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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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エピローグ

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

◆ ◆ ◆


 突然ですが、すこしアリアと山城 司に関する歴史を説明させてください。


 今から約250年前、人類は故郷(ふるさと)である地球を飛び出し、このタウセチ星系へとやって来ました。しかし、長い航海の果て、彼らを待っていたのは過酷で残酷な世界でした。入植予定だったタウセチ星系第四惑星は事前調査と異なり、非常にゆっくりと自転していたのです。ゆっくりと自転するということは昼も、夜も、地球より長く続くということになります。アリアの自転は地球での42日。つまり、21日間昼が続き、21日間夜が続きます。タウセチにより温め続けられたアリアの昼は最高で600度、夜は最低-150度。極地を除けば人類が生きていくことのできない環境だったのです。


 さらに、三隻の移民船のうち、デネブ・カイトス、バテン・カイトスは気候が安定した両極地に着陸することができましたが、赤道直下に着陸予定だったミラは計画の変更を余儀なくされました。しかし、その直後、軌道修正の最中(さなか)にエンジントラブルが発生。ミラは過酷な世界へ不時着することになったのです。ミラに搭乗した方々はコールドスリープポッドに入ったまま救助を待つこととなり、ミラ避難民と呼ばれることとなりました。


 アリア暦元年、北極のデネブ・カイトス、南極のバテン・カイトス周辺に建設された街の名前を『アクシスノース』、『アクシスサウス』と命名し、2つの政令区を持つアクシス政府が誕生しました。ミラに搭乗していた人々を救助するため、ミラ避難民捜索隊が結成されたのもこの年になります。


 アリア暦2年、アリアで生活するための憲法が制定されます。地球と大きく違いはありませんが、ひとつ特異な点をあげるとすれば『養育の義務』でしょう。『養育の義務』では一人あたり最低一人の人間を養育することが義務付けられています。仮に独身であっても、35歳になれば自らの遺伝子を引き継いだ子供を引き取り、育てることになります。アリアでは養育費の補助は非常に手厚く『三人の子供を育てれば、それだけで老後は安泰』と言われるほどです。


 アリア暦3年。山城 一博士 主導のもと、アリアの『テラフォーミング』計画が開始されます。


 アリア暦20年。アリア全土を覆う鉄道網が整備されます。アクシスノース、アクシスサウス間で大規模な資源の受け渡しが可能となり、またアリア各地の資源を採掘できるようになりました。


 アリア暦68年。『テラフォーミング』完了宣言が行われ、人類は宇宙服無しでアリアを自由に歩けるようになりました。また、避難民捜索隊が解散され、救助されなかった避難民に対して失踪宣言が出されました。


 アリア暦70年。最後の避難民 山城 司、山城 紬 兄妹が救助されます。同年アクシス政府はミラ避難民というひとつの歴史の終わりを宣言。『恒星間を跨ぐタウセチ星系への移民』という人類史上最大のミッションで発生した人的被害は、不時着時の2510名に加え、未救助者507名。総勢3017名となりました。


 アリア暦72年。山城 司博士 主導のもと『プロジェクト・ムーン』がスタートします。これまで人類はアリアの両極地を本拠としていましたが、赤道直下に街を建設する第三の都市開発が開始されます。


 アリア暦80年。赤道上に人類の第三拠点が建設されました。街の名前は赤道上に着陸するはずだった移民船から名前を取り、ミラと命名されます。


 アリア暦92年。ミラに軌道エレベーターが建設されました。軌道エレベーターは重力と遠心力が釣り合うことで成立しますが、遠心力の小さなアリアでは地球に建設されている軌道エレベーターと比べ約10倍以上の全長が必要になりました。現在、ミラを起点とするアリアの軌道エレベーターは人類史上最大の建造物と言われています。


 アリア暦98年。静止軌道上にアリア初の宇宙ステーションが建設されました。同時にアクシス政府はタウセチ星系 第五惑星の開拓を開始。風の惑星アリアに対し、豊富な水を湛えることから第五惑星はアクアと呼ぶことになりました。


 アリア暦119年。アリア軌道上に岩でできた人工衛星が完成します。人工衛星といえば気象衛星や通信衛星、軍事衛星などを思い浮かべるかもしれませんが、『プロジェクト・ムーン』が作った衛星は人工の月でした。タウセチ星系は太陽系と異なり宇宙空間に岩がごろごろしています。それらをかき集め、アリアの質量の約1000分の1の月を作りあげたのでした。この衛星の名前には、博士を傍らで支え続けたオートマタの名前を取り『ルナ』と命名されました。


 アリア暦120年。衛星ルナが核融合ロケットにより加速され、アリアの衛星軌道上を高速で回転するようになります。衛星ルナとアリアは互いに引力で結ばれていますので、高速で回転するルナに引っ張られアリアの自転速度もゆっくりと加速していくことになります。計算では今からおよそ1万年後、アリアは地球とほぼ同じ速度で自転するようになると言われています。つまり『プロジェクト・ムーン』の狙いは、アリアの自転速度を早め、地球のようにアリア全土を人類が住める惑星に改善することでした。


