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スキル「ゴミ」いや、マジで (書籍化決定)  作者: 新川さとし
第8章 西の漫遊編

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第26話 愛すべき赤毛ちゃん

非常に、好みの分かれる回だと思われます。もしも「クルシュナの好み」をお忘れの方は南部編の『第12話 マーダー&マザー』を見返してから、お読みいただくと楽しいかもしれません。

お願いです。石を投げないで……

「ご無事のお帰り、お喜び申し上げます」

 

 メイド頭のフェフォが、いつものようにカバンを受け取りながら、素早く目で指図していく。


 あちこちから、ワラワラと現れたメイド達が、歩きながら着替えをさせ、お茶を差し出してくるのは名人芸の世界である


 部屋の真ん中で立ち止まると、ぬるめに入れたお茶をクワッと飲み干す。


 クルシュナが、いたって上機嫌な証拠である。


「いや~ 今日はウケちゃってさ~」

「それはようございました」


 フェフォは、カップを盆に受け取りながら返事をするが、もちろん、クルシュナが市井の安酒場に出没することに賛成は出来ない。


 だが、半ば諦めてもいるため、小言はなるべく控えるようにしていた。


 とはいえ、シーランダー王国において「王に小言を言える」のは、フェフォだけなのも事実である。


「今日は、どのような?」

「おぉ! 聞いてくれよ。最近始めた、人体切断マジックが超ウケでさ」

「まあ、怖い」


 その瞬間のクルシュナの顔は「獲ってきたカブトムシを見せたら、母親に拒否された子ども」そのもの。


「いや、本当に切るわけじゃないんだ。箱に入れて切ったように見せて、半分だけ浮かせてみせる。そして、箱のフタを開けたら、はい、生還! ってことでさ」


 ウソである。「実際に切れている」のだが、スキルによって「マジックによる切断だから元に戻る」という不思議な現象が起きているだけ。


 何しろ、切られた本人からしたら、実際に上下真っ二つにされるのだから、たまったものではない。


 真っ青になって、泣き叫ぶのが普通である。


 たいていは「その酒場で、一番の強面」を選んで行う分だけ、客が大ウケするのがその秘訣だ。


 出した手に、さりげなく、さっき預かったカバンを渡すと、ガバッと広げて見せるクルシュナである。


「な? ほら、すげぇだろ!」


 満杯になった銅貨を見せるクルシュナの表情は、ガキ大将が宝物のガラクタを見せる時、そのもの。


 そんな表情を見てしまうと、出発点である「マトゥラー国」時代からのメイド頭のフェフォは、母性が強く反応してしまうのも仕方ない。

 

 これでは、小言どころではないのである。


 とは言え、今日という今日はさすがに「母性」では…… いや、母性が働くからこそ許せないのである。


「大王様、しかしながら、今日はさすがに」

「え~ いぃじゃん。中々いないんだぜ、こんな良い子は」


 はにかむ笑顔を見せるのは、最近の好み通りの、赤毛で、指先までほっそりとして、抱けば壊れそうに薄い肩。


 そのくせ気品のある凜々しさを合わせ持つ美少年、そのものである。


「ボ、ボク、ですか? あのぉ。ボクのようなものにまで大王様から声をかけていただいて。あ、でも、ダメなら帰りますので!」


 まだ幼さの残る高い声。いかにも最近のクルシュナ好みなのを理解するフェフォだ。


『もう~ いつからかしら。連れてくる子の好みが変わったのって』


 以前は「街で見かけた女の子」で、美形で肉感的な子を好んだが、いつからか「赤毛で、美少年風のボクっ子」をターゲットにしてしまった。


 今では、貴族達にも広く知られていることだ。おかげで娘の髪の毛を赤く染めるのが流行り、貴族の子女はこぞって「ボク」を一人称にさせ、パンツスーツで街を歩かせるのが流行っている。


 みな、大王の縁続きになるのに必死なのだ。となると、この子も、どこぞの貴族の血筋なのかもしれない。


 ギュッと、眉をしかめるとフェフォは、怒った顔を無理やり作るしかない。さすがに止めないと。


「大王様、しかし、さすがに今日の方は……」

「いいってことよ。せっかく仲良くなれたんだ。胸がないくらいで、遠慮するんじゃないぞ」

「そんなぁ、大王様ってば、えっち」

「ははは、いーんだよ。王様なんて、みんなエッチなんだからさ」

 

 イチャイチャする二人に割り込む余地を探しながら、フェフォは、まだ諦めない。


「大王様? あの、本当に、あの、今日?」

「うん? あ、まあ、カタいこと言うなよ」


 いつになくフェフォが止めようとするのを不審に思いつつ「そう言えば、オレのいない間にサンタが探してたって聞いたな」と頭に浮かぶ。


 どうやら「オイタをしている場合じゃないでしょ」と、ママが叱っているつもりなのだろうと、クルシュナは理解した。


「なぁに、大丈夫さ。なんていっても、今日はクリスマスイヴだからな。ロマンチックにしないとダメさ。そのためには、オレ好みのかわい子ちゃんがベッドに必要なんだよ。なぁ、仔猫ちゃん」

「にゃーお」


 指をクニッと曲げて、クイクイとネコのポーズまでしてみせる赤毛ちゃんである。少々恥ずかしそうな感じからして、クルシュナに因果を含められてしているポーズなのだろう。


「大王様、しかし、いくらなんでも……」

「いいんだよ! どうしても止めるって言うなら」


 そこでニヤリ。


 イタズラするぞ、と言わんばかりの顔だ。


 どうにも、王宮では、いや、フェフォの前では子ども返りしてしまうのは、おそらく、国の危機を感じている反動なんだろう。


 フェフォが、はぁ~と大ききため息をついてみせると、クルシュナは「勝った」と嬉しそうだ。


「じゃ、仔猫ちゃん、今晩は寝かさないからな」

「もう~ でも、ボク、殿方は初めてなので。優しく、お願いします」

「ケケケ、おじさんはね、おじさんはね? 初めてってのが大好物でね」


 完全に狒々爺である。


 ゲヘゲヘとだらしない顔をしたクルシュナが、赤毛ちゃんを寝室に連れ込んで十分後である。


「うぁああああ! 付いてる!」

「だいおうさまぁ、そんなぁ、一晩中ってお約束ですよぉ」


 その後、何がどうなったのか、フェフォは知りたくなかったのであった……



すみません。お下劣ですけど、どーしても書きたかったんです。ごめんなさい。

サスティナブル帝国では、華やかなデビュタントが行われている頃、シーランダー王国では、見たくもない世界が展開されています、と言う、ちょっとしたネタ回です。

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