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夢の傷跡  作者: 石城群場
第2章 「ハプニング多め? の文化祭!」

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第12話「ドタバタ試着会?」

文化祭まで一ヵ月を切った日曜日。蓮司たちは鹿野先輩に呼び出され、大学のサークル棟へ向かう。はたして呼び出された理由とは?

 お菓子の試作会は無事に終わりメニューもほぼ固まった。俺の仕事はこれでほぼ完了である。あとは文化祭前日にお菓子を作ればいいだけだ。そうやって俺は気楽に構えていたのだが……。


 

 試作会から数日が経ち、文化祭まで残り3週間となったある日曜日。俺たちは鹿野先輩に呼び出され大学のサークル棟へ来ていた。文化祭の準備のために日曜日でも大学構内が開放されているのだ。


「せっかくの日曜日なのになぁ」

「文化祭の準備のためだから仕方ないだろ。うちのサークルを手伝うって言ったのはお前だぞ」


 ぶつくさと文句を垂れながら隣を歩く恭輔に俺は呆れた。そもそも別に手伝ってくれと言ったわけでもないのに、勝手にこいつが協力を申し込んできたのだ。女性陣につられて。にも関わらずこの言いぐさである。


「恭輔、そういうとこだぞ。お前がモテないの」


 恭輔の態度に大和も苦笑いを浮かべている。


「でもさぁ~」

「たぶん今日来なかったら後悔してたと思うぞ」

「? なんだよ、蓮司は呼び出された理由がわかってんの?」

「まぁ、大方予想はついてる」

「なら、言えよ!」

「いや、蓮司がここまでお膳立てしてるならわかれよ」

「大和までなんだよ! えっ、なに? わかってないの俺だけ!?」

『衣装試着、男性の意見も聞きたいってとこだろ』


 大和とハモった。鹿野先輩からの呼び出しであれば、ほぼ間違いなく衣装関連である。


「おいおい! なんだよ! そういうことかよ! やる気でてきたぁ!!」


 さっきまでの憂鬱そうな姿はどこへやら。恭輔は急にいつもどおりの喧騒を纏って、部室へと駆け出していく。


「一段と騒がしくなったな」

「まぁ、仕方ないんじゃねぇの。俺も結構楽しみだし。蓮司だってそうだろ?」

「多少はな」

「『多少』ね。聞いたぞ~? 今回の衣装、蓮司の発案なんだってな?」

「結衣か……発案って言ったって、たまたまネットで見かけたものをそのまま口にしただけだっつうの」

「ほ~ん?」


 にやにやと笑う大和の視線をかわすように、先行した恭輔を追っていく。そんな俺を見て大和はさらに笑みを深めながらあとをついてくる。こういう勘の鋭いところが頼れる部分でもあり、厄介なところでもある。

 部室の前に着いてみれば、恭輔がわくわくしながら待っていた。


「遅いぞ!」

「先に入ってればよかっただろ」

「はぁ!? 友達なんだぞ! そこはやっぱ一緒にだろ!?」

「こういうとこがもう少し異性にも発揮されればなぁ」

「まぁ、そこが恭輔らしいっちゃらしいんだけどな」

「? とりあえず早く入ろうぜ!」


 恭輔に促され、俺は部室の扉をノックする。

 

「はーい! 準備できてるよー!」


 ノックの音に反応して、部室の中から結衣の声が元気よく響いてきた。入っても問題はなさそうだ。俺はドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を開ける。部室の中では結衣たちが文化祭当日の衣装に着替えて待機していた。


「おぉ! みんな、めっちゃ可愛いじゃん!! 来てよかったぁ!」


 恭輔はそんな女性陣を見て、歓喜の声を上げる。恭輔の声が大きすぎて周りにいる全員が耳を塞いだ。


「おいおいおい! やるじゃん、蓮司! お前、最高だよ!!」

「声のボリュームを絞れ」


 喜びに満ちた恭輔が肩に腕を回してくる。悪いやつじゃないんだが、こういうところは少しうざい。恭輔を見つめる女性陣の視線も冷ややかだ。


「それにしてもなんというか壮観だな。全部、鹿野先輩が作ったのか?」

「鹿野先輩以外作れる人いないし、そうだと思うけど……」


 あとから部室に入ってきた大和と一緒に衣装で着飾った女性陣一人ひとりに目を向ける。部室の扉から入ってすぐ視界に入るのは結衣だ。水色を基調としたフリルの多いミニスカの和装メイド服に袖を通し、白いニーハイソックスを履いている。胸元には水色のハートマークをかたどった名札を付けており、彼女らしい丸みを帯びた字で『ゆい♡』と書いてある。


「もう~、蓮くんもやまくんも見すぎだよ~。そんなに可愛い?」

 

 俺と大和の視線に気づいた結衣がわざとらしくにやっと笑って、くるっと回ってみせる。


「なんだろうな」

「言いたいことはわかるぞ、大和」

『素直に可愛いと褒めたいが、なんか癪に障る』

「なにそれ!?」


 ぎゃあぎゃあと騒ぐ結衣は完全にいつもの結衣だ。漫画から出てきた正ヒロインです、みたいな可愛らしさ満点の姿をしていても中身が変わるわけじゃない。いや、むしろいつもどおりのほうが接客には向いているかもな。


「あんまり騒がないの。ただでさえ結衣のはスカート丈が短いんだし、はしたないわよ」


 結衣をたしなめたのは彩葉だ。彩葉は薄紫色の和装メイド服を身にまとい、黒のタイツを履いている。結衣と違ってフリルは少な目でスカートの丈もロングというほどでもないが若干長い。胸元にはコーヒーカップをかたどった名札に「彩葉」と特に飾らずに書いている。


