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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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第十四話 やっぱり怒られる

神霊石(しんれいせき)(共和国ではレゾナイトと呼ぶ)を使えば残響(ざんきょう)を大幅に増幅(ぞうふく)させ、より強力な神響技(レゾナスアーツ)を使える事が解り、その日から四日間は騎士の鍛錬(たんれん)に付き合った。神霊石は過去の人々が山や草原といった自然から見つけ出して使ってきた。その皇国であっても、共和国とは比にならないが、残響が薄れてきた現代に神霊石(しんれいせき)を見つける事は不可能に近い為、ポピンによる無色の人工レゾナイト開発に期待がかかった。


「メティラ、ポピンは大丈夫なのか?」

「研究室に(こも)ったままだが、いつもの事だ。」

「なら良いが、心配だな」

「ポピンはレゾナスアーツがほとんど使えない分、頭でいつも我々を助けてくれている。彼女が天機師(てんきし)としての研究に入ったら、(にょん)すら付けずに話すほど別人になる」


メティラは笑いながら答える。

俺の知り合う女性は人格が沢山ある人ばかりだ・・・


「そう言うメティラもだよな、お姫様っ」

「なっ!それを言わないでくれ。どうもあのヒラヒラしたドレスは私には合わない・・・」 

「そうか?よく似合ってると思うぜっ」

「確かに。でも俺は第一王姫様一択だな」


また顔を真っ赤にしてメティラは少しからかわれて、お怒りのようだ。


悠真(ゆうま)はまたらからかう! (こう)、お姉様はああ見えて、かなり怖いぞ。結婚でもしようものなら、きっと恐妻と言う奴になる」


メティラの後方から(カッ カッ カッ カッ)とヒールのある靴の音を響せ、美しい淑女(しゅくじょ)が向かってくる。 二人は慌てて片膝を付き、顔を伏せる。


「どうしたのだ、二人共?今の私にはそんな礼儀は無様だぞ?」

「だーれーがー。恐妻ですってー?」


メティラがビクッとなり、後ろを恐々振り返る・・・

そこには第一王姫が立っていた。


「お、お姉様・・・ごきげんよぅ」

「はい、メティラちゃん。ごきげんよぅ。」

「悠真様、功様でしたわね。お顔をお上げになって。騎士の訓練にお付き合い頂き、ありがとうございます。レゾナスアーツもご教示(きょうじゅ)頂いてるとか・・・」

「いぇ、たいした事ではございません。国交を結んだ友として、当たり前の事でございます。」

「まぁ、素晴らしいお考えですわ。わたくし達にも、皇国に何かお役に立てる者がおりましたら、向かわせますので遠慮なくお申し出くださいね。」

「はっ!ありがとうございます。」

「でわ、失礼いたします。」


二人は再び頭を下げる。


「さぁさぁ。メティラちゃーんっ。」

「はいっ!」

「今日もまた騎士の格好ですの?でももう訓練は終わりね。ちょっといらっしゃあぃ」


「悠真ー!功ー! 助けてくれー!」


(すまないメティラ。さすがに無理だ・・・)



◇◇◇◇◇



今日は午前中は騎士達の訓練に参加し、午後からはアルスティア城下街でゆっくり散策する事になっている。ありがたい事に先日の穢人対処の報奨金が貰えたのだ。メティラが案内してくれると言うので待っている所だ。


「悠真様、功様、お待たせしましたわ。」


待ち人とは違う声で呼ばれた。

呼ばれた方向には昨日の淑女(しゅくじょ)が護衛を連れて、姿勢良く立っていた。


「第一王姫様?」

「お二人共、改めまして、アルスティア国第一王姫セイラ・アルスティと申します。よろしくお願い致します。」


悠真と功は慌てて片膝を付いた。


「もう、知らない中では無いのです。それにお二人は皇族のような立場だと聞いております。そこまで礼を尽して頂かなくても大丈夫ですよ。もっと親しい仲として接して頂けるとわたくしも嬉しいですわ。どうぞ、(セイラ)とお呼びください」


「はっ、お気遣いありがとうごさいます。」

「もぅ・・・お姉様ぁ」


セイラの迫力に押されて気づかなかったが、その後ろにはお姫様姿のメティラがいた。


「ごめんなさい悠真、功。今日はお姉様も一緒に行くと聞かなくて・・・」

「それは構わないが、セイラ様とラティス様がその姿で街へ行けば騒ぎになるのでは?」

「ご安心ください。今日はわたくし行きつけのお店にご案内致しますわ!」

「もぅ・・・お姉様。」


騒がしく・・・いゃ気の抜けない半日になりそうだ・・・

馬車に揺られて城下街へ向かう。王族の紋章が入った豪華な馬車が街を通る。気づいた街の人々は歓声をあげる。


「おぉ!セイラ王姫様とラティス王姫様だ!」

「王姫さま〜!」「セイラ様〜!」「ラティス様〜!」


二人は窓から手を振り、みんなの歓声に応えていた。

(国民に慕われた、いい皇族じゃないか)


