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拝啓、天国のお母さん。貴女の息子は娘になりました。

 ぴちょんっ…ぴちょんっ…


 冷たい水滴が頬に当たり俺は目を覚ます。電車に揺られうたた寝をしてしまったようだ。気づけば辺りは真っ暗。


「すみませんー、誰かいませんかー?」


 …返事はない。ただ可愛らしい女の子の声が響く。


 …


 …女の子の声?


「あーーーっ」

 取り敢えず声を出してみる。女の子声がする。俺の喉から出ている。


 …


 …言っとくが俺の声ではない。俺はこんなソプラノヴォイスではない、俺の声は男らしく凛々しいバスヴォイスだ。


 …すみません、見栄張りました。ただの野太い声です。


 …


 真っ暗闇の中独りぼっち、むなしい。


 …


 バカなことを考えていたら少しずつ頭がクリアになってくる。

 おかしい。俺は電車の中で寝落ちしたはずだ。(したか知らんが) 寝転がっていた体の下は妙にでこぼこする。

 声が違うのは大問題な気もするが取り敢えず辺りを窺う。


能力(スキル)『暗視 Lv:1』を取得しました。》


 突然、頭の中に声が響き真っ暗だった世界がうすぼんやりと姿を現す。


 …岩、岩、岩。


 洞窟だ。どう見ても洞窟だ。少なくとも電車の車内ではない。こんなにも大自然溢れかえる内装は未だかつて見たことがない。


 …洞窟。取り敢えず現在の環境はわかった。よくわからんが何処か知らんが今俺は洞窟の中にいる。OK、理解したぜ。まぁ、新たな謎はかなり増えたがな。

 では次の疑問を解決するとしよう。ズバリ、女の子の声がする。


 と、言うわけで自分の身体をじっと見る。細くスラッとした手足、薄い胸板、腰まである長い髪。


《能力『観察 Lv:1』を取得しました。》


 再び頭の中に声が響く。


 いやいやいやいや、待ってくれ。ちょ~っと待ってくれ。なーにそんなに手間は取らせないさ。つうかさっきからなんだよこの頭に響く声は! 『能力なんちゃらを取得しました。』とか、ワケわかんないよ。…っ、そう! 無い! 無いんだよ! 何がないって? そりゃMY SONが無いんだよ‼


 OK、落ち着こう。こう言うときは立ち上がって大きく深呼吸だ。にしてもこの身体大分小さいな、視点の高さが滅茶苦茶低い。元が170ちょいだったけどこの高さなら130ちょいかくらいか? 140は無さげだな。


「ひっひっふぅー。ひっひっふぅー。」


 OK、落ち着いた。大分錯乱してる気がするが気のせいだ。きっとそうだ、そうに違いない。それじゃあ再確認だ。

 細くスラッとした手足、よし!

 薄い胸板、よし!

 腰まである長い髪、よし!

 存在しないMY SON! よし‼


 …なんもよくねぇよ‼


 えっ? なに俺? 今幼女やってんの? って幼女やってるって語感がわりぃよ、片仮名にしたらもう最悪だよ。そうだ『幼女になってる』がいいな、そうしよう。うん。


 …どうでもいいよ‼ 幼女やってようが幼女殺ってようが幼女ヤってようが!


 いや、まずいな漢字も片仮名も字面が悪すぎる。『幼女になった』よし。これで今後は統一しよう。


 …


 少し冷静になってきた。なれてないけどなってきた。そういうことにしよう、つうかしたい。

 拝啓、天国のお母さん。貴女の息子は娘になりました。生前「一人くらい女の子も欲しかった」と言っていましたね。俺も弟1号要らないから真面目で可愛い妹が欲しかったです。(中略)これからは貴女の娘です。どうか天国から見守って下さい。敬具。


 またしょうもないこと考えてたら俺、気付いちゃった、気付きたくない事気付いちゃった。

 何って? 何故MY SONがないか即わかったかだよ。


 …今俺、全裸だ。


 洞窟、全裸、幼女。(←現在の俺)


 さて、紳士淑女の皆々様。少し想像して頂きたい、貴方はうたた寝をしてしまった。学校でも職場でも場所はどこだって構わない、まぁ通勤通学の電車の中なら完璧だ。目が覚めると貴方はどことも知れない洞窟の中にいる。しかも貴方は全裸の幼女だ。…冷静でいられますか?


 …と、言うわけで現実を受け入れるのに少し時間を下さい。



 …


 ……



 

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