「大丈夫だって、今日はちゃんと見せていいやつだし」

「じゃあ、見ていいんですか!?」

「……きっしょ」

「なんで!?」


 そんな彩葉にたしなめられた結衣はあっけからんと言い返した。その言葉にとんでもないスピードで食いついたのは恭輔だ。そして、そんな恭輔を結衣はゴミでも見るような目で見ている。恭輔、そういうとこだぞ。


「結衣とだいぶ衣装の印象が違うんだな。よく似合ってるよ。まさに大和撫子って感じだな」

「ほんとほんと。綺麗だぜ、彩葉」

「二人ともちょっとほめ過ぎじゃない。まぁ、悪い気はしないわね。ありがと」

「蓮くんもやまくんも全然わたしのときと反応違うじゃん!」

『だって、結衣だし』

「むぅ……」


 彩葉のことを褒める俺と大和の姿に納得いかないと頬を膨らませる結衣。そんな姿ですら絵になってしまうのが結衣なのだが……調子に乗りやすいし、ダル絡みが増えるから真正面から褒めることは少ない。この一年で俺も多少は学んだのだ。


「ちょっとちょっと、ま~だいるんですけどぉ?」


 結衣と彩葉に構いすぎたせいか、桜詩が少し不満そうに声を上げる。桜詩の後ろでは彼女の影に隠れるようにフウが苦笑いをしながら立っていた。


「別に無視したわけじゃねぇよ」


 くるりと桜詩のほうへ視線を向ける。淡い桜色の和装メイド服にコルセットを巻いており、桜詩の女性らしいシルエットがより強調されている。他の女性陣とは違って、ロングスカートに編み上げのブーツを履いており、名札はマフィン型で『おうか』と柔らかい筆圧で書いてある。桜詩の好みに合わせてくれたのだろう、露出自体は控えめだ。スタイルは全く控えめじゃないが。


「……やっぱ、紀乃ってでかいよな」


 桜詩をまじまじと見て、恭輔がぽつりと漏らす。そういう下心を隠せないからモテないんだぞ。いい加減気づけ。

 

「死にたいなら素直にそう言ってくれていいのよ?」

「辛辣!」


 恭輔の言葉は桜詩本人にも聞こえていたようで、にこやかに殺害予告をされていた。

 

「やめとけやめとけ。恭輔のせいで前科がつくのはもったいない」

「ねぇ、せめてフォローしよ? 友達だろ?」

「悪いな。桜詩とのほうが付き合い長いんだ」

「そうだった! 裏切り者めー!」


 さすがに幼馴染が前科一犯になるのは避けたい。もちろん冗談なのだが、桜詩なら殴るくらいはやりそうなので彼女のそばでなだめておくことにする。

 桜詩のそばに移動したことで、影に隠れていたフウの姿が目に入った。紅葉色の和装メイド服に、横に小さなリボンがあしらわれた白いショートパンツ。スラっと伸びた足は黒のニーハイソックスを履いている。自信がないのか照れくさそうにぎこちない笑みをフウは浮かべていた。そんな彼女から俺は目を離せなかった。


「えっと……どう? にっ、似合ってるかな?」

「……あっ、あぁ。よく似合ってると思う」

「ほっ、ほんと?」

「……ほんと」


 柄にもなく言葉が詰まった。不安と期待に揺れる瞳がもどかしいほど楓に似ていたから。なんか変だ。フウと楓をわけようとすればするほど、二人の面影が重なっていく。


「おっやぁ~? 蓮くん、いつもとなんかちがくなぁーい?」

「なるほどねぇ、蓮司はこういうタイプが好みっと」


 新しいおもちゃを見つけた子供のように、結衣と大和がにやにやとしながらこちらに寄ってくる。


「べっ、別にそういうんじゃねぇよ」

『ほ~ん?』


 なんでこういうときだけ息ぴったりなんだよ。さらに笑みを深めた二人が俺を囲むように迫ってくる。たぶんこれは何を言ってもダメな奴だ。


「ふわぁ~。あれ、なんだ。もう来てたんだ」


 俺が結衣と大和に囲まれかけたそのとき、部室の奥から鹿野先輩が目をこすりながら現れた。おそらく仮眠でも取っていたのだろう。四人それぞれに異なる意匠の和装メイド服を仕立てていたのだ。作業量はとんでもなかったはずである。


「鹿野先輩、お疲れ様です」

「う~ん、まだ眠いや。さすがに三徹はやりすぎたかぁ。ふわぁぅ」

『それはちゃんと寝てください!』


 鹿野先輩以外の全員の声がハモった。


「いやいや、メインイベントはこれからだからさぁ」

「メインイベント? もう衣装は完成してますよね?」

「そうですよ。このクオリティなら男性目線でも文句の付け所ないですって」

「あなたが神です!」


 恭輔のやつ、いつも以上にテンションおかしいな?


「まさか、女性陣だけに接客させる気かい?」

『えっ?』

 

 嫌な予感がする。大和のほうへ視線を向けると、大和も同じ予感を感じたようで俺のほうへ振り向いた。二人で女性陣のほうへ目を向ければ、結衣と桜詩の悪戯が成功した子どものような笑顔が視界に映る。その二人の近くで彩葉とフウはどこか期待した目で俺たちを見ていた。


「今日君たち男性陣を呼んだのは、これを着てもらうためさ!」

最後までお読みいただきありがとうございます!

評価や感想もお待ちしております!

また来月お会いしましょう!

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