↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の残響  作者: 蒼凪 悠
寒脈の街編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/90

第九十一話 無双

  カアッ カアッ


 無数のカラスが月を覆い、月の光を遮る。真っ暗な空間に、炎の翼が浮かんでいた。

 全てを焼き尽くさんとする業火の翼を広げた悠真は、大きく羽ばたき宙を舞った。


「な、なんだあいつはっ!?」

「夜過神様に仇なす者にはかわりない! 姫巫女と一緒に始末してくれるわ!」


 黒ずくめの男たちは、真っ黒な外套を脱いで手印を組む。

 そして黒い霧に包み込まれた男たちは、穢人へと姿を変えた。

 霧の体に浮かぶ、白い目と大きく裂けた真っ赤な口。

 不気味に笑った六体の穢人は、悠真めがけて飛び上がった。

 天霞(あまかすみ)を鞘から抜いた悠真は、真っ赤に燃える刀身を一振りする。

 刀身から放たれた業火は、大蛇(おろち)の姿と化し、一体の穢人に食いかかった。


「グワァ…………」


 業火に食われた穢人は、黒い霧を発する前に蒸発した。

 怯んだ穢人は、地面に降りて悠真を見上げる。

 翼を羽ばたかせた悠真は、空中から一瞬で五体の穢人の間に立った。

 その姿を、首飾りを握りしめたまま春はじっと見つめる。

 

(遅いぞ……旦那様……)


 手のひらを広げた左手を真横に突き出した悠真は、ボソッと何かを呟く。

 

 ドンッ!


