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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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第五十三話 神々の隠し事

「悠真大丈夫なのか!?その傷・・・」


皆は瑞音家に戻り、当主の奏人に迎えられていた。

驚くのにも無理はない。

全員がボロボロで特に悠真は普通なら生死を彷徨うような怪我をしているのだから。


「ははは。大丈夫じゃないです・・・」

「ここでは何もできない。すまん。」


頭を下げる奏人に悠真は慌てる。


「奏人様頭など下げないでください。黒い水の件は片付きました。追って皇宮から報告が来ます。」

「・・・あぁわかった。助かったよ、ありがとう。」

「ここでもう少しお話をしたいのですが・・・一度帰ります。」

「もちろんだ、安生してくれ。」


そのまま直ぐに飛び立つ悠真達。

機内では・・・・


「悠真ぁ大丈夫!?本当に大丈夫?!」

「あぁ、大丈夫だって!」

「本当に?ちょっと傷口見せなさい!」

「だいじょうぶだよ!ユズハに処置はしてもらったし!」

「ほんと?」

「いててて・・・分かったからもう少しだけ離れてくれ!」


『・・・・・』


「お前達二人!つい数時間前までのあれはなんだったにょっ!?」

「なんのこと?」

「なんのことっ!?昨日の夜から春おかしかったにょ!?」

「何が?」

「なっ・・・悠真を不安そうに見つめたり、距離を置いたりしてたにょっ!?」

「・・・・知らない」

「し・・・知らないと来たにょ・・・・」

「うむ・・・春らしい。」

「あらあらぁ」

「けっ!いつもの春でよかったじゃねぇか。」

「みんな何言ってるのぉ?私は何にも変わらない!」


『・・・・恐ろしい子』


「蒼真・・・・。」

「なんだい?」

「帰ったらちゃんと話してくれよ。」

「・・・・何をかなぁ。」

「流石に今回は誤魔化しはできないぞ。」

「んー」

「蒼真殿!ぜひ私も真実が知りたい!」

「うん、確かにそれもはっきりしないといけないにょ。」

「何をかなぁ・・・・」


『あなたは一体何者なのか?』


「あ・・・あは・・あははははぁ・・・・」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「これまたいつにも増してボロボロですわねぇ。」

