死にやがりの俺、奇跡を起こして
──これは、100の願いを叶えた少女の人生の記録である。
暑い日差しが主張される、夏のある日。
俺は、小鳥遊 樹。
後に”ルイナ”と呼ばれる。
そんな俺は─病室のベットの上。
別に慣れっこだ。誰かを羨む真似も、気力ももうない。
少し前に思い立って、俺みたいなヤツが出てくる小説には、やりたいことリストを作っていたから、作ってみたはいいのだが。
「なるほどな、で...この量はどうなってんだよ!?」
見舞いに来てくれた親友に酷く驚かれた。それも必然、思いつく限りで書いたはずなのだが、気づいた時には100個書いていたのだ。
「正直俺も、そんな書けるとは思ってなかったんだよ。」
「まぁ、いいんじゃね?これからやってけばいいしな!」
親友は、太陽のように眩しい笑顔をする。
俺なんて幽霊の真似事のみたいな顔しか出来ない。
本当は、親友が羨ましかったかもしれない。
──結論から言うと、間もなく俺は死にやがった。
容態が急変した。抗う術もない不治の病。
絶望的な不運、としか今の俺には言えない。
俺の最後に見たのは、雨に濡れる親友の顔。
最後くらい、弱音を吐いたっていいと思った。
俺は まだ 、
死にたくない、死にたくない、死にたくない!!
やりたいことリスト一つも叶わず。
終われない、終われない、終われない!!
何が、神様だ?何が、希望だ?
「また、やり直せばいいじゃないか。」
聞き覚えがない声だった。世間的に言えば、萌え声。
きゅるきゅるのマスコットキャラクターの声優さんが、
近くにいるんじゃないかと錯覚する程に。
目を閉じて、よく聞こうとしたけれど。
──先に俺の人生が、ここで終わったんだ。
はずだった。
異世界転生しない限りは。
「おはよう、いい夢は見れたかな?」
目を開けた先には...黒い、変な奴がいた。
俺は、目を白黒させながら5度見くらいしてしまった。
「え?あ?へ?ふ?ん??」
──「誰だお前!!!!!」
咄嗟に立ち上がって、距離を置いた。心臓がうるさい程に、鼓動している。黒猫は、不思議そうに見つめてきた。
何かを思い出したのか、声をあげる。
「人間の間では、自己紹介が基本だったね。」
「すっかり忘れていたよ、ごめんね?」
「いやそう言う意味じゃねーよ!」
死ぬ前に、「魔法少女にならないか?」とか言ってくるマスコットアニメを見ていたのだ。
ビジュアルから、そう容易に想像してしまう。
それでも、黒猫はお構いなしに。
「ボクはキセキ。君の生きる渇望で、長い眠りから復活を果たしたんだ。」
「君の言うところの、やりたいことリストさ。」
悪寒が走り、声が詰まる。声が、出ない。
そうだ、何も出来ずに死んだ。
死にやがりの、俺。
「正直キセキは、君に感謝してるんだ。」
「だからこうやって、チャンスをあげた。」
「もう一度、やり直さないかい?」
その言葉で、我に返った。
柔らかく香る花の数々、肌で感じるそよ風。
花園の上に、俺はいる。
もう狭い病室の上じゃない。
体が尋常じゃない程、軽い。
どこまでだって、飛んで行けそうだった。
「...俺は、やり直したい。」
自然と、口に言葉に出ていた。もし、やり直せたなら?
もし、それが異世界だったら。
こんなのロマンしか、ないだろう。
「いいね、その選択。”逃げない選択”。」
「キセキは、君の案内人になるよ。」
黒猫は両目を閉じ、静かに笑う。
まるでこうなることが分かってた口ぶりだ。
「その前に、君の名前も教えてよ。」
「呼び名がないと、キセキ困るしさ。」
「俺はイツキ...」
「それは君の前世の名前、”やり直す”でしょ?」
俺の唯一の呼び名に、ダメ出しを喰らった。
キセキが言うことにも一理あるのだが、新しい名前をいきなり考えろというのも中々難しい。
──ネーミングセンスにおいては絶望的だった。
人に名付けできる両親は、俺にとっては尊敬対象。
小さな頃に飼っていたカブトムシに
ベイクドモチョチョ2世と名付けようとしたことがある。
全員に却下された苦い思い出だ。
キセキは、退屈そうに毛繕いしている。
どうにかいい名前はないだろうかと頭をフル活用する。
「こーゆーのは、先駆者から習えってやつだな」
ゲーム、アニメなどから取るのが1番後悔しないと結論づけた。俺が、最後に遊んだゲーム。
──「俺の名前は、”ルイナ”だ。」
「ルイナ、新たな旅路にピッタリだね!」
答えをきいたキセキは、ゆっくりと先導しながら歩き出した。
慌ててルイナも追いかけるが、歩くのも久々な故に足元がおぼついてしまう。幸いなことに靴は履いていて。
地面を踏み込む感覚が、こうなんとも言えないのだ。
「ちなみに、魔法少女になったりだとかは..?」
「魔法少女にはならないよ??」
即答、少し被害妄想が過ぎたと反省した瞬間。
──「てか君もう、少女じゃないか。」
異世界にいつも俺は、驚かされる。
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チートを駆使し、勇者となるもよし。
地道に成り上がり、名声を浴びるのもまた趣があると思います。
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