永久の狂花と、死にやがりの俺
「なぁ、樹。」
それは、俺の名前だったもの。
「なんでお前はさ、そんなに物事頑張れるんだ?」
俺の親友が、不思議な質問をした夏の日のこと。
確か俺は、返答に迷った。
「急に聞かれても困るわ…」
「特に意識したことなんてねぇし」
本当だ。特別に意識したことも無い。
親友は、溶けかけの棒アイスを咥えながらつまらなそうに口を尖らせた。
「まぁ意識はしてねぇだろうけどさ」
「絶対なんか理由はあんだろ〜人間なんだからよ!」
肘でがしがしと、これをつついてくる。
「あのなぁ…」
親友を横目で見ながら、俺は考える。
ふわっとだが、理由が分かった気がする。
何となくは、理由にならないだろうか?
とも思ったが、気の毒なので真剣に答えることにした。
「全部"やりたいこと"だからかな」
「なんだよそれ〜げっ、勉強もかよ!?」
親友は、数学が大嫌いでよく俺が教えていた。
「それも俺がやりたいことなんだよ、悪いな」
──嗚呼。昔の俺は、"やりたいこと"に一直線だった。
それなのに、たった1つの病人という肩書きが。
俺の"やりたいこと"を、引き離す。
時は巡って、また夏がやってくる。
見覚えがある天井。病室のだ。
「悪いな、親友さんよぉ…」
「なんでだよ……なんで、お前なんだよ!」
冷たい雫が、俺の肌にこぼれ落ちてくる。何度も。
「冷たてぇよ、馬鹿野郎…」
「俺もう長くねぇんだから…最後くらい笑ってろよ…」
泣きじゃくって、ぐっちゃぐちゃな顔面の親友。
正直いつもだったら、笑うネタになってたんだろうな。
意識が引き剥がされていく最中、親友が口を開けた。
「お前さ!!結局はさ!!」
──「やる方を選ぶよな!!」
「何回何十回何千回!」
「死にがっても、"やりたいこと"に全力なんだろ!」
「だったらさ…俺とまた会うことも、"やりたいこと"に
入れて置いてくれよ!」
「信じて待ってるからよ。」
親友の笑える顔と、その言葉が今までもこれからも。
背中を押してくれる。
小さい両手で。頬を叩いた。
──待ってろ、親友。
お前に会って、やりたいこと全部やってやる。
「やっぱり君を選んで正解だったね」
キセキが、肩へ乗ってきた。俺の顔を覗く。
「昔の君に戻ってくれて嬉しいよ」
「だからキセキは、君と"神器契約"がしたい。」
和かな顔で、猫らしき尻尾を振っている。
「ぁ〜…よく分かんねぇけど今は」
「そうするしかないよなぁ!」
「乗り気で助かるよ、さあ」
──「キセキを使ってよ」
尻尾を、俺の右手首に巻き付けてはリングに。
黒猫は、1つの本に変わった。
前世の"やりたいことリスト"に似ている。
中身は空白のページがいくつも。
銀のリングは、キセキの瞳と同じ魔石が嵌められていた。
右腕を空へ、掲げる。
リングが脈を打つ。
「ほんとに何か分からんけど!!」
「行くぞキセキ!!」
リングが、光を発する。眩しいと感じる程に。
変身機能ではなかったみたいで、ちょっと期待外れだ。
恐らく、技でも出せるのだろうか?
女帝の瞳が、俺だけを捉えた。
空が止まった気がした。
フロラグニスは騎士に構うのをやめて、俺に一直線に
突っ込んでくる。
──あれ、これ…3秒持たなくね?
技を出すとしても、ギリギリOUTなのが分かる。
3秒持たなければ、ピエリの秘策も通用しない。
──アレ????
情けない野郎でごめん、親友。
「俺はまだ死にたくねぇぇぇぇ!!!」
女帝に対する、俺の咆哮である。
「下がってください。」
咆哮を静かに突き刺したのは、東からの一閃であった。