「ラティスって?」

「実は私の本名は(ラティス・アルスティ)と申しますの。騎士として行動している時はいつもの(メティラ・カルスティ)です。」

「なるほど・・・しかし、ドレスを着ると話し方までちゃんとお姫様ですね。」


悠真はからかう。

またまたメティラは顔を赤くしている。


「ふふふ、この子はちゃんとドレスを着てお化粧をすればとても美しいの。なのに毎日毎日、騎士の姿でウロウロしてばかり。」

「この姿は堅苦しくて嫌なのです・・・」

「気持ちはわからなくも無いですが、もう少し王姫としての役目も勤めてくださいね。」

「はぃ・・・ごめんなさいお姉様。」

「悠真様からも何か言ってやってくださいまし」


セイラは笑いながら悠真に振ってくる。


「えぇっと、恐れおおい事です。しかしラティス様。セイラ様の仰る通り、お美しいのですからドレスを着る時間も増やしてはどうですか?


「・・・お美しい」


またメティラは顔を真っ赤にして固まった。


「ふふふ、あらあら、まったくもぅ」


セイラは優しい目でメティラを見つめていた。

(いい姉妹だ。)


「さぁ着きましたわ。悠真様は侍女にドレスを渡したいと聞きましたが?」

「えぇ、我が家の侍女頭をしております者に。歳はそれなりに離れているのですが、幼馴染てもありまして子供の頃から今もですが、迷惑をかけてばかりなものでして。」

「あらあら、素敵な話ですわ。 このお店はわたくしのドレスを準備してくださるお店ですの、きっとその侍女の方にも合うものが見つかると思いますわ。」

「あ、ありがとうございます。ですが王族御用達(おうぞくごようたし)となれば価格のほうも・・・この国の貨幣の持ち合わせが、頂いた報奨金しかなくて。もう少し庶民的なお店に・・・」

「ご安心を悠真様! 第一王姫の権限で、国から副賞として差し上げます!もうお父様の許可もとってありますの」

「それは・・・いくらなんでも頂きすぎでは。」

「いいえ、その代わり。これからも騎士の訓練等、お手伝いいただければ問題ありませんわ。」


セイラはニコッと笑顔を見せた。

(お、俺はアルスティアに買われてしまったのか・・・)

悠真は冷や汗を垂らした。

(でもまぁ、この方も悪い方ではない。)


「承知しました。それでは有り難く頂戴いたします。」

「さすが悠真様、わたくしの思った通りの方でしたわ」


怖い言葉をを聞いた気がする。まぁ気にしないでおこう。

お姫様二人に春の服を見繕ってもらう。メティラは春がわかっているので間違いはないだろう。あれだこれだと盛り上がり、結局四着も頂いてしまった。 セイラ様はもちろん功にもに(誰かに買わなくていいのか)と聞かれ、また秋花の事を思い出して落ち込んでいた。その後、セイラ様のお気に入りと言うお店で贅沢で美味な夕食を取り、アルスティア城に戻ってきた。


「今日はありがとうございました、セイラ様、ラティス様。」

「明日わたくしはお送り出来ないので、ご挨拶しておきますわ。今回は穢人の事も含めて、大変助かりました。ありがとうございました。もちろん、次の便でまた来られるのでしょう?」

「はあ、可能であれば。 先では、こちらでも落ち着いて生活できる様に、ポピン殿に家を探してもらう約束をしております。」

「まぁ!そうでしたか!!」

「来る度にお城にお世話になりますのも気が引けますので。」

「ふふふ、遠慮なさらず。ねぇラティス。ではごきげんよう」

「なにをっ?! 悠真、功。今日は私もこれで失礼いたします。」


二人は礼をして見送った。

(きびす)を返したセイラが功にかけ寄り小声で話す。


「所で功様。悠真様と侍女頭の方はお付き合いされたりしておりますの?」

「いぇ、そう言った関係では・・・今はまだと言えばよいか、悠真が鈍感といいますか・・」

「なるほどなるほど。ではまだあの子にもチャンスがありますわね、ありがとう」


「どうしたんだ?」

「いや、なんでもない・・・」



(頑張れ春・・・セイラ様は強者だぞ)

心の中でとりあえず応援した功だった。



◇◇◇◇◇



あっと言う間の七日間で、今日は皇国へ戻る日だ。

功は帰らないと駄々を()ねている。研究室に引き篭もりだったポピンもやってきた。


「悠真、功。約束通り、次来るまでに家を用意しといてあげるにょん。」

「本当か!絶対だぞポピン!」

「まかすにょん・・・たぶんセイラ様が探してくるげと・・・」

「え?」

「なんでもないにょ!」

「よし!戻ったら引っ越しの準備だ。」


功は本気である。今後、共和国との国交が解消されない限り、こちらに滞在する事も増えるだろう。


エルディア号の小型レグナント格納庫にポピンに連れられてやってきた。ここには初めて皇国に降り立った期待が積まれてある。そこに一機だけ、少し古めかしいレグナントがあった。


