第二十話 蒼色の神霊石
セイラ第一王姫様に準備してもらった5階建の共同住宅。
春が無双した後、改めてこの建物の使い方を皆で話し合った結果、
◯専用入口側の一階は昇降機と受付のみ。
◯【酒場】として貸出す一階は完全独立型にして家賃収入を得る。
◯地下一階、地下二階は研究室、倉庫、ポピンとメティラ用の部屋。
◯二階は各部屋で風呂場と清室が完結した来客用寝室と応接室、食堂、炊事場。
◯三階は悠真の家。二分割し、半分は空きとする。
◯四階も二分割して一世帯分の居住区と、皆で使える大浴場と居間。
◯五階も二分割で半分が功の居住区。半分は空き。
◯屋上はレグナント着陸場と収納庫。
以上に決定し、セイラ姫は二つ返事ですぐ手配をしてくれた。
代わりと言ってはなんだが、長く城を開けていたメティラを暫くは第三王姫の役目をこなして貰うとそのまま連れ帰った。
改修はセイラ姫の勅令のおかげか、たった4日で完成した。
そして今日、完成した報告をもらい、皆で日用品等、買い物に出かける事になった。
先日の聖氷樹の実を取りに行った件を、国王が勅令としてくれたおかげで、多額の報奨金が支給されたのでお金に困る事はない。
「悠真様!必要な物はこの【春】にお任せあれっ!」
「あぁ、もう好きにしてくれ、どっちみち俺は何もわかんねぇしな」
「やったぁあ!」
「いいな、俺も侍女に来てもらおうかな。いや、こっちで雇うか!それがいいな!」
「功はまたそんな事言ってるにょ?人材紹介しようか?」
「ほんとかポピン!ぜひ頼む、格安で!」
そこそこ住めるようになり、早速一階の酒場の経営者も決まったようだ。この酒場の賃貸は国が行なっている事にしてもらった。
色々と余計な詮索をされないようにと、昨日の便で皇国へ帰った蒼真の案だ。
こういった細かい事を気付いてくれる蒼真に、悠真はいつも感謝していた。
◇◇◇◇◇◇
「さぁ!みんな手伝うにょん!」
ポピンが地下室に大量の研究機材や素材を搬入している。
単に機材、素材と言ってもおそらく全て国家機密級の物だろう。
悠真は不安になりながら、ポピンに尋ねた。
「ここで全部出来るわけなかろうに。国の研究所と行ったり来たりじゃないのか?」
「大きな試験は向こうでするにょ。普段の研究ぐらいなら、この広さがあれば十分にょ。しかも!」
「しかも?」
「さすがはセイラ様にょ!ここはお城にも研究所にも近いにょん!」
「そうだな、それだけいつ呼び出されてもすぐに行けるって事だな。」
「そんな小っぽけな話じゃないにょん!」
「と言うと、どれだけでっかい話なんだ?」
「お城と研究所とここと、いずれはもっともっと重要機関と地下通路で結ぶにょ!」
「いやいや・・・・・それは流石にないだろ!」
「もう向こうから掘り始めてるにょ。」
「・・・・・・・誰の命だ?」
「もちろん!セイラ様にょん!!」
「あの王姫様、ぶっ飛んでるな・・・・・。」
「地下通路を大きめに掘ってね、レグナントを飛ばせばあっという間につくでしょ!?ふふふ。それ専用のレグナント開発しなきゃならいね!わくわくしてきた!」
(駄目だ。ポピンが(にょん)を忘れている。本気だ。)
木箱で擬装された機材がどんどん運ばれてくるのだから、どうやっても人目に付く。
(布)(灯台)(食器)(石鹸)色々な品名が木箱に貼られている。
中身を怪しまれないためだろうが・・・・実に怪しい。
怪しすぎて、悠真はもう何も考えず、楽しむ事にした。
「どうせなら、前の空いてる店舗で雑貨屋でもするか!」
「おお!それは名案だな!私も一度お店の店員をやってみたかったのだ!」
そこにはやっと解放されたのか、疲れ果てた顔のメティラがいた。
今日は姫様でも騎士でもなく、街娘の服装であった。
「お、セイラ様にしっかり絞られてきたか?」
「あぁ、大変だったよ。いや、待て・・・。そうなの、大変だったの」
「なぜ話し方を変えた?」
「だって今は街娘なんですもの。」
「そうか・・・。」
