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それ以来、毎日が楽しくなった。
日中はいつもどおり、普通の猫としてクロロは過ごしている。
チェリルは嬉々として話しかけるけれど、それはいつものことなのでよく行動を共にするオフィリアには生ぬるい目で見られているのも変わらない。
部屋に戻ると、クロロは喋ってくれるからチェリルはにこにことその日あったことを話すのだ。
離れている時間なんてほぼないのに。
それを「いいから落ち着きやがれ」とたしなめはするけれど拒絶はしないクロロを、優しいと思ったし今まで以上に近くに感じられて嬉しいと思った。
「そういやさ」
「ああ?」
チェリルが明日の準備をしながら話しかけると、クロロがそれを眺めながら返事を返した。
やっぱりお口が悪い。
口が悪いというより柄が悪いかもしれない。
「クロロさんご飯は今までの物で満足してる?」
「何だいきなり」
「いや、今日ご飯食べてて思ったけど、いつもササミ茹でたのとか魚を焼いてほぐしたのとかでしょ。クロロさん人間なら物足りなくないかなって」
そうなのだ。
食堂の人に頼んでクロロ用の食事を用意してもらっているけれど、クロロが人間ならチェリル達が食べているものと同じがいいのではと思ったのだ。
「別にかまわねぇよ。そもそも興味ねぇし、食べられりゃあ問題ねえ」
「何それ!?」
聞き捨てならない。
食に興味がないとは、どういうことだ。
これは由々しき事態ではないのか。
チェリルの大事な家族が栄養も味覚もおろそかにしている。
がばりとチェリルはクロロの脇の下に手を入れると、目線を合わせるように持ち上げた。
「おい」
「駄目だよクロロさん! おいしいものを食べるのは幸せにつながるし、何より栄養をバランスよく食べないと」
「ちょっまて、揺らすな」
がっくがっくとクロロを持っている手を勢いよく動かすチェリルに、クロロが目を回しながら訴える。
「でも」
「いいから一度下ろしやがれ!」
ぴしゃりと窘められて、チェリルはむうと唇を尖らせながらクロロを床に下ろした。
その顔は完全に不満そうだけれど、クロロはクロロで酷い目にあったと言わんばかりの顔をしている。
表情豊かな猫だとは思っていたけれど、何のことはない。
中身が人間なら当然だと、クロロの正体を知ってチェリルは納得したものだ。
「別に不満はねーんだから、いいだろーが」
「でも……食堂の人に同じもの出してって頼むよ?」
「どう説明するつもりだ。今のままでいい」
「ならいいけど」
本当にいいのだろうかと、まだ不満げなチェリルにクロロは鼻で笑って見せた。
「そもそもお前に食べさせられた薬入りのパン粥に比べたら何でもマシだ」
「んなっ」
思わぬ攻撃に、チェリルは声を詰まらせた。
そしてキッと眉を上げる。
「あれは、怪我人用だから味は仕方ないの」
「お前もえぐみが凄いって、むせてたもんな」
「あれでもだいぶ味は改善したのよ」
「あれでか……」
味を思い出したのか、クロロがげんなりとしたように半眼になった。
「お前の作る薬はよく出来てるが味をどうにかしろ」
よほど嫌だったらしい。
その様子に、チェリルは可能かなあと思いながら。
「一応頑張ってみる」
と頷いておいた。




