第二話 露木霊は霊が見える
「いや、心霊研ってなんの活動するんだ?」
そんな声が、三棟三階の化学準備室に広がった。
「えっと・・・」
なぜか部長の露木の目が泳いでいる。
「わからないんです」
「―は?」
「わからないってなると、どう活動すればいいんだ」
「ん~どうしましょうか」
どうしましょうかなんて聞かれても困る。自分たち想像してみるのもいいだろうが、部室を探して、過去の活動を探ってみるほうが早いだろう。
「一旦、部室を探してみないか?活動記録なんかが見つかるかもしれない」
「ええ、そうしましょう。私はそこの資料の山を探してみます。」
そう言うと、露木はおびただしい量の資料を指さした。自分から大変な場所を探すなんて、なんとも殊勝なやつだ。俺はてきとうな棚でも探してみる。特に大したものはなく、何に使っているのかわからない棚には、それっぽいものはなかった。
「ちょっと!蓮太郎さん!」
露木が何か見つけたようだ。
「何か見つけたのか?」
「はい。これ見てください」
露木の手には『心霊研究部活動報告書 第一号』と書かれた冊子があった。厚さからして百ページもないだろう。かなり手の込んだ表紙だ。かつての部員たちだろう三人組が、トンネルを進んでいく絵が描かれている。これで、なんの活動をしていたのかが、明らかになるであろう。
「露木、中を見てみよう」
「わかりました」
露木がページをめくっていくと。
〈我々心霊研の活動は数々の心霊スポットと言われる場所に取材し、そこに現れる霊について調べることである。〉
とても簡潔に書かれていた。霊についての何かなのは予想していたが、まさか現地取材だとは思っていなかった。かなり面倒くさそうだ。過去の先輩が行った場所には、東北の山の廃村や九州の倒産した遊園地、神社など、なかなか遠くまで向かっていたらしい。現地まで行き、調べ上げていた。最後にはメモがあった。
〈現地に行ったなんて、教師にばれたら大変なことになるので、全部本から調べたことにしています。ゼッタイばれないようにしてくばさいね!〉
本当にこれをやるのか?
「なあ露木、本当にこんなことやるのか?」
「もちろんです!」
即答だった。
「蓮太郎さんはいいんですか?」
「なにが?」
「ただ惰性で過ぎてく学校生活に、こんなに楽しそうなものが舞い降りてきたんですよ!」
確かにここ一ヶ月なんの楽しみもなく、授業も何個かサボってしまっている。しかし、こんなに遠くに行っていたら、それは旅行だ。旅費だって馬鹿にならない。
「旅費のこと気にされてるんですか?」
なんだ?見透かされているのか!?
「大丈夫です。旅費ならお任せください!」
「あるお仕事をしていて、それなりに貯金がありますから。」
「ある仕事ってなんだ?」
「除霊の仕事です」
露木は自信に満ちた顔で言い放った。
「わたし幽霊が見えるので!」