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スキル「ゴミ」いや、マジで (書籍化決定)  作者: 新川さとし
第7章 南部編

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第96話 そーら、見ろ


「「「「「戻りました!」」」」」

「おつかれ~」


 偵察隊への命令は「7月1日に戻れ」である。期せずして偵察隊は同じタイミングで戻ってきた。

 

 30人が3組(1組=5分隊)。総勢90人の偵察部隊だ。

 

 さすがに一時に全員は無理。分隊から代表を集めて15人(第一分隊だけは小隊長が兼務)がソラを囲む。

 

「敵さん、相変わらず、まとまって動いています。三百を下回ることはないです」

「最後の穀倉には三千が警備、簡単ですが防御を施しているようです」

「騎馬による偵察隊も見かけましたが、必要以上には近づいてきません」

「敵は食糧と飼葉不足のようで、徴発をはじめたようです」

「こっちでも、徴発の話は聞いた。それと海岸線の監視が厳しくなっていた」


 それぞれの分隊が得た情報を集めて、地図へ落とし込んでいく。(ショウ皇帝によると『情報の見える化』と言うらしい)


 このあたり、ソラを始めとする「かく乱任務部隊」の士官たちは皇都にいるわずかな時間で徹底的に仕込まれた。こっちで活動を始めた後も、マイセンから「頭の中だけで分かったフリをすると、失敗した時に困るぞ」と口を酸っぱくして言われている。


 一目瞭然。


 敵の動きは、東と南に固まった。


 地図を覗き込む偵察隊の面々に「これでいいな?」と確認するソラだ。


 全員が、コクコクコクと肯くのを確認してから言った。


西辺境地(こっち)の敵は、最東部にある最後の穀倉を最優先で守ろうとしてるってことでいいな?」


 第4分隊の隊長は「けっこう、切羽詰まった雰囲気でした」と付け加える。


「敵の偵察隊と遊撃部隊は、コフへの出入り口と南の海岸沿いを動いているってのもいいな?」


 南部の海岸線付近まで行った第2分隊長は「やっと商人からも話を聞くようになったようです」と笑って見せる。


 第2分隊長は、穀倉から奪った食糧を商人に流す代わりに、いろいろと便宜を図らせる作戦を実行してきた実績があった。それだけに「今さらかよ」と嘲笑う。


「こっちでは、今、ウチらの方が『強い』ですから。よしみを通じている分だけ、しばらくは大丈夫だと思います」


 商人としては現段階でヘゲモニー(支配権)を握るこちらの機嫌を損ねるマネなどする気になれないだろう。シーランダー王国側に話すとしたら「流しても良い情報」を優先するはずだ。


「それに、商人連中には『仲間を運んでくる船待ちだ』って信じ込ませてありますから」


 そこに第一分隊長がチャチャを入れた。


「われらが、パン屋さん(ベイク)の作戦は、マジでヤバいッスね!」

 

 違ぇねぇな、と一同がどっと笑った。

 

 商人が喋ろうと、喋るまいと、敵に「真実」は渡らずにすむシカケは、出発前にベイクとミュートから「くれぐれも」と言い含められている作戦だった。


 どっちかというと、武闘派であるソラとしては、そこまで執拗に情報戦をするつもりはなかったが、今のところ、良いように敵が踊ってくれているのは認めざるを得ない。


「わかった。じゃあ、そろそろ頃合いってことでいいな?」


 全員の意見が一致。


 彼らは、このあと「北」へと帰る予定である。


「いよいよ、山越えですね」

「まぁ、要塞攻めはさすがに無理だからな」


 隊員達は口々に言った。


 トライドン家へと繋がる国境を越えるには二つの道があった。


 西の海岸線にある要塞を越える道。


 しかし、この要塞はサウザンド連合王国時代から延々と手直しされてきて鉄壁を誇る。


 高い城壁と入り江となった海とで隔てられているため、攻略どころか攻めることすら諦めるレベルで難攻不落と言える。


 一方で北の険しい山越えの道。


 山越えが出来そうなあらゆる道には国境警備の詰め所が作られている。しかも、サスティナブル側から絶対に渡れぬよう、詰め所の前には自然地形も利用した深い堀で隔てられていた。


 サスティナブル側から、侵攻作戦を考えたことはあるが、この堀を見てしまうと誰もが諦める。「多少の戦力差があろうと、敵前で堀に橋を架ける侵攻作戦など不可能」だというのが常識なのである。


「ま、だからこそ、この計画は上手くいくんだけどね」


 事前に調べておいたことではあるが、シーランダー王国側からすれば「詰め所に行く道」は確保しておかないと補給や要員の交代で困るのだ。


 一応、どの道も秘匿されているが、実際、調べてみれば、あちこちが「穴だらけ」の状態だ。


 それであっても「北に迫っている」と思えば、手も打ってくるのだろうが、生憎と敵はわかってない。「南のどこかに集まっている」という情報欺瞞が上手く行っているのだ。


「最大の詰め所でも百人規模だ」

「あとは詰め所の前にある跳ね橋を確保すれば良いだけですね」


 ソラの確認に、第一分隊長が応じた。


 全員が肯く。


「まあ、敵前でなければ、橋を架けることはさほど困難ではないわけですから」


 中隊長がさらに言葉を足した。


 そして間もなく開かれた打ち合わせで、ソラは堂々と宣言したのである。


「目標は予定通り敵の山中詰め所。一気に落とす。仮に跳ね橋を連中が自壊させてもそれは問題ないものとする。あくまでも目標は詰め所占拠」


 一人が手を挙げた。


「なんだ?」

「はい。跳ね橋はヨシとして、敵兵は?」


 一度口を開けかけたソラは、大きく息を吐き出した後で、もう一度息を吸った。


「我々の情報が流れぬよう、敵の殲滅とする。捕虜も取ってはならない」


 以上、作戦。 かかれ!


 ここに、西辺境地攪乱部隊は、故郷へ戻る戦いを始めたのである。




すっかり忘れ去れていますが、ソラ君達はじみ~に嫌がらせ任務を全うしていました。穀倉の9割以上を略奪、焼却したため、税の最徴収をすると確実に民は荒れますね。しかし、シーランダー王国は、予算の8割を軍事予算に使っているため、民の困窮は見て見ぬフリで集めるしかないんです。

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