「お姉様、いろいろお話が。」

「・・・でもまずいつもの様に治療が優先ですわよ。」

「はい、わかっています。」

「皇王様、一度アルスティアに戻って治療にあたらせてもよろしいですか?」

「あぁ、そう言ってくれるとありがたい。そちらの医学には勝てんわい。」

「承知しましたわ。数名来ていただき、情報も共有いたしましょう。」


停泊していたエルディア号で悠真達はアルスティアに向かった。

アストレア号では揺れが強く、体に負担がかかるからとセイラの厳命でのエルディア号だった。


「やっぱりエルディア号は快適だな!」

「そうにょ!さすが天才ポピンが作った船にょ!」

「誰だよ!危うく船内で爆発させるようなもの作ってた奴はっ!」

「今日もうるさいにょ功!成功したから助かったにょ!?」

「三回目の失敗はないー!とか言って二発しかなかったじゃねぇか!」

「一発目はすでに試験済だったにょ!」

「それは成功したのかっ!?」

「翼がもげたにょ!」

「・・・・・怖」


アルスティア到着後すぐに治癒院へ搬送される悠真達。

前回同様、薬浸包(やくしんづつ)へ入り、ユズハの加護【神の抱擁】が発動した。


「相変わらずすごいことだな、この治り具合は。」

「ありがとう功、私の唯一役に立てることだから嬉しいわ」

「そんな事ないさ、戦闘中の薬は助かるもんだぞ!」

「ふふ ありがとう」

「へぇ・・・気持ちいいお風呂だねぇ」

「兄貴・・・風呂じゃねぇ。」

「違うの?」

「悠真・・・かなり傷残っちまったな。」


龍神の爪で刺された脇腹には、円型の傷後が盛り上がり残っていた。

それを見て蒼真はサスサスと肌を撫でている。


「ちょっ!やめろ兄貴、気持ち悪いな!」

「えぇ・・・弟を心配するのは兄として当然だろぉ。」

「もういいから服着て欲しいなぁ」


『あ、はい』


アルスティア城軍会議室。

物々しい雰囲気の場に座らされた悠真達【ヴォルテクス・レゾナ】は国王とセイラ、騎士団の隊長クラスと穢人の件に関わる高官達と向き合っていた。


「では、話してくれるか?」

「はい、今回の皇国での悪霊の件についてお話しします。」


悠真達は水が黒く染まり、触った者が穢人化した事。

水の元となった泉の事。

祠、龍神の悪霊、そして黒の神霊石の事。


「そして、この穢人の異常発生の原因・・・・」

「原因!?」

「原因がわかったのですか!?」

「確定ではありませんが、ほぼ間違いはないと思います。」

「それは何なのですか?」


騎士団長の一人が早く答えを求めて声を上げた。

実際に対峙した女性陣は思い出し、顔色を無くしていた。


「それは【夜過神(よすがのかみ)】と申します。」

「神・・・・」

「はい。それはこのアルスティアをも包み込むような大きく恐ろしいだけでは言い足らない禍々しい霧です。」

『・・・・・』

「そ、その夜過神とは一体何者なのですかっ?!」

「今はなんとも・・・・」

「早急にその夜過神とやらの事を調べるのじゃ!」


『はっ!』


国王に指示を受けた高官達は急いで退室した。

騎士団長達もざわざわと夜過神について推測を初めていた。


「その者は一体何が目的で・・・」


悠真は一つ思い出すことがあった。

少年だった頃、よく読んでいたあの古文書・・・


――神々は迷い苦しんだと言ふ。

  消滅か分断か。

  神々は分断を選んだ。

  神々は消え去った。


  人は間違いを悔やんだ。

  またそれで争いが起こった。


  神々は神界から覗いていた。

  一人の神は言う。

  なんとも惨めな。

  一人の神は言う。

  なんとも悲しげな。

  一人の神は言う。

  消滅の慈悲(じひ)を。


  多くの神々は(なげ)いた。

  神々はそれでも人を信じた。


  一人の神は言った。

  哀れで(おろ)かな人に。

  わが力を持って消滅の慈悲を与える。ーー


会議室の窓から見える青空を真っ直ぐ見つめ、悠真は記憶を辿り言葉にした。


「なんですか?その詩は?」

「私が子供の頃によく読んでいた古文書に書かれていた一文です。」

「そんな古文書が・・・・」

「なぜか気に入った所がありまして、それらは突然思い浮かぶのです・・・・今のように。」

「・・・今の詩に何かあるのですか?」


【消滅の慈悲】


「夜過神が同じ言葉を発しました・・・・」

「なんと・・・・・」

「じゃぁ、大陸を分断したとされる神の一人ってわけかっ!?」

「功、わからない。ただ、同じことを言ったと思っただけだ。」


メティラは話を聞きながら、蒼真を見た。


「国王様、私より提案があります。」

「もうしてみよ、悠真。」

「今までの大きな戦いになる穢人や悪霊は、全て祠が側にありました。」

「その【祠】を探せ。と?」

「はいセイラ様、仰る通りでございます。」

「父上。」

「騎士団はすぐに行動せよ。共和国全土にわたって調べるのじゃ。」


『はっ!』


会議室には九人のみが残った。

ドアが閉まり、騎士達の足音が遠ざかったのを確認してから悠真は話し出した。


「本当は皇王様と親父がいた方が話は一回で済むんだろうが・・・なぁ兄貴。」


国王とセイラは突然始まった話が分からず、蒼真を見た。

呼ばれた蒼真はゆっくりと目を開けてかるくため息をつく。


「えーっ、やっぱり内緒じゃだめぇ?」


『だめ!』


一斉に突っ込まれ、渋る蒼真。

再び目を閉じて今度は大きなため息をついた。


「君たち、セレノス大神殿でサイカス様の話ちゃんと聞いてた?」


突然サイカスの名がでて驚く皆。

まるで自分も聴いていたかの様な言い方だった。


「蒼真殿、聴いていたつもりであるが、どの話を・・・」

「うーん、特にメティラ。疑問に思わなかった?」

「はい?」

「アルシア様の魂の子は?」

「悠真と春?」

「じゃあセレノス様は?」 

「私と・・・えっ?」


皆が蒼真を見た。

蒼真は指をパチンッと鳴らした。


ガァ!ガァ!


