閑話 魔王との出会い
全てが終わった後のある日の話。
朝。いつも通りに起床するとベットの隣が不自然に温かい。
(全く。悪夜と天月には入ってくるなって言ってるのに…)
「こら!!入ってくるなと言ってるでしょう」
バサァっと掛け布団を剥ぐと出てきたのは小さい女の子だった。
「え、…え!?誰これ?」
「ん…何?ん~」
寒かったのか、女の子が起きた。その姿は健全な男子高校生には刺激的すぎる浴衣(着くずれしている)もので、そのまま伸びをしている。
「あれ?なんでこんなところに来てる?」
女の子はそのまま周りを見渡して疑問を声に出した。
「それはこちらのセリフです。何故こんなところにいらっしゃるのですか、魔王」
悪夜が慌てて空から降りてきて言う。
それを見てマオウと呼ばれた女の子は微笑んだ。
「ああ、やっぱりここ、死神狩りを狩る人間の家か。驚いた」
「ちょっと待って悪夜。この子、誰?勝手に家に入れないで」
僕はこのまま無視され続けるのはごめんなので話に割り込んだ。
すると女の子がこちらを見て挨拶をする。
「初めまして。暗殺者の十六夜月夜君。私は空の魔王の薄夜、と申します」
「あ、ご丁寧にどうも…てええ!!!魔王って女の子だったの!?」
驚きだ。しかもめちゃくちゃ丁寧。
「いえ、魔王はどちらの姿にもなれます。普段は男なんですけど」
魔王の新事実、発覚。
「それよりもここにいる理由が分かった気がする…ここ、天月もいたりする?」
「その天月が天使なら、ここにいますよ?」
天月がいったい何をしたんだろうか…。
悪夜は合点がいったのか顔をひきつらせている。
「まさか……」
「そのまさかだ。天月に神が降りている」
じんって神の事か?
「でもどこに行ったのか…」
皆目見当つかない。しかし薄夜は不敵に笑った。
「分からないのなら、呼び寄せればいい」
そうしてすぅっと息を吸ってうたいだした。
低いような高いような不思議な声だ。歌っているのは
「『アメイジング・グレイス』神を讃える讃美歌だ…」
何故か涙が溢れそうになった。しかし…
「おお!薄夜が私を讃える声がする!!」
残念な神のせいで涙も引っ込んだ。
天月に憑いた神を薄夜が容赦なく蹴り倒した。
「おい、神。私を元の場所に戻せ。あと、用もないのに降臨するな」
「え――」
「返事ははい、しか認めん」
「はい」
すごく嫌そうな顔をして頷く神。それに満足したのか薄夜は笑ってこちらを見る。
「じゃあ、これからも三人で仲良く暗殺するんだよ」
「はい…ってい―」
「じゃあね」
嫌だと言う前に目の前から消えてしまった。
やっぱり、僕の暗殺は続くらしい……。




