つかの間の日常、崩壊
あっという間に放課後ー
「ほんとに皆で行くの?」
「「「「うん」」」」
ハモる返事。
正直家に連れていくの嫌だな。女の子三人と彩樹。
「…ハァ…」
思わずため息をついてしまった。
それを見ていた彩樹が笑って言う。
「ため息つくと幸せが逃げるよ~」
「うん、お前のな」
即、返す。斜め後ろで彩樹が「俺の幸せが~」と言っているが無視。
「白離さんたち。くれぐれもおとなしく、おとなしく、見ててね」
「二度言われた…」←一ちゃん
「一が襲いかかって机壊すからだよ」←飛鳥ちゃん
「過ぎたことはしょうがないからおとなしくしててね、二人とも」
見事に二人の手綱を操っている弥生ちゃん。
ついでに弥生ちゃんにこの馬鹿(彩樹)の面倒も見てほしいもんだ。
「嫌ですよ」
おお、口に出していたらしく突っ込まれた。
「彩樹君の手綱は十六夜君でないと重いし、引っ張られちゃいます」
ふふふと穏やかに恐ろしいことを言われた。
僕は彩樹の手綱なんか握りたくない。
まあそんなこんなしている内に月夜の家に着いた。
「おおー相変わらず立派な家だね」
彩樹は以前勝手に家まで着いてきたことがあり、かーさんとも顔見知りだ。
「三階建て…」
上を見上げて言う一ちゃん。それを見て何がおかしいのか、けらけら笑っている飛鳥ちゃん。
「お金持ちなんですの?」
弥生ちゃんの問いに頷く。
「かーさんがいろいろしているからね」
「何をかは聞かない方がいいよ」
彩樹はまともなことを言う。
「僕も聞かない方がいいと思うよ」
「「「……」」」
三人の沈黙を破ったのは天月だった。
「おかえりなさ~い♡」
何処の天使が語尾にハートつけて同じ顔の人間に笑顔で走ってくるんだ。
「うわっ月夜が二人っ!」
やっぱり彩樹には見えるらしい。
「わわわっ、私の事が見える人間がっ」
「二人とも落ち着け」
白離さんたちには見えていないらしい。ノーリアクションだ。
「どーした?天月」
三階から悪夜が羽をパタパタしながら降りてきた。
それを見た彩樹は悪夜が降りてきた途端悪夜の羽を掴む。
「いってえ!え?この人間俺らのこと見えてんのっ」
涙目になって悪夜は天月を見る。天月は必死に首を縦に振っている。
それをがん無視して彩樹は悪夜の羽をいじくりまわす。
「わあ~すごーい。月夜とおんなじ顔しているのに羽が生えている~」
ワシャワシャと羽の根元に指を立てる。
「うわっ俺、根元弱ーのにっ。ちょっ、離してっ」
顔を真っ赤にして嫌がる悪夜を見て彩樹は興奮したらしく抱きつく。
「かっわいい~。キスしてもいい?」
「「駄目」」「だ!」「です!」
天月と悪夜を無視。
彩樹は月夜を見る。
「…だめに決まってんだろ」
「ショボーン」
「あほか。さっさと悪夜を離せ」
「ほーい」
ぱっと彩樹が手を離した瞬間に悪夜が月夜の背後に隠れる。
「月夜月夜、あいつ、何もん!?」
目じりに涙をいっぱいためて見上げてくる。
その頭をポンポンと撫でて言う。
「俺の周りをうろつく変態だ」
チッと舌打ちしながら。
「あ、俺って言った」
彩樹が突っ込む。
「うるさい。そんなことはどうでもいい。さっさとみんな家に上がって。近所迷惑」
よく事情が分かってない顔で白離姉妹は家に上がった