窓に突然、八咫のカラスが現れた。


「そう、もう一人が僕だよ。」

「でも、兄貴はサイカス様に会ってないじゃないか!?」

「どうして自分がセレノス様の子だとわかるにょ!?」 

「うーん、僕はみんなとちょっと違うからかな?」

「な、何がですか?蒼真様。」 

「僕自身の事はずっと前から知ってた。」


『?』


「ほら、よくみんな予言とか言ってたでしょ?」

「あぁ、兄貴が突然呟く事は必ず起こった。」 

「うん。もちろん誤魔化して、知らない分からないって言ってきたけどね。」

「じゃあ・・・ポピン達が皇国に来る日の前に言った【世界がかわるよ】ってのも・・・」


蒼真は悠真に笑顔を向ける。


「もちろん、わかってたよ。ポピンとメティラが来る事。」

「じゃあ、皇護衆がエルディア号に攻撃をしか―――」


悠真の脳裏に浮かんだのはカラスだった。

ガァ!

そうだよと言わんばかりにカラスが窓の外で鳴いた。


「ははは、あの時は焦ってつい眷属を出しちゃった。」

「で、でもなんで色々わかるにょっ!?」

「それが僕の加護だからさ。」 

「加護・・・」

「ちょっと失礼するよ」


そう言って蒼真は長い髪をかき上げて、首の後ろを見せた。

そこにはメティラの手の甲にある紋章と同じ月と梟が薄ら浮かんでいた。


「僕の加護は【先読】さ。でも意識して出来ないんだ。突然浮かぶのは本当だよ。」

「だが兄貴、ごく稀に本当に兄貴なのか?って思う事があった。目が金色に光って見えたり。」 

「あぁ、先日の龍神の戦いでも・・・あれは蒼真殿と言うか・・・」 

「ははは!そうなんだよ。たから後でやっちゃった!って思ったんだ。」

「な、何をですか?」

「僕ね、月詠様の依代(よりしろ)なんだよねぇ。」


『・・・』


「たがら、僕が興奮したり、暴走仕掛けると月詠様勝手に体にはいってくるんだよ、すごいよねぇ!」

「す、すごいのは蒼真にょ・・・」

「さらに僕の意識も残ったままだから、たまったもんじゃないよ。」

「どう言う事だ?」

「だってメティにも、(お前も我が子なら・・・)とか言ったでしょ!バレるよっ!って意識は叫んでたんだよぉ」

「では、私があの時指示を受けていたのは・・・」

「あ、紛れもないセレノス様だよ」


メティラは顔を硬直させた。

自分は神様から直接指南して頂いていたのかと。


「ま、そう言う事だよ。納得してくれた?」 


『・・・・』


「な、なんで黙ってたんだ?」 

「えーっ、月詠様に言われてたからかな?」

「なんて?」 

「えーっと、他の魂の子達は自分で色々見つけなければならないから、なにも言うな、しらないふりをしておけ!みたいに」

「あ、兄貴はいつからそれを知ってたんだよ?」

「あ、それはね、三年ぐらい前から。ほら、月詠様って結構意地悪な所あるか―――痛っ!」


どこからともなく、小石が蒼真めがけて飛んできた。


「ねっ?」


『ねっ? って・・・』


「ともかく、神様は隠し事が大好きなのさ」



□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日


蒼真殿が同じセレノス様の子だった。

しかも依代だと。

この世には不思議な事が沢山起きる。

神は本当にいたんだ・・・


あっ!では私と蒼真殿は兄妹?

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