-変化は非日常へー
次の日、学校は休みだった。
昨日の墓参りが終わり、俺は、ベッドの上で仰向けになっていた。
時間は12時。今日は千尋も部活のため、家には来ない。
「さて、なにをするか」
こういう時に、部活やバイトなどしてない俺は、時間の使い方に迷う。
いつもなら、パソコンでYO-TUBE見ながら時間を潰していたが、閲覧しているチャッキーさんの動画更新がされておらず、頭を下にした
翔にLOINを送る。
「おい、遊ばないか」
返事を送ると、
「ごめん。部活」
2秒で返事が返ってきた。
また、頭を下にする。
「仕方ない。勉強でもするか」
数学のテキストを開く。問題を見る。すぐにテキストを閉じ諦めた。
「外に出るか」
俺は、身支度を整えて家を出た。
俺が住む、美月市は大きく分けて3つに分けられる。
西洋短期大学地域のショッピングモール街。商社ビルなどが立ち並ぶオフィス街。そして今俺がいる、映画館、ゲームセンターなどの施設が並ぶレジャー街だ。
俺は今、レジャー街の中にある、本屋にいた。
「何か、面白い漫画はないか」
とめぐっていた。が、最新の漫画も先週買ってしまっていたので、買うものがない。
仕方ないと、俺は勉強の参考書を探しに書籍のコーナーに向かった。
いろいろ、見ているとふと一冊の本に目を向けた。
「星座読本」
厚い本であったが、なぜか気になって手に取っていた。
内容は、ギリシャ神話に出てくる英雄譚や、英雄譚にまつわった星座の成り立ちなどが書かれていた。ちなみに、よく知る12星座はほんの一部分で星座の種類は全天で88種類も存在するようだった。日本では見ることが出来ないものまで事細かに書かれている。
「これ、面白いな」
と、買おうと本の後ろを見ると、
「げっ。1万円」
学生には、少し痛い出費だ。
俺は、後ろ髪をひかれる思いを抱きながら本を置き、学校で使うシャーペンと消しゴムを買ってその場を後にした。
本屋から、外に出ると、日も暮れかかっていた。
俺は携帯をのぞくと、LOINに千尋メッセージと翔のメッセージが入っていた。
「いま、部活終わった。ごはんどうするの?」
と千尋。
「おい~。こうへい君。俺と遊べなくて寂しかったかい」
と翔。
俺は、
「今、本屋でたところ。飯なら何か買っていこうと考えている」
と千尋に返事。
「お前、後ろに何かいるぞ」
と翔に返事をした。
「そうしたら、私、学校帰りにスーパーで食材買って帰るから、夜、恒平のキッチン貸して」
と千尋。
「おい。後ろってなんだよ。こえーよ。ひぃ、何か視線が……」
と翔。
「いいよ。勝手に中に入ってキッチン使って」
と千尋に返事。翔のLOINは既読スルーした。
「さてと」
俺は、センター街から自宅に向かう。
家までは自転車で25分ぐらい。結構距離がある。
俺は、帰り道千尋が、夕飯の準備をしてくれているので、何かお土産を買っていこうと、帰っていると、小さなケーキ屋がある。
「いらっしゃいませ」
と年配の女性が、はきはきとした声で、俺を出迎える。
「どうしようか……」
少し悩みつつ、当たり障りのないように、たしか千尋の好きなショートケーキを2つ購入する。
「ありがとね。おにいさん」
少し、不気味な笑みに見えるケーキ屋の女性に愛想笑いを浮かべながら、その場を後にした。
「やべっ」
俺は時計を見る。少し予定よりも遅れてしまい、日はかなり西の方角に落ち、夜になっていた。
俺は、自転車を少し早めながら、自宅に向かう。
自宅に向かう道すがらは、街頭だけ立ち並び、薄暗い。
その道中、自転車を走らせながら、不可解に陥る。
よく小さいころ千尋や翔と遊んでいた公園がある。そこはブランコやジャングルジム、鉄棒など遊具が充実していた。その公園のブランコに女の子がいた。女の子は首を下にしながら、足でブランコを少し揺らしていた。
女性なら身の危険を感じるような時刻だ。少し心配になり、俺は公園の入り口に自転車を止めて、少女に近寄る。
「どうした。待ち合わせ」
と言葉をかける。
「うん」
少女は首を縦に振り、
「おにいちゃんを待ってたんだ」
と答える。
隠れた髪の下の口元はニヤっと笑っているようだ。
俺は、身の危険を感じ、少女から一歩後ずさる。
「俺を……」
「うん」
少女は、同じ返事を返し、ブランコから立ち上がる。
立ち上がった少女は、公園の街頭に照らされる。ショートカットの女の子で、顔はあどけなさが残り、小学生に見えるが、少女は制服を着ている。どうやらこの地域の学校ではなさそうだが、中学生か高校生のようだ。
少女は、
「おにいちゃん。持ってるよね」
「持ってる……」
少女は、制服から、見覚えのあるものを取り出す。
「これ」
少女が取り出したのは、俺の持っているものに似た、チェーン付きの球である。
「おにいちゃんも持ってるよね」
「今は、ない……」
俺は、答える。
「えぇ、持ち歩いてないの?大事なものなのに……」
少女は、少しがっかりしたように俺に、
「じゃあ、持ってきて。私にチョーだい」
「いや、それは……」
俺は少し戸惑う。
「いやなの?」
少女の目は、口元は笑っているように見えるが、目は笑っていなかった。
「あぁ……」
俺は、球の事を知らないのだが断る。
「そうか……」
少女は
「じゃあ、やるしかないね」
続けざまに、俺向かって言葉を放つ。
「やる」
俺は、受け身の状態で少女に向かって問いかけた。
「そう、この球の取り合いを。少し、痛いことになるけど大丈夫。すぐに痛くなくなるから」
少女には似つかわしくない、言葉が返ってくる。
「痛いことって……」
「そう。殺しあうんだよ」
俺は、少女の笑顔と似つかわしくない言葉で、ぞっとする。
「殺しあうなんて、そんな……」
俺は、たどたどしく少女に向かって、返事を返すがその言葉を遮って、
「だって、くれないんでしょ。仕方ないよね。ちょっと待ってね。今準備を……」
と少女が俺に球を掲げた時だ。
「君、何をしてる?」
公園の入り口に置いた自転車の方向から、声がかかる。
しっかりとした、制服を着た、警察官が俺たちに向かって話かけてきた。
俺は、警察官の声のする方向に体を向けると、背中越しに少女が俺に、向かって話しかけてくる。
「あーあ。邪魔が入っちゃった。仕方ない。今日はお預けだね」
と残念そうに声をかけてきた。続けて、
「じゃあ、今度の日曜日。昨日居た神社に来てね。これ、約束じゃなくて命令ね。もし来なかったら、昨日一緒にいたおねえちゃん。巻き込むからね」
俺は、背中越しの少女に体を向けると、少女はいなかった。
向く瞬間、少女が最後の言葉を残す。
「私は、宮本唯。よろしくね。おにいちゃん」
その後、俺は、警察官に怪しまれ、近くの派出所へ拘束された……。