 アリア暦121年。山城 司はこれまでアリア全体に関わる一大プロジェクトの発起人として多忙を極めており、『養育の義務』を特例免除されていましたが、この年一人の子供を育てるようになります。また同年人類とオートマタの婚姻が法的に可能になり、その最初の一例目として山城 司の名前が登録されています。


 アリア暦140年。山城 司 死去(享年 85歳)。両親や兄と同じく、家族に看取られながらの最期でした。山城 一博士の『テラフォーミング』、山城 司博士の『プロジェクト・ムーン』、人類の未来のため尽力したこの2つの偉業は、近年『アリアの奇跡』と呼ばれています。


 さて、突然ですが黄昏急行はこの話でおしまいになります。理由はもうお分かりかと思いますが、本作の作者にして主人公である山城 司が亡くなったため、そして『プロジェクト・ムーン』により黄昏を走り続ける列車もやがて存在しなくなるため、です。黄昏を走り続ける列車に命を救われた山城 司が、人生を賭け黄昏を走り続ける列車が不要な世界を作る。なんとも数奇な運命のめぐり合わせ、を感じずにはいられません。いつ『黄昏急行』のタイトルを思いついたのか、どこまで考えてこのタイトルにしたのか、少し気になるところではありますが、それは永遠に謎のままです。


 ここからは余談になりますが、人類は次の惑星に足を踏み出そうとしています。言うまでもないかもしれませんが、次の人類の目標はタウセチ星系 第五惑星 アクア。そのほとんどが氷で覆われた惑星です。私もこれからそこで働く事になっています。もし次の話があるとしたらそれは黄昏を走る列車の話ではなく、一面が氷と水で覆われた惑星の話かもしれません。といっても私には文才がないので、本になるかはわかりませんが。


 さて、最後になりますが、これまで黄昏急行をご愛読頂きありがとうございました。それではこの辺でお別れにしましょう。

 遥か宇宙の彼方、風の惑星より水の惑星へ。愛を込めて。


◆ ◆ ◆


 文章を書き切って送信ボタンを押そうとすると、大きな声で階下から声がかかった。


「ルッカ!そろそろ出ないと遅れますよ!」

「はーい!」

 大きな声で返事をし、ダダダッと駆け足で階段をおりると、母さんが玄関のところで待っていた。くるくるとよく回る頬の歯車と青く輝く瞳が母さんのチャームポイント。今はライラックの花がたくさんあしらわれたエプロンを着けている。


「忘れ物はありませんか?」

「大丈夫!」

 返事をしながら玄関にきちんと整理されて置かれた靴に手を伸ばす。


「ツムギさんに挨拶はしましたか?」

「昨日ちゃんと済ませました」

 ツムギ叔母さんの家はお隣で、小さい頃は毎日のように遊びに行っていた。父さんが言うには私のお転婆な性格は父さんよりもツムギ叔母さんに似ているのだそうだ。人差し指で靴をひっぱり踵をすべりこませる。荷物の大部分は既に送っているので持っていくものは小さなボストンバッグだけ。中には身分証明書、携帯端末、筆記用具、今日の着替えが入っている。


「では、行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃい」

 走り去るルッカの姿が見えなくなる。ほぼ同時に、トントンと階段を降りる音。現れたのは褐色の肌と白い髪の少女。


「行きましたか?」

「ええ」


「さみしくなりますね」

「……そうですね」


「本当について行かなくてよかったのですか?」

「大丈夫でしょう。ラビもついていますし」

 開けっ放しのドアを閉める。「ん?」と声を上げるマーニー。見れば二階に視線を送っている。


「どうしました?」

「ルッカの部屋で端末が動いているようですね」

 二階を確認すると、しばらく帰ってこないはずのルッカの部屋から微かにファンの音が聞こえる。


「本当ですね。まったくもう、あの子ったら……」

 階段を上がるマーニーに続き、ルッカの部屋に入る。机の上、起動されたままの端末にすぐに気が付いた。


「これは……、黄昏急行の未送信原稿ですね。ツカサさんの訃報を知らせる内容になっていますが、送信画面で止まっています」

「……はぁ……、本当にもう。いつまで経っても、どこか抜けているんですから」

 端末を操作しようと椅子に近づくと、マーニーが先に体をすべりこませ、カタカタとタイピングをする。


◆ ◆ ◆


 話は変わりますが、ルナは面白いギネス記録を持っています。


 『初めて恋をしたオートマタ』です。


 ツカサさんのことを考えているとCPUが熱いだの、メモリがオーバーフローするだの、真剣に体の不調を訴えるルナがもどかしく、私とアルテミシアがどれだけ苦労をしたことか。


 まず――。


◆ ◆ ◆


 ゴンという鈍い音。

「あいた」

 

「マーニー、あなた何をしてるんですか?」

「いえ、これも何かの巡り合わせでしょう。きっと読者もルナとツカサさんの馴れ初めが聞きたいと思います」


「怒りますよ?」

「もう怒っているではないですか」


「さっさと消してくださ――」

「えい!」


「あ!」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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よろしくお願いいたします。

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