「悠真、功。これは私からの贈り物だにょ!」

「・・・いやいや、こんな高価なもの貰うわけには!」

「いいにょん!実はこのレグナントは私が十四歳の時に試作で作ったやつにょん。だからずっと倉庫に片付けたままだったにょ。」

「十四歳でこれを...」

「しっかり整備してるから安心して使ってほしいにょん!」

「わかった!ありがとうポピン!」

「いいにょ!操作方法はメティにきくにょ!」

「わかった・・・え?」

「私も一緒に行く事にした。」

「それは良いが、どうしてまた?」

「悠真の神響術をもっと見ていたいんだ。もっと勉強して強くならなければ。」

「嫌いじゃないぜ、そう言うのは。」

「私はレゾナイトの研究をすすめるにょ!」

「あぁ、頼んだぜポピン」


「じゃあ一時帰国だ!」



◇◇◇◇◇



帰路も順調に飛びあっと言う間に皇国についた。

到着後、皇王に挨拶し穢人の事、神霊石の事を報告し大樹の街へむかう。早速ポピンが準備してくれた神翔船を動かす。


「使い方はいたって簡単。この小さいレゾナイトをはめ込んで、飛びたい方の石にレゾナスを送るだけだ。」

「わかった。でも今日はメティ、操作してくれるか?」

「問題ない。まかしてくれ!」


神翔船は蒼白い光を発して浮き上がる。

大樹の村へ向けての前に、静海(じょうかい)の街へ寄り功を降ろす。


「来週の便で向かうのか?」

「さあな、そうしたいが状況しだいだ。決まったらまた連絡するよ」

「わかった、俺は引っ越し準備だな、メティもありがとう。」

「あぁ、功もまた後日」



巨大なクスノキが見えてきた。

大樹の街(たいじゅのまち)】だ。

何年も前からずっと海の向こう側を想像しながら時間を潰していた草原に降り立つ。レグナントから降りて歩き出すと、一週間ぶりの元気な声が聞こえてきた。


「悠真様ーっ!!」


手を振りながら走って春が向かってきた。

(相変わらず元気なやつだ・・・)


「春!元気にしてたかっ!?」


悠真が手を挙げ、歩みを進めた途端(とたん)

春が一気に間を詰める。目は赤く光り左腕は(むち)の様にしなり、勢いを増して先に付く華奢(きゃしゃ)な拳を弓矢の様に発射させた。


ドゴォッ!!


彼女の繰り出した拳は、悠真のみぞおちに突き刺さった。

その場に白目を向いて、膝から崩れ落ちる悠真。

戦いの末、立っている者だけが敗者に向けれる視線。

春は崩れ落ちた悠真を見下ろし、こう告げた。


「おかえりなさいませ悠真様っ!今日はご注文いただきました、悠真様の大好物!【川魚の半生焼き】をたっくさんご用意しておりますっ! 心ゆくまでご堪能くださいまし!」


「そ・・・それは俺の嫌いなもので・・・川魚の・・・半生は危険だよ・・・春・・・」


春の完全勝利である。(なぜこうなったかは、第九話を)

年頃の乙女心を気にもせず、真っ直ぐに突き進んだ結果である。


「あら、メティラ様! いらっしゃい。さぁさぁ!屋敷へむかいましょう!丁度よかった。今晩の夕食、悠真様以外は脂の乗った巨大猪の丸焼きなのです!沢山食べてくださいね!」


「本当に侍女なのか・・・春殿は・・・」


「さて、おい悠真。わかってるよな?いつまで白目むいてんだ?」

「ハッ! はいっ!春ちゃん」

「わかったんなら早く屋敷もどるぞ!親方様も蒼真様もまたしてんだよっ!」

「はいっ!すぐ行きます!」

「メティラ様の荷物も持っていけよっ!」

「いゃ春殿、これは自分で持つが・・・」

「ほら早くしろ!メティラ様が気を使ってらっしゃるだろ!」

「はいっ!メ、メティ!俺が持つよ、いや持たせてください!」


今日一日は許してもらえなかった悠真であった。




□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日

今日は悠真達が皇国へ帰る日。

少し寂しい。

私はもっと強くなりたい。

悠真の神響術を見ていると、まだまだ

自分が未熟だと思い知らされる。

だから修行の為に皇国へ行く事にした。

お姉様は笑っていた。

何を笑っていたのだろう?

それより春殿だ。

最初は優しそうな人だと思った。

あんなに強かったとは。

でも料理は凄く美味しかった。


明日から訓練がんばる!

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