみを入れそうになるが堪えた、肝心のカレンの話がまだなのだ。


「もちろん、イケメンのゴブリンだったらやぶさかではないんだもん」


 せっかくつっこむのを堪えたのに、そんな説明は期待していないんですよ。


「で、カレンはどうなったんです。酷い目に遭ってないといいんですけど」


「ですじゃの人によると」

「村長さんもいたんですか」


「あいつ武器庫に侵入しようとして、見張りの衛兵は一人倒したんだけど、中に入ってそこに待機してた十人の兵士に取り押さえられたって。現行犯だって」


 さすが軍隊は抜かりが無さすぎだ、カレンに気付かれないように気配を消すとか相手を甘く見すぎていた。

 そういえばカレンは、周りがゴブリンだらけで気配がわからないって言ってたっけ。


「それでどうなったんです、まさか怪我とかしてないですよね?」


「そのまま私たちや族長がいる所に連行されて来てね。他のゴブリンたちはカレンに一切興味が無い感じだったけど、身体の大きいゴブリン参謀長がゴブリンの中では変人らしくて、そいつの横に置かれてずっと頭を撫でられてたよ」


 カ、カレン――


「変人てのは変かな、変ゴブリンだね」


 そんな事はどうでもいいんです。


「カレンは変な事されてないんですよね?」


「ずっと不服そうにふくれてたんだけど、ステーキのお肉が運ばれて来てあいつモリモリ食べてた。その横でゴブリン参謀長が優しく頭撫でててさ、それを見て私が指を咥えてたら、私にもステーキが運ばれて来てすごく美味しかったんだもん。食べ終わったらオッサンが寝ちゃって、中身の私がここに来た」


 今度はボクが指を咥える番だった、ステーキ……


 とにかくカレンが酷い目に遭ってなくて良かった。むしろVIP待遇といえる。

 さすが無類の女好きというだけあって女の子には優しい連中なのだ。


 これでカレンが逆さ吊りにされてたとでも聞いてたら、ボクは武装解除から免れていた『木の棒』を握り締めて突入していたに違いない。


 そしてステーキを食べていたに違いないのだ。


 ……


 よし、今から行くか、ボクは『木の棒』を握り締めて立ち上がる。


「今から行っても炊事ゴブリンが寝ちゃったからステーキは出ないかも」

「さて、作戦を練りましょう」


 ボクは座りなおした。


「それにしてもみのりん、水着回ってホラーだったんだね。TVで見た時はもっとキラキラしてるもんだと思ってたんだもん」


 こんな水着回があってたまりますか。みんなチャンネル変えるわ。


 とにかくまずは計画の中止を皆に伝えなければならない、伝言ゲームの再開である。

 一回りして伝言が帰ってきた。


「村長の入れ歯を隠して目の前でステーキを食べる、了解しました」


 またもや失敗だ。


 一体全体、どうしてこう間違った情報が伝わるのか追跡してみる必要がある。


 ボクは頑張って女の人に近づいて、伝言がどう変化するのか調査してみようと思う。

 村長さんの奥方が一人目の女の人に伝言する。伝言ゲームスタートだ。


「村長の頭の毛を全部毟る」


 スタート地点で躓いていたようだ。


「なにをやってるんですか奥さん」


「ほっほっほ、老人のおちゃめなギャグじゃ。当然じゃろ、わしはあのジジイが、あんたやあんたの友達のお尻を触るところを見ておるんじゃからな。あいつは抹殺じゃ」


 村長さん、犯罪現場を目撃されてましたよ、奥さんに。


「とにかく、村長さんの処刑はゴブリン問題が決着してからにしてください」


 やり直した伝言ゲームにより、イッパツで計画中止が全員に伝わった。

 次は隣の集会所にいるミーシアに伝えないといけない。


「あの子なら隣の建物の入り口で気絶してたかな」

「はい?」


「私最初に向こうに行ったんだもん、覗いたら地獄絵図だったから入らなかったんだけど、覗いた場所でノビてた」


「もう、手伝ってくださいタンポポ!」


 二人で隣の建物に行くと、なるほど、ミーシアは入る前に入り口で力尽きたようだ。

 がんばって入ろうとしたけどダメだったか。ミーシアお疲れ。


 ボクはミーシアに静かに敬礼をした。

 タンポポは隣で合掌をしている、死体ではなく気絶体なので合掌はやめてあげて下さい。


 タンポポと二人で協力して、地獄から天国の集会所に運び込んだ。

 上半身をタンポポ、ボクが下半身担当だけど、ミーシアはどこからどうみても完璧な女の子なのでさすがにドキドキしてしまう。


「こうやって人を運ぶのは初めてなんだもん、気絶した子を運ぶって大変なんだね」


「この前ボクは同じように気絶した酔っ払いを、カレンと運んだ事がありますけどね」


「へえ、迷惑な酔っ払いもいたもんだね」


 あなたです、もう一度言いますよ、あなたです。


 ミーシアを清潔な床に寝かせてタオルケットをかけてやる。


「可哀想にのう、あの村長ジジイにお尻を触られた事がこんなにショックじゃったなんて」

「キャーなんですって! 奥さんそれは本当なの?」


「村長酷い! ありえない!」

「こんな可愛い女の子に何してんのよあの爺さん。みんなでカタキを討ってあげるわよ」


「村の女衆! 団結の時よ!」

「えいえいおー!」


 ああああ、村長さん、すみません、ボクにはもうどうする事もできません。

 後で立派に村を救った英雄として散ってください。


 ボクにはもう静かに合掌することしかできないのだ。


 一匹のゴブリンがやって来てミーシアのタオルケットにまた『ゴブゴブ』文句を言って出て行った。


 水着を隠すなと言っていたのだろう。

 タオルケットを剥ぎ取るような真似をしないのは、やはり彼らが女の子を大事にしている証しなんだろうか。


 ボクは一つの計画を思いついた。

 マジメな顔をして向かい合ったボクに、目の前のセーラー服の少女は首を傾げる。無駄に可愛いのがなんだかむかつく。


「タンポポにお願いがあります」

「よしわかった」


「まだ何も言ってないんですけど。何がわかったのですか、試しに言ってみてください」


「さっき食べたステーキがどのくらい美味しかったかを説明して欲しいんでしょ?」


 そんな話これっぽっちも聞きたくないです。


「噛んだ瞬間に肉汁がじゅわーっと――」

「わーわーきこえなーい」


 さてはさっき、ちょっとむかつくとか思っちゃった事への報復ですか。

 ごめんなさい、ちょっとした出来心なんです。


「お口の中に広がる幸せの味が――」


「たーすーけーてー」


 次回 「ボク立案の村人脱出作戦」


 みのりん、とうとう主人公みたいに知恵を絞る

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