「で、雑貨屋は本当にしますの?」
「いや、今は無理だろう。やり方も分からないし。」
「じゃぁ!私がなんとかして見せます!私にお任せあれ!悠真様ぁ」
「お、おぅ・・・・・・」
「どうかしました?悠真様ぁ。」
「メティラ。セイラ様に言われたんだろ。春を真似しろって。」
「・・・・・そ、そんなことはないぞ。ないですわ。ないですー。」
「もう辞めとけ・・・・。」
「うん、辞める。」
まる一日かかって搬入は終わったようだ。
研究室には沢山の機材が木箱から取り出され、配置を待っていた。
使用できるまでにはまだ時間が掛りそうだ。
「なぁポピン。この地下ってさ、こんなに広かったかな。」
「にょ? ついでに拡張してもらったにょ。」
「もうなんでも有りだな。考えるの辞めるわ。」
「お姉様は(お金は惜しまないわっ!)と言っていたしな。」
「地下二階は今も下に掘ってるにょん!」
「はいはい。そんな気配全くないですが・・・。」
「我が国の防音技術を馬鹿にするんじゃないにょ!」
「そんなん知らねぇし。」
もう、呆れて聞くのをやめた悠真は無造作に置かれた箱の中に石が入っているのを見つけた。
綺麗な蒼色の石だ。様々な大きさ、形をしている。
「なぁポピン、これって」
「それはレゾナイトの制作段階で失敗したやつにょ。」
「じゃぁ、あれか?神翔船に積んでるあの?」
「そうにょ!それにレゾナスアーツを込めたらあれになるにょん」
「あの発明があったからこそ、悠真達と友になれたんだしな。」
「本当に、ポピンが作ったんだな・・・すごいな。」
「何を今更!私は天才にょん!」
「お、おぅ・・・・・これはどうやって作るんだ?」
「それは国家機密ってやつにょ。」
「それは蒼晶石を砕いて高温で焼くらしいぞ」
「こらメティラ!国家機密を王姫様が簡単に漏らすんじゃないにょ!」
「す、すまない・・・。まずかったか?」
「そうにょ!せっかく教えて欲しければ一日二人っきりで遊びに行くにょん!て交渉しようと思ったのに!」
「あ、すまない・・・。では私が教えたのだから私と一日遊びに行くと言うことだな?」
「それはズルいにょ!!!」
「はいはい!二人ともそれくらいにして、ご飯にしましょう。私のいないところで悠真様の取り合いしないでください。」
「は、春・・・・」
「みんなの分作りましたから、早く上に上がって来てください。」
「ど、どうしたにょ?春がそれだけで済むとは思わないにょ・・・・」
「確かに・・・」
「今、侍女頭の正装してるだろ?あれ着ると、別人になるんだよ。」
・・・・・・パキィィン
「ポピン様、失敗作を(なんとか石の粉)に元してあげましたよ」
「何するにょん!しかも素手でレゾナイトを粉々どころかサラサラに握り潰すってありえないにょん!」
「失敗作だったんでしょ。これでもう一度素材を無駄にせず作れますね。感謝してくださいね。」
「に、にょ・・・・・」
「もう、誰も何も言うな。飯を食いに行こう。春が真心込めて作ってくれたんだから・・・。」
「そ、そうだな。私もそう思うぞ・・・・」
今日も春は最強だった。
◇◇◇◇◇◇
「さすが侍女頭だな!美味いぞ、春!」
「いいにょ〜。悠真は毎日こんな美味しいのが食べれて。」
「おう!いいだろう。春の料理は最高だ!」
先ほどの件があるので三人とも春の顔色を伺いながら食しているのだ。
春はせかせかと給仕をこなしている。
「春、このまま皆の飯も作ってくれるなら、もう一人か二人、侍女雇うか?」
「うーん、どうしましょ。ポピン様達次第ですね。功様はもう雇われたのでしょ?」
「にょ!私が紹介してあげたにょ!」
「ポピンはともかく、私はそんなに毎日は来ないぞ。」
「どうしましょ、悠真様だけなら私だけで十分ですが・・・しばらくは一人で行います。」
「わかった、いつでも言ってくれよ」
「承知いたしました、ありがとうございます。」
話は神霊石の件になった。
悠真達が使う、残響を蓄積する無色の神霊石を人工で作るにはどうしたら良いのか、ポピンは研究中なのだ。