 手のひらから発せられた巨大な火球が、またも一瞬で穢人一体を蒸発させた。

 後ずさる穢人たち。左手を突き出したまま、悠真は動かなかった。

 穢人の背は、悠真の二倍はある大きさ。巨大な穢人は、一斉に悠真に飛びかかった。


 ブワッ


 業火の翼を羽ばたかせた悠真は、宙に飛び上がり回避する。

 そして天霞を下向きに構えて急降下し、一体の穢人の脳天に突き刺した。

 刺さった途端に燃え上がり、蒸発してしまう穢人。

 その炎は、今まで見たどの神響術よりも荒々しかった。


 三体になった穢人は、一箇所に集まり悠真を見据える。

 そして、一体が黒い霧となり、周りに聳え立つ山に消えていった。

 残りの二体も霧となり、交わっていく。

 やがて一体となった穢人は、さらに禍々しさを発した巨大なものとなった。

 依然、無言のまま穢人に向き合う悠真。

 両手を広げ、空を見上げ、雄叫びを上げる穢人。

 すると、周りの山から次々に現れたのは、獣の悪霊だった。

 山に散った一体の穢人は、山の獣に取り憑き悪霊を生み、ここへ集めたのだった。

 五十体ほどの猪や鹿などの悪霊は山から遺跡に降り、悠真に向かおうとしていた。

 そして、ヴォルテクス・レゾナの皆も遺跡に着こうとしていた。


「や、やっと追いついたぞ……」

「もう! 今日の悠真はおとなしいけど無茶苦茶にょ!」

「功! ちゃんと持っておいてね……僕、高いところはダメなんだ……」

「じゃあ無理に浮進棒(ふしんぼう)なんかに乗ってこなくても、上で待ってたらよかったんです!」

「スレア様は普通に乗ってるのにねぇ」

「なんか……いっぱいいるにょ……」


 悪霊と同じくして、遺跡に辿り着いた蒼真たちは、すぐに戦闘態勢に入った。

 ポピン、ユズハ、スレアは、遺跡の崩れた柱のような物の影に退避する。

 蒼真、功、メティラはそれぞれ武器を手に前へ進んだ。


「悠真、こっちは俺たちが仕留めてやるよっ!」

「お兄ちゃんの頑張りどころだねぇ!」

「すぐに終わらせよう」


  ――神々の残響よ 

    御身の守護のため命削らんとす我らに

    その偉大なる力を貸与たまえ


    神響術(しんきょうじゅつ) 荒御魂(あらみたま)――


 功の護符から発せられた光が、皆の体へまとわりつく。

 身体強化の神響術だ。

 次に蒼真が護符と一緒に、名刀【月翔(つきかけ)】を構えた。


  ――神々の残響よ 

    我が寒固の牙となり悪霊を封じたまえ


    神響術 氷牙(ひょうが)――


 月翔から放たれた氷の牙が、二十体ほどの悪霊に突き刺さって凍りついた。

 それが邪魔で、後ろの悪霊は前に出てこれないでいる。


「メティ、しっかり頼むよぉ」

「あぁ、任せてくれ蒼真殿」


 目を閉じたメティラは銀針セレネスを天へ向け、大きく円を描いた。その針道は蒼白い光を放ち、空中に輪が浮かぶ。

 その輪は、メティの腰の高さまで降りてきたところで、全身を包む筒となった。


「レゾナス・アーツ」


 蒼く光る筒の中に急激に集まる残響。

 やがて光の筒はメティの体に取り込まれ、その光は全身から発せられた。

 手の甲に浮かぶ月と梟の紋章。開いた目は赤く輝く。

 

  ――偉大なるセレネスよ

    我が銀針に三日月の加護を宿したまえ――


  月神の咆哮《セレノス・インベトゥス》――


 銀針セレネスから放たれる蒼白い光線の中に輝く、三日月型の刃。

 凍りついた悪霊たちを、次から次へと粉々にしていった。


「すごいにょ〜!!」

「がんばれぇ!!」

「メティラ……あの子があんなにすごいレゾナス・アーツを使えるなんて……」

「これ。応援と感心するのが、我らの仕事ではないのですよ」

「でも陽菜様、私たちはあんな技使えないにょ……」

「ふふふ、他にもすることがあるでしょ」

「にょ?」

「何をするのかしらぁ……」


 悪霊が祓われていくのを見た穢人は、たまらず黒い霧を悠真に吹き付けた。

 それを悠真は、炎の翼で吹き飛ばす。

 そしてまた一瞬で間合いを詰めた悠真は、天霞で穢人を斬りつける。

 簡単に右腕を切り落とされ、再生できない穢人。

 雄叫びをあげ、左手で悠真に殴りかかるが、当たらない。

 全ては炎の翼に弾かれて、穢人の手が蒸発していった。

 穢人の背中から飛び出た霧の槍も、天霞で弾き返し、最後は切り落とす悠真。

 

