一人だとどうすればいいのか分からない時ってあるよね
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王子のときと同じ会場でお披露目パーティーが開かれた。
今回のパーティーは親と行動するよりも子供同士の交流を目的としているので、会場に入ると別行動をする必要がある。
他の家も同じで親と一緒に来たであろう6歳の子供たちが友達同士で集まりお喋りをしている。
俺はあの中に入っていける自信がない。
適当に料理食べて時間潰してよう。
「イルメラ、楽しんでおいで」
「はい」
父と暫しの別れを告げて1人で行動をする。
喉が渇いたので飲み物でもと思い辺りを見回すと、なんと飲み物は給仕の人たちがトレーに載せて配っているようだった。
どうやら話しかけなければ喉を潤す事はできないようだ。
なんて高難易度なんだ。
取り敢えず給仕の人のところまで行ってみる。
トレーの上にはまだ飲み物が置かれていたので、なんとかしてこの人から飲み物をもらおう。
だが、なかなか話しかけられないので給仕の方から話しかけてもらおうとその人の後ろをちょこちょことついていくこと暫し。
一向にこちらに気づかない給仕にどうしようかと考えていると、せっかくなので驚かせてやろうと給仕の持つトレーに魔法で一輪の花を咲かせる。
すると彼は驚いたのかビクッとしていたが、流石はプロと言うべきかトレーや飲み物を落とす事はなかった。
今ので給仕の人がこちらに気づいたのか振り返り、話しかけてくる。
「どうかなさいましたか?」
「っ!」
そっちから話しかけてほしいとは思ってたが、いざ話すとなると言葉が出てこない。
ただ見ているだけというのも悪い気がしたので、両手を差し出し飲み物を要求する。
伝われ、この想い!
ギブミー、ギブミー。
「お飲み物ですね。どうぞ」
「ありが、とう」
これだけで意図を察してくれるなんて、やっぱり王宮勤めは優秀だね。
飲み物を受け取って速やかにその場を立ち去った。
さっき貰った飲み物を飲みつつ壁の花になっていると、何人かの男の子たちがこちらをチラチラと見てきては顔を赤くさせていることに気がついた。
おやおや〜?
どうしたのかな?
こちらを見てきている子たちににこっと微笑んであげれば、女の子までもが耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
これは楽しい!
もっとやりたいなと次の獲物を探していると、男の子とその取り巻き2人がこちらに向かってきた。
なんだろ?
「おいお前!この後のダンスを一緒に踊ってやってもいいぞ!」
「いや」
つい反射的に断ってしまった。
というかそもそも今回はダンスはしたくない。
また失敗して転んだり倒れたら大変だし。
相手は「なっ!」とか言ってかなり驚いている。
まあ服装から見てもかなりのボンボンっぽいし、今まで欲しいものは全て手に入れてきたのだろう。
だが、そんな甘い考えではこの先苦労するだろうからこの俺が社会の厳しさを教えてやるぜグヘヘ。
「お前、この方が誰だか分かっているのか!?」
「早く謝って一緒にダンスをやるんだ!」
取り巻き2人が必死になって説得してくるが、嫌なものは嫌なんだから嫌だ。
ああいう高圧的な態度とる人とは性格的に合わないと思うんだよね。
もっと静かに生きていきたい。
ていうかその人が誰だか分かるわけないだろ!
こちとら社交に出たのは以前の王子のお披露目が初めてだし、ここにいる人とはほとんど初対面じゃい!
「俺はアーベライン侯爵家の嫡男だぞ。その誘いを断るっていうのか!?」
アーベライン侯爵家…?
なんか聞いたことがあるような、ないような。
んー……。
あっ!
思い出した。
家庭教師の先生にこの国の歴史の授業で出てきた家名だ。
確か武門の家で現騎士団長もアーベライン侯爵だとか。
すごいビッグな家だってことは覚えてた。
一族が代々荒っぽい性格をしているということも。
そんな家の嫡男が大層ご立腹の様子でいらっしゃる。
問い:なぜ彼は怒っているのでしょう?
答え:俺が誘いを断ったから。
やばいやばい。
なんでたかが子供のダンスの誘いを断ったくらいで、こんなピンチになってるんだ。
いや誘いを断ったからか。
そりゃ即答で断られたら怒るよね、ごめんなさい。
「何があったんですか?」
「ん?…殿下!」
困っているところに王子が登場した。
そうか、王子も6歳だから今回のパーティーに参加しているのか。
何はともあれナイスタイミング王子!
この場を丸く収めてくれ!
アーベライン君も取り巻き2人も驚いていたが、流石は大貴族の嫡男ですぐに落ち着きを取り戻した。
「こちらの令嬢にダンスの申し込みをしていたところです」
でも断ったんだから諦めてくれ。
助けてくれと王子に視線を送ると、伝わったのか彼は頷いた。
良かったこれで平和にパーティーを乗り切れる。
「彼女は私と踊る約束をしていたんだ。今回は彼女のパートナーを譲ってくれないかな?」
「そういうことでしたら、分かりました。では失礼します」
ありゃ?
やけに素直だな。
もうどっか行ってしまったし。
それよりも!
王子があんなこと言ったせいで周りからの視線がすごいことになっている。
これは踊らなければいけないやつだ。
狙ったかのようにダンスのための曲の演奏が始められた。
王子も手を差し出してきたしもう逃げられない。
その手を取り、ダンスをする場所に行くとすでに他の子たちが思い思いにダンスをしていた。
まだ6歳だからかダンスは上手いとは言えないが、その表情はとても楽しそうだった。
大人たちもその様子を微笑ましそうに見ている。
そうか、今回のパーティーは堅苦しいものではなく、子供たちが主役の6歳まで生きれたことを祝うためのものだ。
なら俺もあまり構えなくていいのかもしれない。
「ごめんね、嫌だった?」
「っ…いいえ」
ダンスの途中、急に王子が耳元で囁いてきた。
おそらく他の人たちに聞こえないようにしたのだろうが、耳は弱いのでやめてください。
「そう、なら良かったよ。今日は主役なんだから楽しんでいってね」
「はい、ありがとう、ございます」
と言っても今日はポンコツ王女は居ないだろうから知り合いは王子だけだし、ぼっちで楽しむのは限度があると思います。
どうしようかな?
「ん?」
あっ、やべ。
考え事をしていたせいか、ダンスのステップを間違えて王子の足を踏んでしまった。
王子は気づかないふりをしてくれているが、申し訳なさと恥ずかしさで顔が赤くなる。
そして、ダンスが終わりお別れしようと思ったら王子が手を繋いだまま離してくれない。
「少しお話ししたいことがあるのでテラスへ行きましょう」
「?…はい」
話しってなんだろうかと思いつつ、黙ってついていく。
どうやらテラスには他に人がいないようだった。
会場内は人が多いせいか少々暑かったので、涼しい夜風が気持ちいい。
テラスの手摺りまで着くと、王子がこちらを見つめてきた。
そんなに真剣な表情で見てきてどうしたんだろう?
はっ!まさか足を踏んだのを怒っていてテラスから突き落とそうというのか!?
ごめんなさい、許してください!悪気はなかったんです!
そんな風に考えていたとき突如強い風が吹き、髪が乱れてしまわないよう手で押さえていると王子が用件を告げた。
「イルメラ嬢、どうか私の婚約者になってほしい」
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