無色の神霊石を作る事が出来れば、残響の薄いこの大陸でも神響術の効果が上がると分かっているからである。
「さっきの蒼晶石って奴が神霊石になるってのはどうやって分かったんだ?」
「偶然だったにょ。蒼玉にレゾナスアーツを纏わせたら、なにか起こるか試してたにょ。」
「でも何も起こらなかった。」
「別の実験で蒼晶石を粉にして成形して焼いてみたら中が空洞の綺麗な蒼玉になったにょ。」
「今度はそれにレゾナスアーツを纏わせてみたが、結果は変わらずだった。」
「ある日、メティラがポケットにその蒼玉を二個入れたままレゾナスアーツを解放する訓練してたにょ」
「そのまま数分経って、ポピンに返したんだ。」
「それを机の上に置いて、どうしたら良いか眺めながら、二個をくっつけた時にゃ!あの蒼白い光を放ってゆっくり浮いたにょん!」
「すごいねポピン!それを発見してあのおっきな神翔船を飛ばせるようになったの?」
「春そうにょん!浮遊石が出来たからレグナントは出来たにょ!」
「・・・・なぁ、その蒼晶石ってのはなんだ?」
「蒼晶石はアルスティアで沢山とれる鉱石だ。磨くと蒼玉と言う宝石にもなるんだ。」
「・・・・・」
「悠真様、どうされました?」
悠真はエルディア号が初めて瑞穂皇国に飛来した時の事を思い出す。
あの時、記憶が勝手に思い出させてくれた文字―――
世界に漂う神々の残響。
蒼の宝玉に集めし時。
人は浮く力を得た。
人はその石を神霊石と呼んだ。
蒼の宝玉を使い。
人は空を翔る術を得た。
古の神々に感謝し。
蒼の宝玉は神霊核と呼び。
蒼白い光を放つ。
備えた船は神翔船と呼ぶ
「ポピン・・・・共和国にレグナントの事を書いた文章ってあるのか?」
「無いにょん・・・」
「何も無いのに、神霊石を作って、空飛ぶ船まで作り上げたのか?」
「そうにょ。私の発想力はすごいにょ!!」
「・・・・すごいってもんじゃ無いかもな。なんせ、失われていた技術を一から作り上げたんだ。」
「どうしたにょ、突然。」
「しかも神霊石を作るなんて・・・もはや神の域だ。」
「褒めすぎにょ!」
悠真は古文書に書かれていた蒼の神霊石についての話をした。
皆、特にポピンは悠真の話を一言も聞き逃さないように努めた。
「大昔はレグナントが普通に使われていたって事にょ・・・」
「ポピンと最初の頃、(こっちではレグナントの事を神翔船って呼ぶのか?)って話が出たんだ。」
「うん!覚えてるにょ。」
「俺は古文書の記憶があったから、本当に存在したんだ・・・と思った。」
「確かに・・・私は神翔船なんて聞いたこともないです。」
「そう、皇国の人間は空飛ぶ船の事なんて何も知らない。想像すらできない。知識もない、技術もない。残骸すらない。」
「そうだったのか・・・。」
「そして。蒼の神霊石なんて見たこともない。」
「でも古文書には蒼の神霊石は存在しているにょ。」
「あぁ。それでだ。」
「・・・・・・」
「ポピン、結局のところ神霊石ってのはなんだと思う?」
「・・・・残響が込められた宝玉だにょ」
「そうだな。皇国に受け継がれて来た神霊石。炎の術に偏っている朱の神霊石は【柘榴石、治癒は【翠玉、無は・・・【水晶】だ。」
ガタッ!!!
ポピンが突然倒れる椅子も気にせずに立ち上がった。
それに皆が驚き、ポピンを一斉にみる。
普段の優しい顔つきが消え、研究者としての瞳が大きく開かれていた。
「宝玉・・・・柘榴石?翠玉?水晶?!」
「あぁ、そして蒼玉・・・・多分俺と同じことを思ったんじゃないか?」
「それぞれの国に無いものだ」
「それぞれの国に無いにょ!」
□□□□□ラティの日記□□□□□
◯月×日
悠真とポピンが何かに気づいたようだ。
このような話は私には難しい。
ちょっと二人の話についていけない自分が悔しい。
このままポピンと悠真が・・・・
いや、それはないし春が黙っていないだろう。
次は何が待っているのやら