「オ……オマエハ……ナンナンダ……ナニモノナンダ……」


 穢人が言葉を発する。そのことを蒼真と陽菜は見逃さなかった。

 勝てないと感じ取ったのか、穢人は残った悪霊の方へ走り出す。


「さぁ、今です」

「気づかれないようにそおっとねぇ……」

「わかったにょ!」

「ポピン、声が大きいわ!」

「ごめんにょ、スレア……」


 石の台座から穢人が離れたのを見計らって、陽菜たちは春の救出に向かった。

 ゆっくりと近づき、気づかれることなく春にたどり着く四人。


「春! 大丈夫にょっ!?」

「…………」

「どこか痛いの? なにかされたの!?」


 ユズハが春に触れようとした時、結界に弾かれた。

 痺れる手をさすりながら、ユズハがうめく。


「いったぁい……」

「け、結界が張られているのよ」

「結界!? スレア、結界を解除できないにょ!?」

「私には何もできない……」

「ふふふ、私がいるでしょ」

「陽菜様!」


 陽菜は胸の前で複雑な手印を何度か組み替えて、光の鍵を作り出した。

 その鍵を春に目掛けて押し込む。


 パキッ……


 春に蓋を被せるかのように張られていた透明の結界にヒビが入った。

 陽菜はまた違う手印を組んで、ヒビに向かって揃えた人差し指と中指を向けた。

 揃えた指先に現れた術印がヒビに触れると、パリンッとガラスが割れるような音と共に、結界は砕け散った。


「ゴホッ! ゲホッ!」

「春!」

「春ちゃん大丈夫! 腕怪我してるじゃない! 傷薬飲みなさい!」

「ふふふ、これで安心ですね」

「みんな……ありがとう」


 メティラたちの攻撃で、悪霊も十体ほどまでになっていた。

 そこへ向かった穢人は、その悪霊までも吸収しようとしていた。


「おいおい、あいつ悪霊食おうとしてやがる!」

「構わないさ! 目標が一つになってくれた方が攻撃がしやすい!」

「お、いいよぉメティラ。月詠様の教えを忘れていないようだねぇ」

「もちろんさ蒼真殿!」

「でも……あの穢人……今までのより、賢そうだね……」

「え? どこがです? いつもの穢人がでっかいだけにしか見えないですが」

「功、さっきあの穢人、言葉を話したんだよ」

「……本当ですか!?」

「穢人も……進化しているという事だな……」


 悪霊を取り込んだ穢人は、さらに大きくなり、悠真に切り落とされた右腕も再生していた。

 悠真もゆっくりと、穢人に向かう。

 蒼真たちも武器を構え直し、穢人に向かった。

 

「ジャマ……ダ……オマエタチ……」


 大きく裂けた真っ赤な口を開き、蒼真たちに向かって黒い霧を吐き出す穢人。

 咄嗟に結界を張った功だったが、蒼真とメティラもろとも吹き飛ばされた。

 石の地面に体を打ちつけた三人は、穢人の威力に戸惑う。


「これは……強いねぇ……」

「本当に……進化しているようだ……」

「てか、悠真あんなのを一撃で祓ってたのか?」


 悠真の方へ向きを変える穢人。

 再び雄叫びをあげ、黒い霧を噴き出した。

 今度は黒い霧を弾き返せず、天霞の刃で受け止めた悠真は霧に包み込まれた。

 だが、天霞の刃から結界が広がり、霧を受けたまま前へと押し進む。

 そして間合いに入ったところで弾き飛ばして、そのまま斬りかかった。

 またも腕を切り落とされた穢人は、よろめき倒れた。

 

「オマエ……オマエ……オマエハ……」


 立ち上がった穢人は、悠真に向かう。その時、台座に春の姿がないことに気づく。

 動きを止めてあたりを見回し、春が救出されたのを知った。


「おお〜い! 悠真〜! 春は無事にょぉぉ! やっちまえぇぇ!」

「グワッ! グワアァァァッ!! ヨスガ……ノ……サマノ……ジャマ……スルナ……」


 穢人は悠真を飛び越え、台座に向かって走り出した。

 そして、台座の横に置かれていた豚の頭を、台座の上にかざす。

 滴る血。その血は台座に吸い込まれていった。


「グワハハ……ハハ……チガ……チガアレバ……フッカ……ツ……」


 石の台座から黒い霧が渦になって舞い上がる。

 空高く舞い上がった黒い霧の渦は、月を隠していたカラスを巻き込み、台座へ消えた。

 もう三日月ほどしか見えない月の光が、台座の半分以下をうっすら照らす。

 

「オオ……フッカツ……ナサレ……ル……」


 遠くで見ていた蒼真たちは慌てていた。

 夜過神が復活すれば、本当の災いがやってくると……

 蒼真はすぐにカラスを召喚し、わずかな月を隠した。

 今度は、台座の上にだけ黒い霧の渦が現れる。

 激しく回転し、あたりに禍々しい空気が溢れ出した。


「おやまぁ……こんな中途半端に……中途半端以下ですね……」


 渦の中から男の声が聞こえた。


「陽菜様……これは……」

「……復活してしまったようですね」

「ヨスガ……ノカミ……サマ……ワレガ……ワレガ……フッカツヲ……テツダイ――」

「……消えなさい」


 その言葉と共に、穢人は渦に吸い込まれた。

 そして渦がだんだん台座に吸い込まれ、人の姿が見えてきた。


「あ……あれが……夜過神……」

「そうだねメティ……夜過神だねぇ……困ったよ」

「でも、今までより禍々しい空気が薄いにょ……」

「……隠しているだけですよ」


 渦が消えた台座の上には、漆黒の衣を纏った長髪の男性が立っていた。

 

□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日


 夜過神が復活してしまった

 これからどうなるのか

 私たちは戦うことができるのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。