ノアと考えた日
魔導灯の改善に取り組みたいのよ。俺としては・・・
魔導・魔法コーナーまで無理矢理連れてきたんだけど、トーマスはずっとアワアワしてるし、就職に失敗したんなら腹をくくってこの俺に付き合って欲しい。
持ってきたノートを開げ
「部屋の魔導灯をもっと明るくしたい。自分なりに考えて魔方陣を書いてみたんだけど、もっと改善出来ると思うんだけど、率直に言ってコレ見てどう思う?」
あと一歩なんだよなぁ~と思いつつノートをトーマスの方に押しやる。
「部屋の魔導灯?明るくしたいんなら魔導灯の数を増やせばいいのでは?それか魔石のランクを上げればよろしいかと思いますが・・・なぜ魔方陣を改善するのですか?」
「魔導灯ごときに魔石のランクを上げるなんて贅沢すぎるだろ!数を増やすにしたって魔導灯ってそれなりに高価なものだろ。俺は今の状態で明るくしたいんだよ。部屋が暗いから。」
魔石には下から赤・緑・青・紫のランクがあり、日常に必要なものには大体赤の魔石が使われている。
「でしたら、魔石の消費量を倍にする魔方陣を作成してみてはどうでしょう?」
魔導灯の赤の魔石、普通に使っていれば大体2年程もつ。しかし消費量を倍にすればすぐに魔石が空になる。トーマスは、ノートの魔方陣を見て
「これは!消費量を今までの半分近くにして、光源の力を2倍にする魔方陣ですか?すごい!こんなの見たことがありません!!・・・ですが光源と魔石の接続が出来てませんね・・う~んここを書き換えるとか・・・いやこちらを・・・」
ノートを見て学生時代の勤勉さにスイッチが入ったらしく頭を掻きながらうなりだした。
「俺的にはさ、ここら辺を強くするって書き換えてみてもいいかと思うんだけど・・・」
魔方陣をペン先で示しながら自分の考えを言うと、すぐに
「いや、こちらの方はどうでしょう」
と一緒に考えてくれる。やばい、すごく楽しい。
二人でうんうんうなりながらあーだこーだと考えていたらあっという間に3時間くらい経っていた。
「ノア様、家庭教師の件は一旦おいて、私もこの魔方陣に興味があります。どうなるのかぜひ一緒に改善させていただけないでしょうか?」
おう、共同研究な。いいねいいね。
「いいよ。こちらからも是非お願いしたい。明日実際に魔方陣書いて取り付けてみよ。家に来てよ。」
そう約束してこの日は解散することにした。
帰りに護衛が
「あの・・・少しよろしいでしょうか?俺が学生時代一つ上の先輩に、男爵家の子息が全教科学年1位を入学以来ずっととり続けていると噂になっていたのですが、それがどの生徒か知っている人は俺の周りには居なかったのでが、もしかしてあなただったのでは?」
と、申し訳なさそうにトーマスに聞いていた。
「えーと、私は今年20歳なんですが、あなたは?」
「19っす」
「じゃあ、私です。男爵家だったのであまり目立つと高位貴族の方に目と付けられますので、学生時代はなるべく目立たないように、大人しく過ごしておりました。」
「学園って身分とか関係なくみんな平等ってイメージだったんだけど、ちがうの?」
「確かに学園内は身分差なく、王族貴族関係なくみんな平等っていう体ではありまずが、実際王族の方に気軽になんてお話出来ませんし、やはり貴族間であっても身分差を持っておられる方は多かったですね。」
なんとなくわかるけどね。平民で気軽に王族になんて声かけられないし、近づきも出来そうにないだろうな。しっかり護衛役の生徒もいるだろうし、そんなの出来るのなんて異世界転生の平民上がりの男爵令嬢あたりが勘違いして自由に振る舞ってる小説の中だけの世界だろうよ。
更にトーマスは続ける
「剣技以外は、勉強を頑張りましたので結構いい成績を取れたんですが、どうしても剣技だけは苦手で・・・中にはプライドの高い貴族の方もいらっしゃいまして、どこからか私の成績がばれてしまいまして、ここぞとばかりに剣技の授業でボコボコになれました。」
「大変だったんだね(っすね)」
学生時代のトーマスを思うと切なくなるノアと護衛だった。




